第50話:パスタ型メターマン
「この時のグラフのおける極値は……」
とある日。数学の授業中。クラス全員のスマホの通知が鳴った。授業中故、スマホを見ることは許されていないが、概ねが悟った。魔法少女案件だ、と。世界中が注目しているバーゴストライク。スマホを持っている人間なら、ほぼインストールしているバーゴストライクチャンネル。クラスメイト全員のスマホに通知が来たということは地震災害の警報か、あるいはバーゴストライクチャンネルしかありえない。ちなみに数学の授業なので、太陽少女オーバーサンこと壱岐尾先生は授業をしており、右隣のキラはケラケラ笑っており、後ろの席のマスラオはため息の音が聞こえてくる。
「授業に支障が出ない範囲で、動画視聴を許可します」
壱岐尾先生は意外と柔軟な思考をしているらしく、授業を止める気は無いが、授業を真っ当に受けるならバーゴストライクチャンネルにアクセスしてもいいと仰ってくれている。後は国際魔法少女基金に入金されて、誰が指名されるかだが。
「……先生。……ちょっとトイレに」
と言ったのは二江キワミ。そうか。今日の出動は究極少女アルテミストか。
「許可します」
既に教卓前で前後左右で俺を挟んでいる四人は互いの事情を知っている。その中でキワミが退席を申し出たということは、つまりそういうことだ。そうしてキワミはトイレに消えていき。
「先生。私も席を外します」
さらに言葉を発したのは須久留ミズキだった。
「どういう理由で?」
「メターマンを討ち滅ぼしてきます。ちなみに許可を求めているのではなく、これから行うことを報告しているだけなので、ダメだと言われても行きますよ?」
そう言えば須久留ミズキはスクール水着仮面二号だった。そのことを学校の生徒たちは思い出していた。
「地球秩序維持思想団体オーダーメイドの名において!」
ミズキの足元に魔法陣が発生し、それがスキャンするように足元からミズキの頭上まで上がり、フォトンに包まれたミズキがいきなり消えた。
「あら、本当に行っちゃった」
「ってことは魔法少女とスクール水着仮面二号の共闘!? これは見逃せねぇ!」
そうして先に現場に駆けつけてドローンカメラで撮影しているハーレクイーンのお仕事はまぁいいとして。その撮影の中に究極少女アルテミストとスクール水着仮面二号が現れた。
「……参上」
「闇あるところ水着あり。悪あるところ仮面あり。正義の使者。スクール水着仮面二号参上!」
そうして二人とも当然のように空中に浮いており、そうしてメターマンと相対した。今回のメターマンはパスタ型だった。パスタが絡まって人型になっている。インテリジェントデザインを揶揄するために作られたスパゲッティモンスターをちょっと思い出したが、アレとは形状が違う。だがパスタはパスタ。その口からブレスを吐き出す。巻き込まれたアルテミストは斥力で弾き、スクール水着仮面二号はブレスそのものを切り裂いた。
「これ須久留さん!? すごくね!?」
「教室から一瞬でロシアまで!?」
「スクール水着仮面二号かぁ。推しになりそう……」
「いや、俺はダーンディアナちゃんと言う嫁が……」
視聴者であるクラスメイトは好き勝手なことを言っていた。その間にも壱岐尾先生の授業は進み、俺も動画を見ながら授業については集中している。というか予習の範囲なので、あんまり集中しなくても問題ないのだが。
「「「「「ふぉぉぉぉぉぉ!」」」」」
で、まぁバカはバカを呼ぶのか。ブレスを防がれたパスタ型メターマンが触手のようにパスタを伸ばし、エロゲー展開もさながらにパスタでアルテミストを縛り付けた。手足を拘束され、動きを封じられたアルテミストは一言で言えばエッチだった。巨乳だしな。これがエロゲーではなく現実で起こっているということに、クラスの男子……どころか世界中の男子が興奮していた。大量の投げ銭とともに怒涛のコメントが送られてくる。
『もっとだ! もっとやれメターマン!』
『縛りつけろ!』
『アルテミストちゃんの触手プレイペロペロ』
『どうせだからおっぱいにも触手をだな』
『すっげーシコいな!』
