第15話:ヒロインとプレッシャーと
そうして授業が始まり、俺は教壇前の席で、爆乳女性教諭壱岐尾先生の御胸を拝して拝んでいたのだが。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
俺が無言で授業を受けて、その両隣にキラと二江さん。後ろにはマスラオ。これでどうリラックスしろというのだ。拷問か。いやね? 嬉しいですよ? 独富学園の三美姫と隣接した席になって独占しているみたいな感じなのは確かに嬉しいですよ? でも彼女らが可愛いからこそ、襲われるプレッシャーも並大抵ではなく。仕方なく素数を数えながら授業を受けた。そうして四限目が終わり、昼休み。
「オワル。オワル。今日は学食行こ」
隣のキラが目をキラキラさせながら言ってくる。ちなみに駄洒落じゃないので悪しからず。そうすると黙っていないのがマスラオで。
「オワル。俺と一緒に飯食おうぜ」
だから張り合うなって。お前ら。
「もう我慢ならん」
「殺るぜ拙者は」
「三美姫に栄光あれ」
「大敵を誅せ」
というわけで三美姫の内の二人に言い寄られている俺にメリケンサックを装備して闇討ちを覚悟する生徒多数。俺はそう言うんじゃないと説明しようにも、その説明をするより先にキラとマスラオが言い寄ってくるんだから、どうしても説得力が後追いしない。
「じゃあ今日はうな丼食べようね。奢ってあげるからさ」
「俺と鶏白湯ラーメン食べようぜ。奢るからよ」
だからなんでお前らは俺のために金を出すんだ。言っておくが俺の経済事情は貧乏じゃないからな? まぁ多分そういう問題ですらないのだろうが。とはいえ、このまま教卓前に座っていても三美姫に挟まれてプレッシャーが凄いので避難避難。
「で、どっちの金で食べるの?」
「俺に奢ってもらうよな?」
「せっかくだから今日は俺が奢るよ」
札束を食券機に飲み込ませて、好きなボタンを押せとオススメする。
「えー。私稼いでいるからいいよ?」
「俺もだ」
「いいから俺の金で飯を食え。言っておくが稼いでいるのどうので言えば俺も結構稼いでいるからな?」
別に自慢することでもないが。
「あれ? オワルの両親サラリーマンだろ?」
「純粋なジャパニーズビジネスマンだ」
もちろん給料は相応。ただ、それと俺のお小遣いは比例しないのだ。
「じゃ、あたしはサーモンとイクラの親子丼奢ってもらうっす」
で、俺の日本銀行券を飲み込んだ食券機で、あっさりといきなり現れた香鳴カレンが鮭親子丼を頼んでいた。
「おお、いたのかお前」
「そりゃ独富学園の生徒っすから。ゴチになるっす。先輩」
「ほら、キラとマスラオも」
「じゃあ」
「だな」
そうして俺はかき揚げ丼を頼んで学食の席に座る。
「美味い! 美味いっすよ先輩!」
「そりゃ奢った甲斐があるな」
「むー。オワルを私のお金で沈めるはずが……」
だから別にそんな御機嫌を取らなくても俺は誰にも言ったりしないんだって。別にいいじゃないか。堕星少女スタッブスターは世界中の男をバカにして億単位の金を稼いでいる成功者。何も間違ってないだろ。
「オワル。放課後のことだけどさ……」
「遊ぶ程度はいいぞ」
別に暇はしているし。
「あ、先輩。今日は食べて帰ってくるの無しっすよ。お母さんがご飯作ってるっすから」
「毎度毎度すまんな。で今日のご飯は?」
「アジの南蛮漬けっす」
そりゃ美味そうだ。
「え? オワル。香鳴さんにお世話になってるの?」
「お隣さんでな。祖母の家に一人暮らしだから、何かと心配されちゃって」
「じゃあ私がご飯作りに行ってあげようか?」
「メシマズだったり?」
「叩っ殺されたいらしいわね」
失礼。
「ま、でも飯を作るに来るってのはアリだな。今日はキレイさんに作ってもらうが、あの人に頼ってばかりもなんだしな」
「お母さんなら先輩のために遠慮なく腕を振るうっすよ?」
「どこまで心配されてるのよ。オワル……」
「さあ?」
「ちなみにお母さんバツイチの元人妻で、おっぱいも大きいっすよ?」
うん。知ってる。いいよな。人妻。
「おっぱいか。最後はやはりおっぱいか……」
男であるので胸のないマスラオが苦悶の表情をしている。このままだと性転換手術を受けかねない。まぁ別に魔法少女時は女の子なんだからそれでよくね?
「…………」
で、自分の美乳を揉んでいるキラ。大きさは結構あるがCカップくらいだろう。もちろん女性としてはこの上なく魅力的なのだが、本人は相対評価で考えているらしい。そりゃ二江さんとか壱岐尾先生とかが爆乳過ぎてCカップではとても対抗できない、とか思ってるのか? 杞憂だと思うがな。とか言いつつ、この前の究極少女アルテミストのドローンカメラでの胸を寄せて上げては俺も興奮したけども。さらにこの上で爆乳人妻まで参戦すると、色々とキラには困るのだろう。俺は一切気にしないが。
「先輩って罪な人?」
「恵みの人だな」
ちょいとお兄さん馴れ馴れしいわ。でかき揚げ丼を食べながら、俺は昼休みを過ごす。そうして教室に戻ると、普通にエロコメを読みながらお弁当を食べている二江さんがいた。ちょっと豪華なお弁当だ。おせちとかソッチ系。重箱の弁当なので量は結構なものだが普通に食っている。それもエロコメのラノベを読みながら。意外とオタクなのか? 黒髪眼鏡で文学少女を醸しているのに、なんか所々でほころびが見えるんだよな。それが悪いとは思わないんだけど。
「ねー。オワル」
「なー。オワル」
キラとマスラオも俺に話しかけてくる。
「……遠藤さん」
「何か?」
「……おモテになるんですね」
「そう見えるか?」
「……見えます……けど」
おそらく千の言い訳をしても意味がないんだろうな。
「オワル。放課後どこ行く?」
「ゲーセンとかでいいんじゃないか。メガフロートにあったろ」
「いいね。じゃあゲーム三昧と行こう」
「星崎! エアホッケーで勝負だ。勝った方がオワルに奢りな」
「ええ、ええ、受けましょうぞ。勝ちますけどね」
ギラリ、と二人の瞳が光った気がした。俺に奢るのは前提条件なのな。別にいいけどさ。
「しっかし」
あのキラとマスラオとゲーセンデートね。マジで夜道には気を付けないと。どこから刺客が襲い掛かってくるかわからん。スクール水着を装着しておくべきだろうか?
「まぁソレは最後の手段ということで」
「何が最後の手段なの?」
言えるか。スクール水着を着るとか。とにかく今日はキラとオワルとゲーセンデート。そうして放課後を楽しみに俺は授業に臨むのだった。




