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魔法少女の変身解除シーンの場所が俺の家になってる件  作者: 揚羽常時


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第43話:魔法少女議論


「悲報。アメリカが国際魔法少女基金に大金を振り込んで魔法少女を戦争に巻き込もうとしているかも」


 ソースも何もないただ一言。だがそれは枯野に火を放つように世界中を席捲した。最初はアメリカ海軍がメターマンに対抗できる兵器を開発したのかどうか……という議論が白熱していたが、その一言で思想は全てそちらに偏った。たしかに魔法少女を金で買えば、米軍と敵対するメターマンは倒せるかもしれない。だが魔法少女を国際的な戦争に巻き込むのはいかがなものか。世界中の魔法少女ファンが涙を流す。


「スタッブスターちゃん! 戦争なんかに参加しないで!」


「アルテミストちゃん! 米軍の言うことなんか聞かなくていいんだよ?」


「オーバーサンちゃん! 魔法少女は人類の味方であってアメリカの駒じゃないよな!?」


「ダーンディアナちゃん! 最後まで俺たちの味方でいてくれ!」


 ネットの悲鳴は金切り声が聞こえてきそうなほど悲哀に溢れかえっていた。魔法少女が米軍の指揮下に入り、無雲帝国に侵略する。アメリカとしては有能な戦力を整えた、というところだろうが、もちろん社会の世論はそれに反発。


「大統領! 今すぐ契約を解除しろ!」


「俺らの魔法少女を戦争の道具にするな!」


「ペンタゴンだけで世界が決まると思うなよ!」


「そもそも核融合技術が欲しいなら頭を下げるべきだろうが!」


 非難轟々。だがそれに対し、アメリカ政府はだんまりを決め込み、決してコメントしなかった。それでだいたいの地球人類は悟った。米軍は魔法少女を戦力として運用しようとしている、と。


「ノーモア戦争」

「ノーモア殺人」

「ノーモア侵略」

「ノーモア技術泥棒」


 世界中から非難を浴びて、それでもアメリカの意見は変わらない。動画サイトには魔法少女の戦争利用を反対するデモ行進が映った動画が大量に投稿された。プラカードや横断幕を掲げて「魔法少女を戦争に巻き込むな!」とアメリカ政府を非難する者たちが猛抗議していた。


「無雲帝国は何で大統領にメターマンを向けないんだ?」


「それ。仮に魔法少女にメターマンを殲滅させられたら、十万人の人口じゃ戦えないよな?」


「無雲帝国皇帝は何を考えている?」


 ネットでは無雲帝国側の思惑についても考察が飛んでいるが、そっちについては俺が実験的にとあるツールの運用をしたいだけで、別にアメリカを肯定しているわけではないのだが。しかし裏の裏の裏を読むネット民は、妄想の理論に入り込んでいた。


「まさか熱核融合エネルギーを使った新兵器があるとか?」


「いや、さらに強力なメターマンの開発と見たね」


「おそらくだがあの経済規模だ。軍事衛星を持っている可能性まである」


 などなど。妄想に夢幻が加わって、アメリカVS無雲帝国の戦争についてはどちらが勝者となるか。その意見が割れていた。さすがに地球最強の軍隊には勝てないだろう、という派。いやいや魔法少女がメターマンに勝てるのは一対一だからだ、という派。色々な派閥が存在し、久方ぶりに地球で戦争が起こる。そのことに非難とともに、否定しきれないイベントの匂いを嗅ぎつけて、ネット民は今日も激論を交わす。


