第38話:星崎キラーンの場合
「話したいことがある。庵宿区に来れるか?」
そんなメッセージを俺はキラに送った。ブローギアのワープ能力を使えば東京の庵宿区まで一瞬だろう。俺のWARPドライバについても同様だ。
「何の用?」
「お前が悩んでいることについて」
「知ってるの?」
もちろん知っているが、それを馬鹿正直に言うわけにもいかず。
「話だけでも聞いてやるって言ってるんだよ」
カレン曰く。アクションが起こらないならこっちから起こしてしまえ作戦。
「ま、いいかぁ。じゃあ庵宿区ね。カフェにでも行く?」
「高級料理店を予約してある。話しやすい場所がいいだろ?」
「否定はしないけどさ。払えるの?」
「なわけでキラが来てくれないと、俺は生活費に困ることになる」
「勝手にレストランを予約して、支払いを私に依存って」
はっはっは。ヒモだな。
「いいけどさー」
そんなわけで庵宿駅で待ち合わせして、それから高級レストランへ。個室を頼んでおいたので、そこはまぁ話しにくいことを話せると思っての配慮だ。支払いはキラ任せだが。
「美味しいわね」
「ん。美味いな。流石というか何というか」
ちなみに和食料理店だ。魚と山菜がメインのコース。
「で、何があった?」
「オワルはさ……」
悲痛。一言で言えば、それ以上はない。
「魔法少女が戦争を起こしたらどう思う?」
「巻き込まれん限り、どうとも思わない」
「その戦場が無雲帝国でも……?」
「それは……ちょっと困るな」
ちょっとどころじゃないが、俺はそれを知っているし、対応策も練っている。
「今……今ね……」
「話しにくい事か?」
清々しいまでに知らないふりをして、俺はキラを案じる。
「米軍が無雲帝国に侵攻する作戦を立てているの」
「ふーん」
魚を食いながら、俺はそう言う。
「…………驚かないの?」
「まぁ」
「米軍だよ? この世界最強の軍隊だよ?」
「とは言っても無雲帝国にはメターマンがいるしな」
「だからその対処のために米国は国際魔法少女基金に大金を投入したの」
「つまり堕星少女スタッブスターが米軍と一緒に無雲帝国を侵略する……と?」
「国際魔法少女基金は戦争には加担しない。けれど米軍の兵士たちの命をメターマンから救護することは求められている」
「じゃあいいじゃん」
「何もよくない!」
悲痛。さっきも言ったが、それが星崎キラーンを苦しめている。
「ねえ。オワル……私どうしたら……」
「米軍を止めればいいんでない?」
「米軍を?」
「要するに、米軍は無雲帝国に侵略したい。けれどメターマンが邪魔。その対処に魔法少女を選んだ、と」
「そゆこと」
「じゃあ米軍の護衛のために米軍を止めれば?」
「…………」
矛盾をしているようで理屈は通っている。彼女が取るべき選択肢に、一考の余地はあるだろう。そもそもメターマンと敵対するというのが米軍にとっては自殺行為。その勝率を上げるために国際魔法少女基金に入金。であれば魔法少女がすべきことは、人命救護。つまり米軍を止めることは仕事の一つともとれる。
「オワルって変なとこ聡いよね」
「褒められてんのか?」
「褒めてるよ」
「アメリカなら大金払ってくれるんだろ? 任務さえこなせばウハウハじゃね? 無雲帝国には確定申告も無いし」
「お金を貰って米軍を止める……か」
ま、それより先に俺が介入するんだが。そこまでは言うつもりはない。
「で、すっきりしたか?」
「スッキリはしないけど……だって無雲帝国には私の親もいるし」
「全員守るんだ。無雲帝国も米軍も。それが出来るのはキラしかいない」
「わかった。責任もって全員守るよ」
「その意気だ」
「はー、にしても美味しいなぁ」
「支払いは頼むぞ」
「マジで私が顔を出さなかったらどうする気だったの?」
「一人で飯を食って財布が寂しくなっていたところだ」
というのは虚偽だが。
「お金なら心配しないでね。私がオワルに貢ぐから」
「ダメンズの典型だな」
「それくらい私はオワルに夢中ってこと♡」
「天下の堕星少女スタッブスターが……ね」
「百億円の女だよ? 欲しくない?」
「超欲しい」
「だからオワルのことが好きだよ♡」
それこそ褒められていると思えないような。
「他の魔法少女はどう思ってるんだろうね?」
「さてな」
「私は無雲帝国出身だから良心の呵責があるけど、他のバーゴストライクは普通に参戦するのかな?」
「それも、さてな」
っていうか全員無雲帝国の所属なんだが。ま、それは後刻のこととして。
「とすると他の魔法少女とも戦う羽目に?」
「殺し合いはするなよ?」
「分かってるけどぉ」
重力魔法の使い手。堕星少女スタッブスター。その威力はある意味で天体レベル。ま、それは他の魔法少女にも言えるんだけど。
「オワルは私を応援してくれる?」
「もちろんだ。スーチャだってするぞ」
「オワルもバカだね」
「魔法少女には投げ銭をするだけの価値がある」
「今度はステーキを食べに行こうね。私が奢ってあげるから」
「そうだな。肉もいいな」
「一生養ってあげる。だから私に溺れて?」
「要熟考ってことで」
「二江さんほどおっぱい無いけど」
「大きければいいというものでもないだろ」
「でもそこそこあるよ?」
それも知ってる。御本人がCカップって言ってるからな。実際にある方だろう。どちらかと言えばギリギリDカップ寄りのCカップだから。いや、おっぱいの話はこの際どうでも良くて。




