第45話:スクール水着仮面
「何者だ!」
拡声器、というかマイク越しに、空母の最高責任者が空中の二人に問う。何者だと言われても、説明されても理解できるかは怪しいだろう。俺とミズキは、今スクール水着を着て、仮面を被り、仮に公衆の面前で歩いていたら石を投げられても文句が言えない格好をしている。
「よくぞ聞いてくれた!」
で、俺、遠藤オワルは女体化してスクール水着を着て、同じくスクール水着を着たミズキと一緒に空中に制止して、手に持った拡声器で声を横須賀基地にお届けする。
「闇あるところに水着あり! 悪あるところに仮面あり! スクール水着仮面一号!」
空中でビシッと大見得を切って、俺は名乗る。今の俺は遠藤オワル改めスクール水着仮面一号だ。
「そしてスクール水着仮面二号!」
ミズキも見栄を切って、そう名乗る。
「スクール水着仮面だと!?」
実際に俺もミズキもスクール水着を着ているし、仮面も付けている。別に仮面は付けなくてもパーソナルジャマーは発揮されるのだが、こういうのはノリが大切なのだ。
「そのスクール水着仮面が何の用だ!?」
「それは先刻すでに言った。返答や如何に!?」
馬鹿な真似は止めるようにたしなめた。そしてそれが受け入れられなかった場合、実力行使に出るとも。
「ふざけるな! 軍事作戦を妨害する気か!」
「地球秩序に責任を持つ立場としては私欲による軍事侵略を見逃すわけにはいかんのだ」
まぁ俺の目的は別にあるのだが。
「総員! 戦闘配備! 相手はスクール水着仮面! 警戒レベルを最大に! アレはおそらくバーゴストライクと同種の戦力と仮定する!」
ま、間違ってはいないな。横須賀基地。空母の皆さん。それぞれが重火器を持ち出し、俺とミズキに銃口と砲口を向ける。アサルトライフルが届く高さではない。スナイパーライフルと、後はバズーカやランチャーだろう。
「ってぇ!」
「ファイヤー!」
「「「「「ファイヤー!」」」」」
そうしてミサイル、焼夷弾などなど。色々な武装が俺たちに向かって飛んできた。それらは俺たちに直撃して。
「ふむ」
「ほう」
スクール水着仮面一号二号は無事息災。一応絶対防御は働いているらしい。
「やはり超常技術の賜物か! 貴様ら! 無雲帝国の使者か!」
「レコンキスタドーンでもない。バーゴストライクでもない。まして国の軍隊でもない。地球秩序を維持する思想集団オーダーメイド。この地球の第四勢力だ」
ちなみに俺自身はレコンキスタドーンの首魁だし、バーゴストライクの管理者ではあるのだが。ソレは言わぬが花である。
「貴君らの暴力による産業スパイぶりは目に余る。正義の味方として、その行為を傍観できぬと申しておる」
「何を言うか! 正義は我らアメリカにある! 無雲帝国が技術を独占して暴利を貪っているが故に、今もひもじい思いをしている民がいるのだぞ!」
それをアメリカ人が言うか? スラム街でひもじい思いをしている国民の数で言えば、世界でも有数だろ。
「では我らの勧告には応じぬというのだな?」
「当たり前だ!」
そう叫んだあと、空母の中からバーゴストライクに声がかかった。
「魔法少女諸氏。米軍の敵だ。盟約に従って、排除してくれ」
「えー」
「えー」
「えー」
「えー」
バーゴストライクはやる気が無さそうだった。
「一千億ドル払ったのだぞ!? 給料分くらいは働け!」
「でもスクール水着仮面は攻撃してきていないですよね? 私たちの仕事は人命救護。命に脅威が迫らない限り、仕事をする必要性は無いように感じますが?」
「明確に海軍の敵だろう」
「でも兵士の命には脅威ではない」