「っていうかストナーブラックホール使ったらまとめてメターマン殺せね?」


「それを言ったらホワイトホールインパクトで太陽系終わるぞ」


「マイナスヒートランチャーとかポジトロン召喚でもメターマン終わるだろ」


 やばいやばいやばい。アメリカ軍が無雲帝国を蹂躙する。しかも魔法少女の軍事利用によって。


「あっはっはっはっは」


 で、俺はネットをスマホで見ながら笑っていた。


「笑うところじゃないよぅ。もう」


 バチボコに燃えているネットを見て笑っている俺に、うんざりとため息をつくキラ。


「マジで魔法少女が戦争犯罪人になったらどうするの?」


「国際魔法少女基金が保護してくれるって。そもそも戦争行為には参加しないわけだし」


「わかっちゃいるけどさー」


 あれからネットの声はキラ……つまり堕星少女スタッブスターにも向けられているが、不気味なほどにノーコメントを貫いていた。一応ネット経由でコメントを送ることもできる。ついでにそのための通信経路は全部無雲帝国側で用意しているので、今のところバレる気配もない。魔法少女……バーゴストライクが入力したコメントを、一回アナログに変換して、その後で国際魔法少女基金がまたデジタルに復元する。そうして基金が魔法少女の言葉を代弁するのだ。国際魔法少女基金に対しても、人類の批難は浴びせられた。


「金で魔法少女を売るのか!?」


 などなど。こっちについては最低限度の説明だけなされ。


「あくまで魔法少女はメターマンに殺されそうな人間の救護のためにだけ動く」


 と。事務的に回答。それで納得できるはずもないバーゴストライク推しは怒りを炸裂させ。アメリカの次くらいに基金を責めた。


「スタッブスターのところにも非難のメールは来てるよー」


「まぁそうだろうなぁ。侵略戦争を仕掛ける側だしな」


 世の中の人間にとって戦争はアレルギーだ。戦争=悪の図式は既に社会の常識にまでなっており、経験したことのない人間でも戦争という言葉を聞くだけで嫌悪してしまうワールドワイドな共通意識が生まれている。国際政治的にはやり取りの一つとして認知されているが、それでも他国に戦争を仕掛けるというのは先に殴った者の負け、という一定のルールで地球人類の目に映る。


「オワルはどう思ってるの?」


 スルスルとストローでアイスコーヒーを飲みながら、キラは俺に聞く。


「前にも言った通りだ。後悔しない道を選べ」


 それ以上は言うこともそんなにない。


「米軍とやり合う……か」


 米軍の兵士の命を救護するためにメターマンとの戦争を回避させる、という名目で米軍への抑止になる。


「胃が痛いなぁ」


「そこまで含めて大丈夫だ」


 俺もアイスコーヒーを飲みながら、お気楽にそんなことを言った。


「何を根拠に?」


「さあ、別に何を知っているわけでもないしな。ただ、バーゴストライクが早まった真似をするとも思えないし」


「逸ってはいるかもしれないけどね」


 堕星少女スタッブスターは然程ヤワじゃないだろ。


「にしても、バーゴストライク推しは、魔法少女に戦争してほしくないみたいだな」


 スマホでネット議論を見ながらニヤニヤ。


「当たり前だよー。私だって嫌だよー」


 とかなんとか言っているが、やはり最近のネットの意見は強い。昔は単なるチラシの裏だったが、現在のネットの意見は名声を持つほど過敏にならなければいけない時代だ。実際にアメリカの企業の株価がただアメリカに所属しているというだけで暴落し、ニューヨーク市場は悲鳴を上げている。このままでは大恐慌まで発展するのでは、と株式のトレーダーは別の意味でドキドキしているのだが。ちなみに俺は上場していないし。エンドレース株式会社の株を百パーセント握っているので、誰に口を挟まれる理由もない。


「逆に無雲帝国側の株は上がってるみたいね」


 とは言っても十万人の島だ。株式企業そのものは多くない。島民は漁師だったりなんだったりで。島の面積を拡張するために作られたメガフロートに、いくつか大企業の支社はあるが、それらについても株価が上がって嬉しいとかそういう気持ちもないだろう。何せ第七艦隊が迫ってくるのだ。最悪国外逃亡まで視野に入っていてもおかしくない。島民もアメリカの暴虐には怯えているが、一部徹底抗戦の構えを持っている人間もいたりして。中々面白い構図になっている。


 一部では「核融合技術を開示してくれ」とエンドレース株式会社にお願いする島民もいたりするが、そっちについては紳士的に対応するように通達している。別に開示するのはいいのだが、その技術の特性上、どうしても素材の奪い合いに発展し、企業による国際戦争の火種になってしまうから秘匿しているのだ。その素材は今のところ独富島からしか採取できないので、俺はレコンキスタドーンを結成し、独富島を日本から独立させたわけで。


「ほんっとーに笑い事じゃないのよ?」


 キラの言い分ももっともではあるのだが。


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