第24話:東京に遊びに行く
「くあ……」
俺は欠伸をしていた。隣には目をキラキラさせているマスラオがいる。今日は独富島を抜け出して、日本の東京に来ていた。ファッションの発信地である庵宿区だ。あらゆるトレンドが集まる流行りの最先端。
「じゃあ服を選ぶか」
「俺が選んでいいのか?」
「まぁいいけど。どういう服装を選ぶ気だ?」
「もちろん可愛い奴!」
女装はマスラオの趣味でもあるしな。しかしこの後、キワミの親御さんと面会があるんだよなー。
「どうした? オワル?」
「いや、何でもない」
適当に言葉を濁して、俺は苦笑した。別にそれを今ここで言うことはない。そうして庵宿区で、トレンドのファッションを追いかけ、これ可愛いよな、とかこれもいいな、とか店員に勧められるまま試着して、しかし買わないという鬼畜。
曰く「家に保存する場所がない」らしい。魔法少女として数百億稼いでいても、貧乏性は抜けないとのこと。まぁ俺の過去の記憶通りの家に住んでいるしな。魔法少女としては成功しているのに。
「別荘でも買ったらどうだ?」
どうせブローギアを使えば一瞬で行けるんだし。
「マンションとか買おうかなーとは思ったんだが、それもそれでな」
「親御さんには魔法少女のことは話してるか?」
「まぁ一応。危険な任務ではあるし」
ソレは同意する。確実に勝てる勝負ではあるが、それでも万が一が発生するのも殺し合いの悪いところだ。
「とはいえ止める気も無いけどな。俺だって承認欲求はあるんだ」
魔法少女になればみんながチヤホヤしてくれる。それはおそらくマスラオだけの感情じゃないだろう。キラも、壱岐尾先生も、あるいは二江さんも。
「ま、マスラオがそれでいいなら俺は応援するけどさ」
「オワルに応援されると、とっても幸せな気分になるんだ。なんだろうな。これ」
「恋だったりして」
「ちなみにオワル的には俺に惚れられると困るか?」
「別に。マスラオは可愛いし……困るということもないが」
「ホントか?」
「嘘でも一向にかまわんのも事実」
「むぅ。そういうとこだぞ。オワル」
「残念ながらひねくれた性格は矯正しようもなくてな」
そうして庵宿区のカフェに顔を出し、テーブル席に座る。
「アイスココアを」
俺はアイスココアを頼んだ。
「俺はアイスコーヒーで」
そういうわけでカフェでまったりデートをするのも悪くはない。
「なぁ。オワル。使い切れない金ってどうすればいいと思う?」
「ラスベガスで豪遊でもすればいいんでない?」
「そういう浪費以外で」
「堅実な運用なら会社をM&Aするとか。マンションを買うとか。財閥に入れてもらうとか」
最後のは金の出所を聞かれるだろうから、現実的とは言えないが。
「オワルはどれがいいと思う?」
「さあ? あんまりそういうことは」
おもっくそ嘘をついたが。できればラスベガスで豪遊が一番な気がする。誰にも迷惑かけないし。使い切れない金を残して逝っても、それはそれで勿体ない。
「じゃあラスベガス行くか?」
「俺も連れて行ってくれるのか?」
「当たり前だろ? 俺はオワルに貢ぎたいんだ」
「節穴にもほどがあるだろ」
「オワルは迷惑か?」
「まさか。ただちょっとお前の感覚がよくわからなかっただけだ」
「俺と結婚すれば一生豪遊生活だぞ?」
「嬉しい提案だがな」
「そこでキモいって思わないのがオワルだよな」
「少なくとも、マスラオが可愛いのは事実ではあるし」
「だからさぁ。オワル~。そういうことは~」
「はっはっは。男の娘に生まれた自分を恨め」
「俺、可愛いか?」
「お前が可愛くなければ、地球上の女子はほぼブサイクだろ」
持ってこられたアイスココアを飲みながら、俺はそう言う。
「オワルってタラシ?」
「失敬な。女子の扱いも心得ていない男だぞ」
「童貞だよな?」
「ソレは黙秘で」
「ヤったことあんの!?」
「黙秘で」
「オワル~?」
しょうがないだろ。こっちにも都合があるんだよ。そんなバカな言い合いをしていると、スマホに通知が入った。魔法少女動画アプリからだ。既にどこから情報を捉えたのか……と俺が言うと胡散臭いが、ドローンカメラが暴れているメターマンをライブ中継で映している。
「はー……馬鹿ばっか」
OH……と両目を手で覆いカフェの天井を仰ぐマスラオ。
「今日はお前か?」
「そういうことになるな。さっき国際魔法少女基金に要請を受けた。今日は俺らしい」
「どこで変身する?」
「トイレでいいだろ。ブローギアも人様に見せるわけにもいかないし」
「じゃ、頑張れよ」
「オワルが応援してくれるなら、俺は誰にも負けないぜ?」
そうして俺の一万円札を手渡して、トイレに消えるマスラオ。スマホに罠娘少女ダーンディアナが映った。彼女が行使するのは電磁魔法。雷で定規型メターマンを痺れさせ、レールガンで肉体を削っていく。一方的な勝負だった。まぁそもそも魔法少女が扱っているエネルギーは、はっきり言って尋常ではない。ソレは俺も知っているし、国際社会でも議論されている。魔法少女の扱うエネルギーを解明できれば、世界のエネルギー問題は解決するのではないか、と。半分アタリで半分ハズレだ。
『ダーンディアナちゃん♡』
『貧乳が可愛いよー』
『むしろ推せる!』
『そこがむしろいい!』
そうして、最後はメターマンが巨大化して、ファイナリティマジックを罠娘少女ダーンディアナが行使する。
「ポジトロン召喚!」
プラスの電子を生み出す罠娘少女ダーンディアナ。それから、その陽電子の塊を定規型メターマンに叩きつける。対消滅で電子がエネルギーに代わり、そのエネルギーを電磁気で封じ込め空へと向かわせる。そうして決着。
「ピスタキオン・サルベーション」
最後にピスタキオン・サルベーションで破壊された街並みを治し、ドローンカメラに向かって百点満点の笑顔を見せる。
「悪いことする子にはお仕置きだぞ♡」
可愛らしくカメラの前でウィンク。もちろん動画視聴者は沸騰だ。
『うおぉぉぉ』
『ダーンディアナしか勝たん』
『可愛い!』
『いっそ男の娘でも許す!』
案外的外れな感想でも無かったり。そうして俺は握らされた一万円札でカフェの清算を終わらせて、独富島に戻るかーと、そんなことを思った。二江さんとの約束もあるし。




