第36話:シングルモルトの憂鬱
「…………」
とある休日のこと。ツインクイーンに呼び出され、エンドレース株式会社本社ビルの最上階に俺は居た。社長椅子に座って、提出された資料を読む。
「米国が、ね」
国際魔法少女基金に米国が千億ドルの入金を提案、とある。
「もちろん知っていらっしゃったのでしょう? シングルモルト様」
まぁ知らなかったわけではないが。そもそも基金は魔法少女を戦争利用に許可出すわけないはずだが?
「表向きは人命救護……とされています」
ハーレクイーンの方が、そう補足する。
「米軍が動いて、それに対してメターマンが反応する。米兵を殺したくないので、国際魔法少女基金に入金。魔法少女を総動員して空母の護衛、か」
「如何様にいたしましょう? 暗殺が最も効率がいいと思う次第でありますが」
「あたしもそう思うっす」
ツインクイーンは、その様に進言する。間違っている、とは言い難いのだが。
「こっちとしては構わんぞ。魔法少女が第七艦隊の空母守護についても」
「本気で仰られていますか? シングルモルト様……」
俺の判断に正気を疑う。まぁ不敬ではあるが、ここは見逃そう。
「米軍が動くとなれば、相応の対処が必要になるんですけど」
「メターマンが暴走するより先に手を打つ。これしかないな」
「可能とお考えですか?」
「無謀ではない、程度だな」
「できればその論拠を示してほしいのですけど」
言われて俺はソレを見せる。こっちもこっちで秘密兵器はあるのだ。というか俺が介入しなくてもツインクイーンであれば魔法少女たちと互角に戦えるが、彼女らの存在を公にするわけにもいかないし。ツインクイーンの二人だけでメターマンを戦力に数えなくても米軍程度はどうとでもなる。というのも事実ではあるのだが。
「それでシングルモルト様が直々に……」
「危険っす! 何もシングルモルト様が前線に出なくても!」
「別段問題なかろ。俺としてもコレを試してみたいしな」
とさっき見せた、ソレをチラリと見る。
「しかし……」
ハーレクイーンの方も安易には頷けないらしい。俺への忠誠心が心をかき乱しているのだろう。
「というわけで、米国には俺が対処する。お前らが前に出ることはない」
「シングルモルト様! どうかご再考をっす!」
シークイーンの方が焦った様子で俺に進言する。
「一千億ドルの金が手に入ってついでに性能試験も出来るんだ。願ったりじゃないか?」
「お考えは変わりませんか?」
ハーレクイーンの方は穏やかに確認を取ってくる。
「まぁ、そうだな」
少なくとも脅威ではない。それだけは確かであったから。俺のWARPドライバの威力を知っていれば、万が一という可能性さえ絶無なのはツインクイーンのよく知るところだろう。
「シングルモルト様がそう仰るなら、その様に」
「ハーレクイーン!」
悲痛な表情で、シークイーンがハーレクイーンを責める。
「そもそもシングルモルト様に逆らえるはずもないでしょう?」
「それは……そうっすけど……」
「ただし基金には徹底させろ。魔法少女が人命救護以上のことはしない、と」
「承知しました」
恭しく頭を下げて、ハーレクイーンのおっぱいが揺れる。Gカップのおっぱいは前衛的なデザインの衣装でビーチクが隠されているが、その大きさまでは隠されていない。ツインクイーンの衣装は五分の四ラ……つまりエッチ衣装なので爆乳のハーレクイーンは動くたびにビーチクが零れそうになる。マジでエロいな。ハーレクイーン。
「じゃあ後はよろしく。言った通りにな」
「承りました。偉大なるシングルモルト様」
悪の組織の女幹部が俺をご主人様と認める。そのことに興奮しない男子はいないだろう。ああ、レコンキスタドーンを立ち上げて良かった。一応俺が無雲帝国の皇帝ではあるのだが。国際的に認められているかどうかはともあれ。でも合成燃料を格安で全世界に売っているのだ。もはや無雲帝国が無いとエネルギー資源が困ってしまう国も存在する。それでも産業スパイが後を絶たないのは、その核融合技術を各国が欲しているが故。
俺はWARPドライバで、エンドレース株式会社の社長室から自分の家に戻った。細かいことはツインクイーンが何とかするだろうし。国際魔法少女基金の所属者だって馬鹿じゃない。俺の言うことは聞いてくれるはずだ。
「飯でも食うか」
今を時めく無雲帝国の皇帝が冷蔵庫からオカズを取り出す虚しさはこの際ツッコまないとして。
「うーん。キレイさんの煮物は絶品だな」
バツイチの元人妻のキレイさんはとっても料理上手なので、俺も助かっている。そうして飯を食っていると、今日も今日とてスマホが鳴る。通知の合図だ。つまりお知らせ。俺は飯を食いながらスマホを起動させ、今日の魔法少女チャンネルに飛ぶ。
「今日は堕星少女スタッブスターか」
とすると俺の部屋に現れるのは……星崎キラーンになるわけだが。
「グラビティギロチン」
『スタッブスターキター!』
『これで勝つる』
『俺たちの希望』
『投げ銭が止まらないぜ』
そうして一回の出動で五億円。さらに動画配信のスーチャで数千万円。もちろんスタッブスターの動画を配信しているドローンカメラはツインクイーンが現地に持ち込んだもの。彼女たちは魔法少女動画チャンネルを盛り上げるのがその最大の仕事である。後はメターマンの暴走のトリガーとなった人物の抹殺。
「ファイナリティマジック……」
『キター!』
『いけー!』
『魅せてみろ!』
『これが俺たちの!』
『スタッブスターだ!』
「ストナァァァァァ! ブラァァァァック! ホォォォォォル!」
ブラックホールが堕星少女スタッブスターの杖から生み出され、巨大化したメターマンを圧殺。そうして今回の戦いは終わり。ドレスティック・インバータをするために、俺の部屋まで転移してくる堕星少女スタッブスター。改め星崎キラーン。
「見た見た? 視聴者のバカども! ププッ! あたしが可愛く振る舞って魔法少女をしたら数千万円も貢いでくれるんだよ? バカだよねー。マジで人生イージーモードだわー。オワル。寿司食べに行かない?」
「今、飯食ってる」
ちなみにキラは裸だ。まだドレスティック・インバータは再構築をしていない。普通におっぱいが見えて、女の子の大切なところが丸見えだ。だが既に慣れたのか。俺に対して隠す気は無いらしい。
「むしろ写真撮る?」
「撮っていいなら」
「オワルにならいいよ。どんなポーズがいい?」
「じゃあ――――で――――して――――を維持したまま両手でピースサインして」
「そんな♡ 女として終わりじゃん♡」
「俺に逆らうのか?」
「さ♡ 逆らいません♡ オワルの言う通りに♡」
「それでいいんだ。俺だけのメスブタ」
「メスブタ……♡ オワルだけだよ♡ 世界で私を好きに出来る男子は♡」
「他の男どもはお前にメロメロだからな」
「きっと私を見て執行執行してるんだろうねー。クスクス。男って悲しい生き物だよねー」
俺もその男なんだが。
「オワルは別♡ 私のことを肯定してくれる王子様だから♡」
だからお前の地球人類を下に見る姿勢には引いてるって。…………多分。