オーバーサンの物言いは、とても理性的だった。俺としても一安心。俺とミズキのシュクールミジュギはバーゴストライクのブローギアと同等の性能を持っているが、あくまで試験上と冠言葉がつく。実際の運用は今回が初めてだったので、ちょっと不安ではあったのだ。
「というわけでスクール水着仮面さーん」
米兵から拡声器を借りたのだろう。声を大きくして、バーゴストライク代表、堕星少女スタッブスターが語り掛ける。
「暴力による解決は止めませんか~? 我々バーゴストライクは話し合いで海軍の無謀を止めようと思っておりますれば~」
その言葉に、今度は海兵がギョッとする。金で雇ったはずのバーゴストライクが、海軍の意向に反する。そのことは流石に念頭になかったらしい。まぁ俺が前日に説得助言をしていたので、その判断は妥当なのだが。バーゴストライクの正体は星崎キラーンと二江キワミと壱岐尾先生と斑鳩マスラオ。つまり全員が地元民だ。アメリカ軍の侵略に肯定するわけもない。
「裏切る気か!? バーゴストライク!?」
悲鳴を上げる空母の責任者。
「いえいえ~。契約通りですよ? 私たちバーゴストライクの仕事は米軍の兵士の命の救護。つまり、メターマンと争う前に、米軍を止めるのが仕事ですから」
一千億ドル支払った相手が作戦を妨害する。だが筋は通っている。なにせバーゴストライクは戦争には加担しない。
「ソレを裏切りと言うんだよ!」
「きっちり仕事はしますよ。スクール水着仮面が米軍を襲うなら対抗しますし、米軍がメターマンの支配域に侵攻するなら実力でもって止める。全部契約の内です」
「貴様らぁ!」
金切り声を上げるしかない海軍側。だが既に決着している。バーゴストライク四人を相手に第七艦隊だけで相手どるには戦力が足りない。というか、全世界の軍隊が奇跡的に足並みをそろえてもバーゴストライクに勝つのは不可能だろう。場合によっては太陽系が蒸発する。さらに、そのバーゴストライクに並びうるクラークの第三法則を体現したようなスクール水着仮面までいるのだ。アメリカ海軍が動けば、動くだけで甚大な被害が出る。そこまで分かって、なお引かないというのならバーゴストライクと地球秩序維持思想団体オーダーメイドを同時に相手どることになる。動かなければアメリカのメンツが潰れる。だが動けば第七艦隊の空母は海底に沈む。どちらを取るかは、まぁ指揮官次第で。
「こうなれば徹底抗戦だ。兵士諸君! バーゴストライクとオーダーメイドを排除せよ!」
「その場合、バーゴストライクの助力なくメターマンの海域に侵略することになりますけど……どれくらい無謀か分かっています?」
スタッブスターの言い分も尤もだ。
「では空母の無力化はバーゴストライクに任せる」
俺たちスクール水着仮面一号二号は横須賀基地の最高司令官室に転移した。驚いたろう。何の予備動作も無く空間転移をしたのだ。今の人類の技術ではありえない御業。
「貴様らはアメリカを敵に回す気か!?」
最高責任者。デイヴィット中将は、脂汗を流しながらスクール水着仮面一号二号の暴挙を国家軍事力を背景に抑止する。もちろん俺の答えは決まっている。
「イエスだ♪」
ルンと弾むように声を出すと、中将は真っ青になった。
「アメリカ軍が無雲帝国侵略などという妄想をこれ以上抱かないように、中将には贄になっていただく。心安んじてお覚悟めされ」
「待て! ならオーダーメイド。貴君らを海軍が雇おう。バーゴストライクとともに無雲帝国への侵攻を手伝ってくれ。報酬は千億ドルでいいか!?」
「我々は思想集団。金では動かない。今から中将閣下の首から上だけをペンタゴンに転送する。バカげた行為への抑止と警告として、国の安寧のために礎となり給え」
そうして女体化してスクール水着を着ている俺が中将の頭部を掴み空間転移を行使した。




