第37話:三美姫のいない風景
「???」
疑問を覚えたのは登校しているところでだ。今日はマスラオが突撃してきたりしていないし、登校路にキラが待っていたりしない。
「珍しいっすね」
で、お隣さんの香鳴カレンと一緒に登校して、まぁそれはそれでヘイトを買ったのだが。カレンも可愛いんだよなー。さすがキレイさんの娘っていうか。俺としてはそのまま美少女として育ってほしいに二万点。
「何かあったんすかね?」
「さーてなー」
だいたいわかっていたが、まぁ気持ちを整理する時間も必要なのではないか。ちょっとそんなことを思った。昇降口でカレンと別れて、教室へ。俺は教卓前の席。両隣にはキラとキワミがいるはず……だったが、今日はまだ来てない。というか来ないかもな。まぁそりゃ国際魔法少女基金から米軍に加担して独富島……無雲帝国の侵略に力を貸せとか言われると、悩みたくもなる。俺は別に何とも思っていないが。無雲帝国の皇帝として、米軍を迎え撃つ準備は滞りなく進んでいるが、それをキラたちに言うわけにもいかないし、諦めて空母の護衛くらいは務めてほしいのが、スポンサーとしての意向。まぁとはいえキラたちにも俺がシングルモルトだと暴露する気は無いのだが。
「よーし。ホームルーム始めるぞー」
で、ホームルームのために入ってきたのは男性教諭。壱岐尾先生は?
「今日は壱岐尾先生は調子を崩してお休みだ。なので俺が駆り出された」
三美姫だけじゃなく壱岐尾先生もお休みか。これは寂しくなるな。両隣も後ろの席も欠席で、俺は一人教卓前に孤立していた。それをざまぁと思うクラスメイトもいるにはいるが、どちらかと言えば三美姫が欠席したことが彼らには思案の材料らしい。俺は久しぶりに集中して授業を受けて、それから昼飯を食いに学食へ。最近は三美姫が弁当を作って来てくれたので、学食もちょっと懐かしい。
「あ、先輩♡」
で、学食でカレンに会った。灰色の髪の美少女。染めているのではなく地毛だ。おっぱいはキレイさんの娘だというのに残念無念だが。別にそれは俺の気にするところでしかない。
「一緒に食べないっすか?」
「構わんが。何食いたい? 奢るぞ?」
食券機にお札を飲み込ませる。
「じゃあいただきますっす! マーボー丼」
「俺もマーボー丼にするか」
そうして二人そろって、マーボー丼を頼んで席に着く。
「今日、三美姫の先輩方が来ていないって聞いたんすけど」
「全員欠席だな」
「何でっすかねー?」
「さてな。皆目見当もつかん」
どうせ米軍の側について無雲帝国に敵対することを懊悩しているんだろうけど。
「話、聞いてみたらどうっすか?」
「中々建設的なことを言うな」
「先輩、三美姫には優しいっすから」
否定はしないが。
「あと堕とせるかもしれないっすよ?」
「…………」
既にいただいているとか、どうやって角が立たずに説明できる?
「でもこうやって先輩を独り占めできるのも新鮮でいいっすね」
「カレンは俺が好きなのか?」
「大好きっす」
「そりゃ重畳」
「先輩が望むなら何でもするっすよ?」
「非人道的なことでも?」
「それは……ちょっと……」
カレンの目が泳いでいた。まぁそうなるよな。
「でも先輩が好きなのは本当っすから」
「そこはありがと」
「えへへー。好きっすよ。先輩♡」
そうしてマーボー丼をかきこむ。うーん。美味い。
「っていうかクラスメイトと食べなくてよかったのか?」
「友達にはあたしが先輩に惚れてるのバレてるっす」
「男の趣味が悪いとか言われなかったか?」
「先輩がいい人なのはあたしだけが知っていればいいっす」
さいですか。そうして飯を食い終わって、返却棚に食器とトレーを置き、俺とカレンは別れる。そのまま教室に戻ると、そう言えば俺はクラスメイトと交流を持っていないことに気付いた。とはいえ今更話しかけるのもなー。しょうがないのでバーゴストライカーズのデッキを再編成する。バーゴストライカーズは魔法少女を題材としたTCGで、世界中で人気のカードゲームだ。ちなみに俺のコモンカードにはキラたちから直筆サインをもらっているので、その価値はユニークレアを超えている。もちろん背景を探られても困るので自慢する気は無いんだが。
そうして昼休みの時間を潰し、午後の授業。それから放課後。部活動に精を出す生徒もいれば、ソシャゲに精を出す男子諸氏もいる。無雲帝国は電気代が異常なほど安いので、スマホ世代にはありがたい環境だ。
「さて」
そうして帰宅部である俺は家に帰って、そのままソシャゲに没頭する。三美姫と壱岐尾先生が心配な気持ちはあったが、相手からアクションが無いとこっちとしてもリアクションを取り様がない。
「せんぱーい」
で、飯前のソシャゲでデイリーミッションをクリアしていると、お隣さんが声をかけてきた。香鳴カレンだ。
「飯食ったっすか?」
「いや? まだ」
「お母さんがご飯を一緒にどうかと。今日は水炊きっすよ」
「鍋か。じゃあご馳走になろうかな」
「ありがとうっす!」
「ソレはこっちのセリフだが……」
「先輩と一緒に飯が食えてあたしは嬉しいっす」
さいか。
「それで三美姫とは連絡取れたっすか?」
「まだだなー。何と声をかければいいのか」
「あたしなら先輩に心配されるだけでも嬉しいっすけどねー」
そんなもんか。
「じゃあちょっとメッセージ送ってみるか」
「それがいいと思うっす。あとお母さんの水炊きは美味しいっすよ」
「ソレは知ってるよ。どれだけキレイさんの料理に救われたと思ってるんだ」
「あたしもちょっと手伝ったっす」
「偉い偉い」
くしゃくしゃとカレンの髪をかき混ぜる。
「あらあら。いらっしゃい。オワルちゃん」
「ご馳走になります」
「一緒に食べてくれるだけでも嬉しいわ。オワルちゃんは大丈夫かしら?」
「さっきから腹が減って減って」
「じゃあ始めましょうか。もう煮込んであるの」
「玄関までいい匂いが漂ってきますね」
「ダシから取ったからかしらね?」
水炊きということは昆布ダシか? まぁキレイさんの料理にはハズレが無いので、そこは安心している。実際に水炊きは超美味かった。南無。




