第49話:須久留ミズキの転入
「ねえオワル~」
「……旦那様」
「オワル。今日のことだけどさぁ」
相も変わらず教卓前の席。三美姫に囲まれてチヤホヤされ、そうしてクラスの男子のヘイトを買い、女子の困惑を貰っている俺だったが。実情には少し変化があった。というのもバーゴストライクは互いの正体を知ったのだ。そして俺との関係も。その上で、俺が誰も手放すつもりはないと言うと、SNSを交換して話し合い、四人は俺のことを共有することにしたらしい。やはりここは無雲帝国皇帝の王権を使って一夫多妻を合法化すべきか。一応今のところは日本の法律に準拠しているのだが、もちろん皇帝は俺なので俺の意見が最強のはず。
「はいはーい。星崎さん。二江さん。斑鳩さん。ごs……遠藤さんとイチャイチャするのを止めなさい」
お前、今朝はスーパーカーで俺を学校まで送っておっぱい揉ませてくれたくせに……どの口が。あと「ご主人様」って言いかけなかったか?
「それでは今日は転校生を紹介します」
転校生……というとあの転校生か? おお、とクラス全体が盛り上がる。
「では須久留さん。入ってきてください」
「はい」
そして一人の女子が入ってきて、俺以外の男子は全員目が奪われた。浮世離れした美貌に鮮やかな赤毛。ちょっと不機嫌そうな顔をしており、何が不満化は聞いても意味がないだろう。壱岐尾先生がボードに須久留ミズキと書いて、紹介する。
「今日から皆さんと一緒に学ぶ須久留ミズキさんです。それでは須久留さん。自己紹介を」
「須久留ミズキという。地球秩序維持思想団体オーダーメイドに所属するエージェントだ。この度レコンキスタドーンの首魁の御首を頂戴に参った」
意味不明なことをツラツラと言ったが、オーダーメイドについては既に地球上で議論されている。いきなり横須賀基地に現れて、場を乱して去っていった意味不明集団。あのことで中将は残念なことになり、米国は無雲帝国からの撤退を余儀なくされたのだが。
「ふおぉぉぉ!」
「神はいた!」
「ぐうかわ!」
「須久留ちゃん!」
「お美しいわぁ……」
そんなことは関係ないとばかりに、赤毛の須久留ミズキに男子は沸騰した。
「それじゃ須久留さんの席は後ろの方でよろしくね」
そうして後方の席に座って、ドキドキの男子高校生を発情させて、一人無自覚に可愛さを発露している。
「それではー」
と、壱岐尾先生が去っていきホームルーム終了。同時にクラスメイトが須久留さんに突撃した。
「どっから来たの!?」
「可愛い!」
「秒で惚れました!」
「これ俺のIDなんだけど!」
三美姫にも劣らない美貌の持ち主。しかも俺とは関係ないとなれば推すしかないのだろう。ソレは別にいいのだが。ミズキの奴。自分からバラしやがって。
「オーダーメイドって本当?」
「本当だ」
あっさり肯定する。
「じゃあスクール水着仮面に変身できたり?」
「ああ」
ああ、じゃねえ。まぁバラしちゃいかんとは言っていなかったが。それにシュクールミジュギはミズキ以外には利用できないし、解析しようにも無理だから、問題はない……のか。流石に暗殺されそうになったらギアの防御で何とかするか。それにそもそもスクール水着仮面もバーゴストライクに劣らない戦力だしな。
「変身してみてくれない?」
「断る」
「ちょっとだけ。ちょっとだけ、ね?」
「断る」
思ったより愛想が悪いというか。俺としては知っているが、まぁサービス精神で変身されても困るのでそれは良し。とにかくこれで三美姫に須久留ミズキが追加され独富学園の四美姫と四人は呼称されるようになった。
「あと無雲帝国には逆らわない方がいいよ。場合によっては島中のメターマンに襲われるから」
事実ではあるが。
「大丈夫だ。それより私の方が強い」
確かにそれも事実だ。
「レコンキスタドーンはやりすぎている。メターマンを地球上に散らして破壊活動。地球秩序維持思想団体オーダーメイドとしては無視するわけにはいかないのだ」
「しかし無雲帝国の皇帝が殺されたら独富島はどうなるんだ?」
「ちょっと怖いっていうか」
「今更日本に戻されてもなー」
「確定申告とかしたくないぜ。俺」
「日本に戻ると累進課税も復活するんだろ?」
「だから無雲帝国に移住したがる人が増えているわけで」
「「「「「というわけでお願い!」」」」」
クラスメイトが心を一つにした。
「無雲帝国にあだなさないで!」
そう言うしかないよな。
「無理だ。私はオーダーメイドだからな」
そのオーダーメイドの首魁も俺なのだが。スクール水着仮面一号。とはいえその存在も特秘事項。二号であるミズキが自分からバラすの構わないが、俺は言う気は無かった。っていうか盛大なマッチポンプだしな。
「オワル。数学だけどさー」
「壱岐尾先生の授業だな」
「…………ボソボソ(おっぱい見ちゃダメだよ?)」
「無茶言うな」
「…………ボソボソ(私の揉ませてあげるから♡)」
「それはそれであり」
グッとサムズアップ。
「…………ボソボソ(……旦那様……ボクのおっぱいも♡)」
「ああ、後で幾らでもな」
「…………ボソボソ(……愛しています……旦那様)」
そうして一時限目。数学の授業が始まり爆乳の壱岐尾先生が色気ムンムンで授業を開始する。その爆乳に惚れこんでいる男子学生は多い。どころか教師陣でも無視できないらしい。結婚や恋愛の話が聞こえてこないのは不思議だとされているが、まぁあの性癖ではな。
「こーら。遠藤さん。ちゃんと聞いていますか?」
「聞いてますよ。その問題。解いてみせましょうか?」
「ではお願いします」
そうしてボードに書かれた問題を解く。そのまま解いて「正解です」と太鼓判を押してもらい、また席に戻る。今度はミズキが当てられた。四苦八苦しながら問題を解く様は微笑ましい。倍率は高いが、別に勉強できることが独富学園の入学に必要な能力でもない。無雲帝国に移り住めば普通に独富学園に通うことができるようになるわけで。倍率が高いのは単純に金の集まる無雲帝国に移り住みたいと願う人類が多すぎて、その上で無雲帝国に不義理をしない人材を選別し、能力を求めると移住許可が凄い難易度が高くなるって話。
「はい。正解です。席に戻っていいですよ」
そんなわけで数学で正答を得て、ミズキは元の席へと戻っていく。しかしスクール水着仮面二号ねぇ。シュクールミジュギは……まぁ発明としてはそこそこ成功しているわけだが。ブローギアやシタギについても開発は成功しているし、技術的には似たようなモノ。WARPドライバを用いた実験兵装。それ以上ではないのだ。そうして授業は進み、昼休み。ミズキに群がる男子と女子。女子もミズキと仲良くしたいらしい。
「これから一緒にご飯食べない!?」
「いや拙者と!」
「某と!」
「じゃあ全員で行こうよ!」
「奢ってあげるからさ!」
「何を言うか! 奢るのは拙だ」
「いやこの俺だ」
喧々諤々。誰がミズキに御飯を奢るのかで男子どもは揉めているらしい。言いたいことはわかるが、そこまで必死だとミズキが引くぞ。
「うわぁ」
そして実際に引いていた。自分が可愛い女子である自覚はあるのだろう。男子どものアクションについても理解はあるらしい。ただ、だから「ありがとう」にはならんのだが。




