第27話:キワミのお弁当
「おおう」
思ったよりガチだな。そういうわけで今日の昼休みはキワミの手作りのお弁当を御馳走してもらうことになったのだが。
「むー」
「うー」
キラとマスラオがサンドイッチとコーヒー牛乳を持ちながらゼロ距離で俺を睨んでいた。どうやら今日は学食ではなく教室で食うらしい。まぁキワミにこうも動かれるとな。監視対象にはしたいところだろう。そのキワミの弁当だが、重箱だった。色々な具材がより取り見取り。栄養を考えながらも若者向けで、ついでに彩りもいいので視覚的にも楽しめる。
「……はい……旦那様♡ ……あーん」
「あーん」
言われて食べさせられたのは煮物。それも根菜の類。肉ももちろんあるが「……健康面を考えて……まずはお野菜から食べましょう」とはキワミの提案。健康を慮ってくれるのは嬉しいが高校生に血糖値を危惧させるのはどうかと思うのよ。
「……次はアスパラガスのベーコン巻きです。……あーん」
「あーん」
一つ一つ解説付きで食べさせてくれる。もちろん教室にヘイトを買いながら。
「それではそろそろお米を。新米の季節ではありませんが、一応相応の銘柄を取り寄せました」
一応独富島は無雲帝国の領土なので、日本からコメを買うときは輸入という形になる。関税はほぼ無いにも等しいが。無雲帝国の方は日本に悪感情を持っていないし、日本の方は独立宣言時の紛争で無雲帝国の戦力の大きさを分からされている。結果として、日本が無雲帝国に不利になるような政策はしない。
「……旦那様……あーん」
「あーん」
そうして一口サイズの寿司を口に運ばれる。酢の匂いがしたが、おそらく殺菌性を考慮してのことだろう。もぐもぐとキワミの料理を食べていく。
「キワミは料理上手なんだな」
「……誰が旦那様になってもいい様に……花嫁修業をしましたので」
「辛くなかったか?」
「……こうして旦那様に巡り合って……修業をしたことが報われております」
うっとりとした瞳で俺を見るキワミ。
「ダメーッ!」
そうして二人の空気を展開していると、キラが俺の首根っこを掴んで引き寄せた。
「えーと、どうかしたか?」
「今キワミ! メスの顔になってた!」
「だな! ソレはちょっとズルいぜ!」
こういう時は息ぴったりなのな。キラとマスラオ。ついでにスマホが通知を鳴らしまくる。壱岐尾先生が鬼コメしているのだろう。どうしてこうなった? 俺はどこで間違えた?
とりあえずそんなわけで昼食は終わったのだが。
「……旦那様……イチャイチャしましょう」
ギュッと机を隣接させている関係上、俺の左腕に抱き着くキワミ。またそのおっぱいがとっても心地よく。脂肪の塊と分かっていても、このロマンがどこから来るのか。ソレは男子の永遠の謎だろう。フニュン。ムニュウ。とブラ越しとはいえ、キワミのEカップは学生のそれとして破格。おそらく学年だけで言えば圧倒的な一位だろう。まぁソレを言ったら壱岐尾先生はHカップだし、香鳴キレイさんはGカップだけど。そのキレイさんの爆乳を遺伝子的に引き継いでいないカレンがたまに俺に愚痴を漏らすが、それはそれで対応に困ってしまう俺ではあった。
「……旦那様。……今日はボクのためにお時間をくださりありがとうございます」
「これくらいなら……まぁ……な」
「……それでは放課後デート。楽しみにしていますね」
「おう。任せろ」
「オワルー?」
「オワル~?」
ジト目で睨むキラとマスラオ。星崎キラーンなんて、一声かければ男子なんて簡単に釣れるだろ。と思っても言わない紳士な俺。
「じゃあデートねぇ。どこに行くか……」
「オワルく~ん~?」
だからそんな目で見られても俺から返せるものが無くてだな。マスラオはそもそも俺を好きすぎるだろ。多様性の時代とはいえ、一応そっちの趣味は無いぞ。俺。場合による、という言葉を付随するならだが。さっきから壱岐尾先生の鬼コメが止まらないが、そっちはそっちで無視させてもらおう。相手をするのも厄介だ。
「この時のグラフの極値ですけど! どうやって算出するか分かりますか! 遠藤くん!」
で、数学教師であるところの壱岐尾先生は、俺を許し難しとばかりに問題を振ってくる。軽やかに躱している俺だが、それでも計算間違い程度はして。
「むぅ。これは個人授業の必要が……」
最初からそっちが本命だろ、とツッコミをするのは大人の対応ではないのだろう。今更大人の対応をしていない壱岐尾先生に俺の方が紳士になる理屈も理由もないわけじゃないが。
「というわけで、遠藤くんはこの後個人授業です」
「補習は受けるので、後日にまわしてください」
午後の授業を受けておきながら、さらにキワミとのデートを潰してまで受ける補習は俺には無い。そうして放課後。「補習をぉぉぉぉぉぉおおおおお」と間延びした声を流す壱岐尾先生には悪いが、後日にまわせ。
「……どこに連れて行ってくれるんですか?」
「適当にメガフロートでも散策しようぜ」
「ぐぬぬぬぬ」
「むぅぅぅぅ」
唇を噛んでいるキラとマスラオはこの際見ないことにして。キワミの手を握って、仲睦まじくデートをする。もちろん後ろからキラとマスラオがつけているのは理解しているが、それは知らないフリが賢明だろう。
「……あまりこういうところに来たことが無いのですけど」
「ああ、わかる。なんかキワミって箱入りって感じ」
「……否定も難しいですけどね」
「コーヒーでも奢ってやるよ」
そんなわけで独富島に出張しているスタブに顔を出す。呪文みたいに長い名前の期間限定ペチーノをキワミに奢って、俺は普通のコーヒーを。
「……旦那様はこう言うところにはよく来られるのですか?」
「平均的な若者が利用する程度にはな。カフェでもいいんだが、まぁ今日はキワミの冒険ってことで」
「……エスコートしていただき感無量です」
とか言ってると、スマホが通知を出してきた。それはキワミも同じらしい。お互いに視線で許可を取ってスマホを見る。
「……またバカやってますね」
それには激しく同意する。いつでもどこでも無雲帝国に悪意を持とうとする人間は消えない。そのたびにメターマンが襲い掛かるのだが、懲りることを知らないらしい。行くぜ結晶と歌うメタルヒーローのOPの二番の歌詞みたいだ。
「究極少女アルテミストは行かなくていいのか?」
「国際魔法少女基金には出動要請が来ていませんから」
「とすると、今回は……」
『オバサンキター!』
『おいやめろ』
『燃やされるぞ』
『いっそ燃やされろ』
というわけで冷熱魔法の使い手。太陽少女オーバーサン。彼女が壱岐尾先生だと知っているのは、多分世界で俺だけだろう。マスラオやキワミじゃないんだから親御さんに相談したりしないだろうし。
「バーンランチャー!」
熱塊を砲撃にしてメターマンを焼き殺そうと奮起する。その努力は買うが。メターマンもメターマンで都市破壊を止めない。建物が崩落し、人が殺され、インフラが破壊される。まるで破壊の権化だが、あながち間違ってもいないのか。
「巨大化するまであと二分ってところですね」
どうせファイナリティマジックで倒されるまでが一連の流れ。




