第13話:究極少女の魔法
「……ふむ」
破壊された都市部。瓦礫となって転がるコンクリートの残骸。
「KHAAA!」
メターマンの標準能力。ブレス。何かをヒューマナイズした存在であるメターマンは形としては人間のソレを取るが、持っている能力は人知を超える。吐き出されたブレスは一気に究極少女アルテミストに向かうが。
「……弾け」
言われた瞬間に世界が応えた。正確にはアルテミストのブローギアが、だが。斥力場を発生させて防御に回す。ウツボ型メターマンのブレスは、その見えない壁に阻まれて四散した。余波が更に都市を破壊するが、まぁ自分の命と比較するものではない。アルテミストが手に握っている魔法少女の杖……ブローギアは次なる命令を待っている。
『アルテミストたんキター!』
『おっぱい大きい!』
『ドローンカメラもっと寄れ!』
まぁ男の性欲の供物にされるくらいは魔法少女の業というものだろう。
「GHIII!」
相手を敵対存在と認めたのか。ウツボ型メターマンは確実にアルテミストを睨みつける。そのアゴで噛まれれば、肉体の欠損。ソレは避けられないだろう。ドーベルマンに噛まれることと比較してもなお足りない。それこそ欠損と呼ばれるレベルの損害が出る。
「……パワーフィールド。……ジャンプ」
今度はアルテミストが仕掛けた。土木工事を強制してもこうはならないだろう都市の破壊痕。その残骸であるコンクリートの破片がそこかしこに落ちているが、それらの破片がサッカーのリフティングのようにポンポンと真上へ弾き飛ばされる。斥力場で弾く力を発生させ、バスケのドリブルとは逆に、下から上にエネルギーを送っているのだ。
「GHI?」
もちろんメターマンに会話や知識を求めるのは愚かなことなので、ソレはしないとして。
「……パワーレールチェーンガン」
ポツリとアルテミストが呟いた。ネットではコメントが荒れ狂っており、アルテミスト推しのリスナーは歓喜の投げ銭をしている。その映像の中、真上に弾かれたコンクリートの破片がメターマンに襲い掛かった。それも音速の三倍で。空気抵抗によってソニックブームが起こり、大気摩擦によって高熱が生まれる。それらの悪魔的破壊力を持って、メターマンに襲い掛かるコンクリートの破片。それも一度や二度ではない。コンクリートの破片が一つずつ真上に弾かれたと思った瞬間には、それらが全て音速の三倍でメターマンに襲い掛かる。もはや人間であればオーバーキル。物質として存在する限り、あらゆるものが破壊されるだろう。コンクリートの破片が音速の三倍で襲い掛かるとは、つまりそういうことだ。ズドドドドドッッッ! と容赦なく連鎖するコンクリートのレールガン。理屈そのものを説明すれば簡単だ。斥力場で弾いた破片の射線上にさらに斥力場を配置。加速した破片の射線上にさらなる斥力場を配置して加速。これを繰り返すことで、膨大な加速を物質に与える。都市部を破壊したのはメターマンの威力を象徴するものだが、それによってコンクリートの破片をバラまいたのは究極少女アルテミストにとって弾丸を配給したも同様なのだ。
究極少女アルテミスト。その用いる魔法は斥力魔法。
重力魔法を用いる堕星少女スタッブスターとは全く逆の魔法。だがその威力はスタッブスターにも劣らない。相手を弾くだけ。それだけの魔法が、だが彼女にとっては地上に存在するすべてのモノが弾丸と化すのだ。もっと言えば、それは弾丸を用意する必要さえない。
「GHIIII!」
一時的に土埃が巻き上がり、視界が遮られる。その土埃から現れたメターマンは攻撃こそ通用しているものの欠損している部位はない。あれだけのレールガンを受けて、それでも生きているメターマンにも驚かされるが、スマホの映像で見る限り、おそらく限界は近いだろう。そしてさっきも言った通り、そもそも究極少女アルテミストは弾丸の用意が必要ない。何故か、と問うのは素人の考え。バーゴストライク……特にアルテミスト推しにはわかって当然。要するに、相手そのものを超音速で弾けるのだ。
「……ブーストジャッジメント」
