第112話:魔法少女は魔法少女と戦う
「グラビティサンクチュアリ」
上から下に落ちる重力の滝。俺を押し潰さんとする超重力の落下に。
「アンチグラビティ」
俺は反重力で応えた。重力と反重力が相殺されて物事はなかったようになる。同時に並列して次の魔法を展開。
「グラビティサンクチュアリ」
使ったのはスタッブスターと同じ魔法。で、あれば理解も早く。WARPドライバを使って空間転移。四人は超重力の滝から逃れた。ほぼ同時に宮殿の一部が凹んで、そのまま人体で受ければどうなるかを明確に把握させる。
機械と違ってセンサーを持っているわけではない。であれば魔法少女の戦いは有視界戦闘。空間転移で逃れたとはいえ、俺の見えないところまで逃げている可能性は排除していい。
「パワーレールガン」
次に発動した魔法は斥力魔法。アルテミストのお得意技だ。
「アンチパワーレールガン」
生まれた斥力を、さらに対になる斥力で弾いて無効化する。弾かれた大気が大きな音を出したが、まぁ鼓膜には影響がない。
「アイスメテオ!」
次なるはオーバーサンの冷熱魔法、とは言っても砂漠に水分はそんなに無いから氷は一から作りだしたのだろう。隕石に例えられるほどの氷をゼロから作るそのエネルギー量は、この際計算しないとして。
「ドラゴニックバーン」
降り落ちる氷の巨塊に、俺はドラゴンが吐くブレスのような超高熱を浴びせる。一瞬で相転移した氷は、そのまま水蒸気へと変換され膨張し、爆発。いわゆる一つの水蒸気爆発。
「カンナカムイ!」
もちろん罠娘少女ダーンディアナも何もしないわけもない。電磁魔法による雷撃の再現。だが俺は同じ電磁魔法で力場を作り、俺に向かってくる雷撃を別方向へ誘導した。
ドローンカメラには、それらの映像が映し出され世界中が固唾を飲んでいる。そして得られた結論がある。それをスタッブスターが口にした。
「まさか……バーゴストライクの四つの魔法……全部使えるの?」
「イグザクトリィ」
にっこり微笑んで、俺……結論少女ユニバーゴはそう答える。そもそも名前からしてそうだろ。結論少女ユニバーゴ。複数の乙女の結論を意味するネーミングだ。俺というラスボスは正義の味方であるバーゴストライクと一対四で戦う。その中に勝算を持ち込むなら相手の四倍以上の戦力を持って臨むのは必然と言える。
「ぐだぐだ戦っても意味無いようね」
スタッブスターがそう言うとバーゴストライクは四方向に散らばった。空中に立っている俺の前後左右。かたまっていたらそのまま纏めて処理されるとでも思ったのだろう。計算としては間違っていないが……。
「ファイナリティマジック……」
罠娘少女ダーンディアナがそう呟く。決着魔法とも呼ばれるバーゴストライクの必殺技。そのセーフティを解除するための魔法の言葉だ。
「ポジトロン・サモナイザー!」
陽電子を俺の周囲に召喚する。それらは大気の電子と対消滅を起こし、強大なエネルギーへと変換され核兵器でもまだ穏当だぞ、とツッコみたくなるくらいの爆炎を撒き散らした。一応環境には配慮しているのか。アルテミストが斥力の結界で俺の周囲を包んでおり、閃光以外は外に漏れ出ていないが。
「遠慮もくそも無いな」
その俺は既にダーンディアナの背後を取っており、彼女の頭上に高負荷の重力を発生させていた。叩きつけられるダーンディアナ。終端速度の存在しない落下で俺に作った宮殿に叩きつけられ、そのまま戦闘不能。魔法少女のドレスをドレスティック・コンバータで編み上げているので死ぬことはないだろう。そのことは俺が一番よく知っている。
「ファイナリティマジック」
今度はオーバーサンがセーフティを解除する。とすると、来るのはアレか。俺もフィニッシュブローギアを駆動させてラースボースを励起させる。
「マイナス・ヒート・ランチャー!」
「摂氏一兆度。砲撃手段と定義し、決着魔法に対抗。発射」
そうしてマイナス一兆度の砲撃とプラス一兆度の砲撃が真正面からぶつかり合い、相克して無効化される。
「な!」
驚いているところ悪いが、隙だらけだぞ?