性欲に翻弄されている世界中の男どものオカズになって、地球全土に触手プレイが放映されている……と思いきや。
「世話のかかる……」
そのアルテミストを拘束しているパスタを、問答無用で切り裂くスクール水着仮面二号。リープリッパーと呼ばれる斬撃魔法だ。この世に切れないもののない完全なる切断。メターマンの触手であろうと、ソレは例外ではない。そうして自由になったアルテミストがスクール水着仮面二号にお礼を言って、それから本気を出す。ここからは油断をしない。斥力場の展開はあらゆるものを弾く。大気そのものに加速を加え、弾いたメターマンを空気の壁で摩擦させる。その高温に悲鳴を上げるメターマン。このままでは討ち滅ぼされる。そう覚って巨大化。さらに大きくなったパスタ型メターマンは太い触手をウネウネと揺らす。
『アレは流石にアルテミストちゃんの中には入らないよな?』
『拙者はリョナグロオッケーだぞ?』
『いやしかしアルテミストちゃんはきっと処女で』
『触手プレイは見たい……見たいが……アルテミストちゃんが非処女になるのは……』
『それはそれで興奮する』
色々と救い難い声も聞こえてきた。そうして巨大化したパスタ型メターマンが触手を伸ばすのだが。
「リープリッパー」
その全てをスクール水着仮面二号が切り裂く。
「すげー」
「これが須久留さん」
「マジ魔法少女じゃん」
「あとでサイン貰おうぜ」
クラスメイトも沸騰していた。一応壱岐尾先生の授業を聞きながら。
「……ファイナリティマジック……」
そうして決着魔術を起動させるアルテミスト。今日ばっかりは理不尽が感情より勝ったのだろう。据わった目をしていた。あくまでドローンカメラ越しにな。
「ラムダジェイル」
内側に弾く斥力の壁で巨大化したメターマンを囲む。そして。
「ホワイトホールインパクト」
無限斥力でクォークレベルでメターマンを消し飛ばし、白光がロシアの都市を包む。そうしてメターマンを討伐し。最後はお決まりだ。
「ピスタキオン・サルベーション」
超光速粒子による因果の逆転。壊された街を魔法で修復してのける。これも魔法少女の義務だ。あとはハーレクイーンが無雲帝国に逆らう議論をしていた敵対者を処理すれば話は終わる。どうせ核融合技術を盗み出す算段でもしていたのだろう。俺のメアリーシステムは便利だが、一応自意識とは切り離している。どこにでもバカは湧く。それはもうしょうがないことだ。そうして決着が済んで、アルテミストは俺の家へ。スクール水着仮面二号は俺の用意したマンションの部屋に。それぞれワープした。後はタダ同然の無人タクシーを使ってミズキは帰ってくればいいし、キワミの方はブローギアのワープ機能で女子トイレの一室に転移して、それからブローギアだけ元の場所に戻せばいいだけだ。そうしてトイレから戻ってきました風を装って、教室に入り席に着くキワミ。ミズキの方はマンションから無人タクシーで学校へ。そうして教室に戻ると。
「「「「「――――――――ッッッ」」」」」
クラスメイトから喝さいが上がった。
「すげーよ須久留さん!」
「アルテミストを助けていたよね!?」
「超強いじゃん!」
「変身ってどうやってんの!?」
「っていうかなんでスクール水着?」
「でもメターマン切り裂いていたし!」
「アレってどういう理屈?」
「サインくださいっす!」
数学の授業が終わり、次の授業までの休み時間。ワイワイとクラスメイトはミズキを持ち上げた。まぁ気持ちはわかるスクール水着仮面が同じクラスにいれば興奮するのだろう。ちなみに俺もスクール水着仮面一号ではあるのだが。ソレは言わぬが花である。
「次のバーゴストライカーズのブースターパックはオーダーメイドで決まりだな」
「須久留さんのシークレットレアカードとか十万円超えるんじゃね?」
「っていうかもしカード引けたらサインください!」
沸騰するクラスメイト。もちろん須久留がスクール水着仮面二号であることは枯野に火を放つがごとく学校全体を震撼させた。まぁ当たり前っちゃ当たり前。
「サインなんて持ってないんだけど……」
困った顔のミズキだった。
南無三。