加速による相手の処刑。そもそも弾丸を用いずとも、相手そのものを加速させて大気摩擦で燃やしてしまえばいい。その無茶苦茶を無茶では無くすのがアルテミストの斥力魔法で、その真髄でもある。弾けるような音がして、メターマンが弾かれる。それは音速の数倍で加速して、そのままただの物質であれば燃え尽きて当然なのだが。
「GHIAAAA!」
ソレを察したのか。あるいは追い詰められたが故の当然か。
『キター!』
『ここから!』
『頑張れアルテミストたん!』
『俺たちの戦いはこれからだ!』
既に定番となっているのは、もはや動画視聴者にはお約束で。
巨大化。ニチアサの定番ヒーロー番組が如く。メターマンは追い詰められると巨大化する。質量保存の法則がいかほどのモノか分かっていないのか。どこから持ち出した質量なのかもわからない。ただ、圧倒的な細胞分裂によって、コンセプトを変えないまま巨大化してのける。とは言ってもだ。それでも動画視聴者はアルテミストの勝利を疑っていない。俺も疑っていない。ホテルのコース料理を食いながら、アルテミストを応援している。スマホを見ているのはキラとマスラオも同じだ。今俺たちは同じ存在を応援している。
「GHISYAA!」
巨大化したメターマンは、その口からブレスを吐く。先ほどの数十倍の威力だ。大きいということは、その大きさは三乗によって肥大化する。縦と横と奥行きが倍加するのだから、空間的には背丈が二十倍でも体積は二十倍では聞かない。そのメターマンのブレスは某日本で有名な怪獣にも劣らぬ火炎放射を吐き、一直線に街を焼き払う。まさに悪夢の如き光景が見せられるが、それでもアルテミストにはホコリの一つもつかない。余波で破壊され、殺された……ビルや人は不幸という他ないが、メターマンを裁判に呼びつけるわけにもいかない。こんな光の巨人でもなければ倒せない相手を相手取っているだけで魔法少女が異常性能すぎるのだ。
「……ふぅ」
こうなることは相分かっていた。というか、これは動画視聴者は知らないことだが、そもそも『魔法少女はメターマンを追い詰めて巨大化させないといけない事情』があるのだ。ソレを知っているのは魔法少女以外では、あまり多くない。何で俺が知っているかって? ソレはまた今度な。
「……パワープリズン」
荒れ狂うネット民の歓喜。アルテミストのファイナリティマジックを見られるのはアルテミスト推しにとってはこの上ない栄誉なのだ。パワープリズンの名の通りに、斥力場をメターマンの周囲に構築し、内側に弾くように設定した斥力で巨大化したメターマンを覆う。必要な処置だ。これからアルテミストが行うことをパワープリズン無しに行った場合、地球どころか太陽系が破滅する。
「……セット」
魔法少女の杖。ブローギア。その先端がメターマン……巨大怪獣へと向けられる。
「……ホワイトホールインパクト」
あらゆる全てを拒絶する特異点。無限にエネルギーを放出する一点の空間。それはメターマンの肉体の内部から発生し、その一点から生まれた熱とエネルギーと斥力は、メターマンを内部から破壊し、そのまま閃光となって周囲を照らした。パワープリズンで囲っていなかった場合、そのホワイトホールから放出されるエネルギーで太陽系が残骸となっていただろう。
『よっしゃー!』
『勝ったー!』
『祭りじゃ祭りじゃ!』
『アルテミスト最高!』
ネットの動画視聴者も歓喜の雄たけびを上げる。斥力魔法。その究極であるホワイトホールの具現。その宇宙の不思議とも言える不可能現象をその目で見れるのだ。世界中が究極少女アルテミストに見惚れると言ってもしょうがない。そうして既にセットされているドローンに視線を向けて、究極少女アルテミストは愛らしいドレスに身を包んだ全身を見せたあと、胸を寄せて上げる。巨乳のアルテミストにそんなことをされては視聴中の全男子の股間が大変なことになる。
「「チッ!」」
で、俺はスマホの動画でそれを見ていたのだが。もちろんキラとマスラオも見ている。その二人が舌打ちした。キラはスタッブスターとして動いているが、それでもおっぱいはCカップ相当。ダーンディアナに至っては貧乳だ。まぁマスラオは元々男だし。魔法少女に変身中は女体になるが、それでもおっぱいが膨らむわけでもない。そう言う意味ではアルテミストのカメラを意識したおっぱいの寄せて上げては破壊力抜群と言って過言はない。




