第35話:幼馴染は負けヒロインなのか否か
「アイツらの顔……傑作だったな」
ケラケラと笑いながら和食料理店で飯を食っている俺とマスラオ。金は全部マスラオが出すというので俺は有難くゴチになっていた。ここの魚料理はマスラオの父親から買い取っている魚で成り立っており、つまり第一次生産の関係者の息子がマスラオというわけだ。
「テーブル空いてるか?」
と予約も無しにマスラオが聞くと、店員は斑鳩の家の息子だと襟を正し、個室を用意してくれた。出てくる料理も魚メインで、それはそれで美味しいのだが。マスラオはニコニコ笑顔で俺を見ている。
「俺の顔見て楽しいか?」
「オワルはイケメンだからな。見つめるだけで幸福になれる」
あんまり自覚も無いのだが。
「ってわけで、俺を抱かないか?」
「男だろお前」
「そこはブローギアで女体になるからさ」
俺とセクロスするためだけに魔法少女に変身する気か?
「おっぱいは無いけど、ほら、そこはフォローするし」
マスラオとねぇ。
「っていうか。オワルって童貞か?」
「否」
「オワルのくせに生意気だ」
はっはっは。こっちにも都合はあるんだよ。
「じゃあ処女の俺をリードできるだろ」
「マジでやるの?」
「少なくともこっちはそのつもりだが?」
マスラオ……というか罠娘少女ダーンディアナとね。
「処女じゃなくていいのか?」
「そこはほら、バレなければやってないのと一緒だろ」
「ネットが大炎上するぞ」
「オワルはネットに呟くのか?」
呟かないけどさ。
「じゃあいいだろ。別に男の俺を抱けと言っているわけじゃあるまいし」
ハーレクイーンとシークイーンを抱いているから初めてではないんだが。ソレはシングルモルトの話で。ここにいる俺は海外出張サラリーマンの息子の中流家庭の被保護者である遠藤オワルなんだが。
「ちなみに断った場合は?」
「逆レする」
うーむ。引くも地獄進むも地獄。
「いいだろ。俺だって星崎や二江よりオワルのことが好きなんだよ」
「そんなラブコメフラグを立てた覚えはないんだが」
「結婚の約束しただろ」
残念ながら記憶にない。
「俺はそれだけを胸に今日まで生きてきたんだぞ?」
「俺と結婚して嬉しいか?」
「子供は期待できないけど、幸せな家庭は築けると思うぞ。パートナーシップ制度は無雲帝国でも推し進められているし」
いや。俺の心情の話をしているんだが。アジの刺身をパクリと食べる。和食料理店の魚は美味しかった。さすが斑鳩のおじさんがとってきた魚だ。大金を支払っても惜しくない美味なる魚。
「マジで奢ってくれるの?」
「高級料理くらいじゃ散財にもならねーよ。こっちは数百億稼いでいるんだから」
まぁソレで言えば国際魔法少女基金から金を受け取っている俺……というかエンドレース株式会社はもっと稼いでいるのだが。世界中のどこかしこでもバカが溢れているせいで、魔法少女の需要は一向に収束を見せない。まぁたしかにレコンキスタドーンは核融合技術を秘匿しているし、産業スパイや国家機関がその技術を盗みたいという気持ちも分からないではないのだが。
「それでオワル。俺を抱いてくれるか?」
「罠娘少女ダーンディアナであれば考慮はする」
「じゃあ飯食い終わったら俺の家に来るか? 俺の家だったら変身しても不可解には思われないし」
マスラオの家ね。親はいるだろうが、息子の個室に聞き耳を立てる真似はしないだろうし。ドレスティック・コンバータの最中に親が現れる可能性も無いか。なにより魔法少女であるのは一定時間なので妊娠の心配もない。マスラオにとって魔法少女の女体化は一時的な現象なのだ。
「まぁそこまで言うなら……」
「マジか!?」
「その前にお前はいいのか? 俺と、その、して?」
「言っとくけど、俺はオワルにベタ惚れだからな」
「そんな心酔するほど何かしたか?」
「いじめっ子がいじめられっ子のトラウマを覚えていないように、惚れさせたオワルも惚れた俺の心情は覚えていないんだな」
まぁさすがに幼稚園まで遡るからな。親が本国でサラリーマンになったから、シングルモルトとして無雲帝国の皇帝になるまでは単なるWARPドライバの使用者でしかなかったし。
「じゃ、俺の部屋に行こうぜ」
そうして斑鳩の家にお邪魔する。
「あらー。オワルちゃん。お久しぶり。ご両親は元気?」
とマスラオのお母さんに聞かれて、「順調ですよ」と答える俺。
「じゃ、俺とオワルは部屋でゲームするから余計なことをするなよ」
と親を牽制して、引っ張るように俺を自室へと連行する。
「来い。ブローギア」
そうしてどこにあるかもわからないブローギアを言葉一つで呼ぶ。正式名称はブルーローズィック・ギア。略称がブローギア。
「ドレスティック・コンバータ」
そうしてマスラオは魔法少女に変身した。こうなるとマスラオの肉体そのものが女体に変身する。もちろんおっぱいは貧乳だけど。
「ほら、俺だって女になれるんだぞ♡」
「頂いていいのか?」
「オワルにだけ♡ 抱かれたい♡」
それはまた早まった真似を。
「キスしてくれるか? オワル……」
美少女に変身したマスラオになら、出来ないこともないのだが。
「一夜の夢を見せてくれ。テキーラにも劣らないキスをして」
そうして俺とTSしたマスラオのシルエットが重なる。一夜の体験。マスラオのアレはびしょ濡れで、俺のモノを簡単に受け入れた。また魔法少女らしいドレスの具合もあったのだろう。愛らしい服装で俺を誘う罠娘少女ダーンディアナはそれはそれは可愛かった。
「オ……ワル♡」
満たされたように笑顔でマスラオは俺に抱かれる。魔法少女であるとき限定でマスラオはメスになる。俺のアレを受け入れて、幸せそうに喘ぐ。
「マジで大丈夫か? マスラオ」
「俺はオワルが好きなんだ♡」
そこまで覚悟が決まってるなら言うことはないんだが。
「オワルは気持ちいいか?」
「まぁそりゃ息子は大張り切りだが」
「俺を女として見てくれるんだな♡」
「罠娘少女ダーンディアナ限定でな」
「それでも嬉しい♡」
そうして俺とマスラオはシルエットを重ねていった。何をしたかは言うまでもない。




