第47話: ツインクイーンの仕事【三人称視点】
「ひひっ。これで……」
エンドレースのエネルギー産業の計画書。それを持ち出して、逃げようとしている男がいた。端的に言って産業スパイ。米軍が独富島に侵攻するということは、島民の意識はそっちにどうしても釘付けになる。その隙をついて、一人の産業スパイが核融合技術の秘匿技術計画書を盗み出していたわけだが。
「あらあら。まぁこうなるわよねー」
「あのお方の言った通りになったっすね」
そのまま保管室から逃げ出そうと部屋の外に出て、その廊下の両端。二人の女性がいた。正気を疑うようなビキニよりも過激な布面積の少ない衣服でおっぱいとアソコを隠しているだけの格好。さらにトゲ付きのショルダーガードに、足元まで伸びる実用性のないマント。特撮の悪の組織の女幹部そのままの姿だが、いい歳をした女性が着るものではない。一人は経産婦を思わせるようなキレイな顔の大人の女性。もう一人はカレンな顔をした乙女。おっぱいの大きさに天と地の差があるが。まぁそれはいいとして。
「まさか貴様ら……」
産業スパイが唾を飲んで、正気を疑う二人の女性の正体を探る。
「レコンキスタドーン……」
「あらあら。それについてはノーコメントで。どうせ会話も記録してスポンサーに送っているんでしょう? 書類も盗んだはいいけど、先に撮影してデジタルデータとしてネットワーク経由で送っている……と思うのが普通かしら」
「そこまでわかっているのか」
「無雲帝国皇帝陛下の偉大さを分かっていらっしゃらないのね。あのお方は全てを見通しているのよ。元からあなたが産業スパイであることも知っていらっしゃたわ。ただ警備体制が万全だから手を出せないだろうと恩赦をくれていただけ。けれどあなたは皇帝陛下のご温情を裏切ってしまった。死に値するわ」
「というわけで殺すっす。覚悟してるっすよね?」
勝ちを確信した二人の女幹部。前門の虎後門の狼。廊下は直線でその前後を挟まれていれば、どちらかを排除しなければ逃げられない。ということはわかっていて、だが勝ちを確信しているのは産業スパイの方も同様だった。見せびらかすようにスイッチを見せる。
「あらあら。それは?」
「爆弾のスイッチだ。核融合炉の付近に設置してきた。俺がスイッチを押せば、無雲帝国の核融合炉は破壊されるぞ。わかったら俺を無事に逃がせ」
「あらあら。物騒ですわね」
「言ったっすよね? 皇帝陛下はお前のことなど分かっていたと。対策してないとでも思ってるっすか?」
「爆弾を設置したのは昨日のことだ。誰にも見られてねえ。今時点で撤去も何もできないだろ」
浅く笑って、産業スパイは勝ち誇る。
「俺を逃がせ。それからゆっくりと爆弾を解除すればいい」
「いえ、ですから爆弾の撤去は済んでいるんです」
「は! それでイニシアチブを取ったつもりか? マジで俺に攻撃するならスイッチを押すぞ」
「どうぞ」
「どうぞっす」
だから何、程度の口調で二人はそう言った。さすがに狼狽の一つもしない二人の露出狂女性のふてぶてしさに、狼狽える産業スパイ。本当に、昨日設置したばかりの爆弾を前もって除去したとでもいうのか。
「ジョーカーを握っているのはこっちだ。余計な真似はするなよ?」
はったりだ。そう判断して強気に出る産業スパイ。
「鈴木小太郎。という名前のカバーを持った中国人ですね。本名は劉・雷。米国と無雲帝国の小競り合いの最中に漁夫の利を得ようとする行為自体は賞賛しますけど、こっちとしても裏切者は始末するのが常道ですが」
「ここまでバレいますし。それでも行動が把握されていないとお思いですかっす?」
「爆弾は安全な場所まで廃棄しております。アナタに出来ることはここでスイッチを押さずに殺されるか。スイッチを押して殺されるか。二者択一です。隠されている盗聴器で聞いている参謀部の王さん? 彼が爆弾のスイッチを押した場合、アナタの命も消えると覚悟しておいてください」
「そ、そんな脅しで我ら中華が屈するとでも……ッ!」
「ですから、爆弾は既に廃棄済みです。国のために死ぬのもいいですけど、国にとってはあなたは駒の一種ですよ。チェスのポーンです。相手に取られることを前提に配置された……ね?」
「恩国のために命を捨てる覚悟はできている!」
カチンッ、と産業スパイはスイッチを押した。核融合炉は遠くにあるが、それでも広いとは言えない独富島。爆発の音は聞こえてこなかった。
「……は?」
「だから言ったでしょうに」
既に爆弾は処理済みだと。
「それでは劉さん。ならびに王さん。さようなら」
気付いた時には爆乳の方の女幹部が歩いた形跡も無いのに産業スパイの目の前にいた。
「ちょ――――」
それが産業スパイの最後の言葉だった。あっさりと首が飛び、頭部がかき消えた。と思った瞬間に残った身体もかき消えた。一つはあるところに、もう一つは別の場所に。それぞれ転移させたのだ。もちろん中華の政治的な場所に、である。
「まったく。困ったさんですね。シークイーン。王さんの方の処理は任せていいですか?」
「わかったっす。ハーレクイーン。中華なら時差もそんなにないっすし、ちょっと行って帰ってくるっす」
そうしてシークイーンはワープした。残されたのは産業スパイが盗み出そうとした技術のコピー書類。もちろん虚偽情報だらけのダミーだ。そもそもあの計画室には本物の資料は置かれていない。エンドレース株式会社の社員の一部に産業スパイが紛れ込んでいるのは既にシングルモルトが把握している。なので本当に信頼されている技術者以外に真実を教えることはない。
「言ってきたっすよー。王さんの頭部は本部の室長室に運んでおいたっすけどよかったっすか?」
「ええ。これで足踏みしてくれればいいのですけど」
産業スパイと、それを支持していた諜報員の頭部が室長の執務机の上に転がっている。ソレを見た参謀部がどう動くかは、相手方の問題だろう。
「ご苦労だったな」
そうして社長室まで転移してシングルモルトに報告すると、彼は苦笑してそう労った。
「それでー、そのー」
爆乳の方の女幹部、ハーレクイーンがシングルモルトの前でモジモジする。それだけでシングルモルトはだいたいわかった。
「ハーレクイーン。シークイーン。服を脱げ。全ラになれ」
「シングルモルト様♡」
「っす♡」
そうして二人はショルダーガードを外し、マントを取り去り、ビキニよりもエロイ布面積ギリギリのヒモを脱ぎ捨てる。ビーチクも――――も全てシングルモルトに曝け出して、女としてのプライドをかなぐり捨てる。
「シングルモルト様♡」
「シングルモルト様♡」
これからやることはセクロスだ。経産婦のハーレクイーン。乙女のシークイーン。どちらもシングルモルトに心酔しており、彼とのセクロスは御褒美以外のナニモノでもない。
「ではまずはしゃぶってもらおうか」
「はい♡ シングルモルト様♡」
「誠心誠意ご奉仕させてもらうっす♡」
そうして二人はシングルモルトに傅いて、奉仕を始める。シングルモルトのご温情を得るためなら女を捨てメスになる。その覚悟が二人にはある。
「ちゅ♡ パ♡ ん♡」
「シングルモルト様の♡ 大きくなってるっす」
「そりゃお前らに奉仕されればな」
シングルモルトとしても全ラのツインクイーンを相手に、心を凪にするのは無理筋だ。




