第26話:波乱の学校生活
「なぁ。メターマンって」
「アレは無雲帝国の脅威を排除するものだ」
「拙者たちの都合では動かない」
「なんでだよ! 俺たちだって無雲帝国の国民だろ!」
「脅威だろ!」
何のことかと言えば。
「オワル。そこのケバいギャルをどうにかしろ」
「あっれー? マスラオって男だよねー? なんで女に嫉妬してんのー?」
「やー。先輩モテモテっすねー」
殺意と憎悪が俺に向いているわけだ。三美姫と呼ばれるキラとマスラオ。ついでに独富学園高等部に舞い降りた超新星。中等部でも相当人気だったらしいが、高等部に入ったことで三美姫にも並びかねないニュービーが香鳴カレンだった。その三人が俺とイチャイチャしながら歩いているのだ。仮に俺が俺以外の人間だったら包丁で刺す。まぁ俺を害することは不可能だろうけど。
ワンワンニャーニャーキーキー。三者三様に俺とイチャイチャして、膨れ上がるルサンチマンにはコイツ等が気付かないはずもないが、おそらく考慮の外。それよりも俺と仲良くしたいのだろう。気持ちはさっぱりわからんが。そうして一年生のカレンとは昇降口で別れるのだが、キラとマスラオは同じ教室なので、仕方なく、というほど後ろ向きではないが、とにかくいい加減にしろよテメーら、程度は言う。そうして教室に入り。教室の男子の視線も冷ややかで。おりゃー何もしとらんじゃーなかですか。
「…………」
俺の左隣に座っているキワミは今日もいつものようにエロコメを読んでいる。先日、俺と一緒にホテルで寝たのは夢幻だったのでは、と思わせ……はしなかった。
「あのー? もしもし?」
「……おはよう……どうかした?」
どうかした、ってあんた……。
「おはようございます」
「……うん……おはよう」
「それでキワミさん?」
「……?」
「なんで机を隣接させているので?」
「……旦那様の隣にいたいから?」
答えになっているようでなっていない。だがその爆弾発言は光の速さを超えて、教室全体を震撼させた。
「旦那様……だと?」
「待て。二江さんまでオワルに……」
「あのおっぱいが他の男に」
「三美姫を全員攻略とかどういう生まれだ?」
「DNAを採取しろ!」
「いや、キワミはそれでいいのか?」
「……旦那様のことが好き。……それじゃダメ?」
ダメではありませんけど。そういうことを言うと厄介なことになる御仁たちがおりまして。
「オワルー?」
「オワルくん?」
ニッコリ笑顔で俺を見るキラとマスラオ。
「まぁ色々あるんだよ」
一応魔法少女バーゴストライクは互いの正体を知らない。とはいえ、その全員が俺に正体バレしているという悲劇。マスラオ以外の魔法少女は全員恥ずかしい写真や動画を俺に撮られている。つまり俺のスマホは今最高に抜けるエロツールと化しているわけだ。特に壱岐尾先生のパンツ見せながらメス奴隷宣言とか、見られると社会的にアウト。誰にも見せないけど。
「じゃあ私もオワルの机にくっつける!」
そうして右隣のキラも俺の机に自分の机を隣接させた。
「オワル~……」
一人俺の後ろにいるマスラオだけが何もできない。ただ悲しい声を上げるだけだ。
「とにかく、だ。お前らどうしちゃったの?」
「何かマズい事でも?」
「……旦那様……お慕い申しております」
「オワル~?」
キラ、キワミ、マスラオの順に俺への好意を隠さない。そうして俺と三美姫の関係は学校中に広がり。それより少しだけ前。
「はーい。ホームルームを始めますよー」
高等部二年一組の担当教諭。壱岐尾先生こと壱岐尾クレナイが教壇に立つ。そして俺と机を隣接させているキラとキワミを見て、頬を引きつかせる。
「見せつけてくれますね……」
その感情はいかばかりか。俺には想像もできない。寝取られた女の気持ちがわかる男が一人でもいれば、世界平和に一歩近づくだろう。
「それじゃあ出欠をとります。皆さんタブレットに打刻をお願いします」
ニコニコ笑顔で、それがとても怖いのだが。まぁいいか。とにかく出欠を取る。俺は登校のボタンを押した。
「ところで星崎さん。二江さん。なんでごs……遠藤くんに机をくっつけてるんですか?」
今ご主人様って言いかけたか?
「深い命題だね」
「……愛しているから」
「あ、あ、愛?」
ポカンとしているところ悪いが、壱岐尾先生の場合人のこと言えないだろ。
「そんなわけで、私たちのことは放っておいてください~♡」
「遠藤くんも同意見ですか?」
「まぁ校則に違反しているわけでもないし。好きにさせりゃいいんじゃないの?」
今更俺がどうのこうのと言ってもしょうがないし。
「それではホームルームを終わりまーす」
頬を引きつらせたまま壱岐尾先生は教室を出て行った。今日の一限目は古文だ。
――――! ――――! ――――! ――――! ――――!
スマホがいきなり震えだす。おそらく壱岐尾先生が鬼コメしているのだろう。見るのも怖いので、後にしよう。そもそもキラとキワミに挟まれた状態で、壱岐尾先生のコメント見るとか自殺行為だし。
「……旦那様。……今日のお昼は作ってまいりました」
「キワミの手作り?」
「……はい。……つたない身ではありますが」
「じゃあお礼にクレープ奢ってやるよ。帰りに食べに行こうな」
「……余分なエネルギーを取ったら……またおっぱいに……」
そういうクラスを凍らせること言わないで。
「じゃ、お昼を楽しみにしているな」
「……魂を込めて作ったので……楽しんでいただければ幸いです」
そうしてニコリと俺に笑う。何が嬉しいんだろう? 世の中は不思議だ。
「オワル! 明日は俺が昼飯作ってくるぜ!」
「じゃあその次は私!」
マスラオとキラが挙手する。もはや俺の教室での居場所を無くしたいらしいな。
「……旦那様……このメスブタどもは何を言っているんでしょう?」
「俺を好きだと言っているんだよ」
「……ボクの旦那様に?」
「お前のじゃないぞ」
「……旦那様は御冗談が上手いのですね」
いや、冗談なんかじゃ……とは言えない。そのまま究極少女アルテミストになられても困る。負ける気はしないが、それはそれとして、だ。
「じゃあ昼御飯は交代制な。食費を金で渡すのは味が無いし。昼御飯を作ってくれた奴とはデートってことで手を打ってくれ」
「……旦那様。……それではボク以外ともデートするって聞こえる」
「そう言ってるんだが?」
「……むう」
そろそろキワミにもわかってきただろう。俺がどういう人間なのか。
「……旦那様はそれでいいので?」
「色んな女の子とデートできるんだぜ? 最高じゃん」
ミシメキィ! と教室の男子の握っているシャーペンがへし折れた。