「……ファイナリティマジック」
「ファイナリティマジック」
俺がブローギアでオーバーサンに干渉しようとする前に、アルテミストとスタッブスターがセーフティを解除した。だが、聞きたいのだが同時に撃ったら相殺しないか?
スタッブスターは重力を、アルテミストは斥力を、それぞれ魔法で用いる。つまり同時に展開するとプラマイゼロになるはずなんだが……。とりあえずオーバーサンを叩き落として、二人の動向に注目すると、互いに俺を中心とした対称に位置する。なるほどね。前門の虎、後門の狼だ。ブラックホールとホワイトホールを同時に発生させ、俺が重力で対応すればブラックホールが、斥力で対応すればホワイトホールが、それぞれ俺を殺しせしめる、か。空間転移で逃げてもいいのだが、おそらくそれも織り込み済みのはず。
「ちゃんと防いでね? 場合によってはオーバーサンとダーンディアナが死ぬから」
清々しいほどに畜生なことを言うスタッブスターだったが、たしかに彼女らのファイナリティマジックにはそれだけの威力がある。
「ストナー・ブラックホール!」
「ホワイトホール・インパクト!」
下手に撃てば地球どころか太陽系が無くなるレベルのエネルギー運用。その集大成である黒と白の二つの天体。仕方ない。一つお手本というものを見せてやろう。
「臨界点を突破。重力崩壊を開始」
俺は右手にブラックホールを造る。同時に左手にホワイトホールを繋げる。
「超重力の次元孔を確認。放出先を指定します」
フィニッシュブローギアが音声認識で俺の両手で起きていることを説明してくれる。
「空間歪曲から逆算した仮想質量M20を突破。同時に逆空間歪曲がマイナスM20を突破します」
右手にブラックホール。左手にホワイトホール。前方から迫るストナー・ブラックホールに左手を、後方から迫るホワイトホール・インパクトに右手を、それぞれぶつけ、相殺させる。
「「なッッッ!?」」
絶句するスタッブスターとアルテミスト。あまり大仰なことはしとらんぞ。
「くっ!」
ファイナリティマジックの連続行使はブローギアの設定上不可能。戦えはするが、それでもクーリングタイムが必要になる。そのまま叩き落してもいいのだが、どうせだから本物の魔法というものを見てもらおう。俺が魔法陣を展開すると緑色に蛍光する立方体が出来上がった。だいたい一辺の幅が一メートル程度。
「この立方体の中にプランクスケールの真空エネルギーを注入する」
「?」
「…………は?」
スタッブスターは言っている意味が分かっていないらしく、逆にアルテミストは分かっているが故に俺がどういうことをしているのか理解が追い付かないらしい。まぁ気持ちはわかる。宇宙を一兆の一兆倍の一兆倍の回数だけ滅ぼしてもお釣りがくるエネルギーだ。この立方体の中に入ったが最後、あらゆる物質はそのクォークの段階から存在を形成できなくなりエネルギーへと変換される。
「ではな、バーゴストライク。楽しい余興だったぞ」
この立方体に対抗する術を、バーゴストライクは持っていない。だからこれで終わり。決着。ちゃんちゃん。とっぴんぱらりのぷう。そう俺が思った直後、俺のフィニッシュブローギアを握る手が肩から斬り飛ばされた。両腕が付け根から斬り飛ばされ、それによって俺の制御下から離れたフィニッシュブローギアはエラーを起こし緊急停止。俺は両腕を失ったまま、魔法の制御まで奪われ、そうして、ソレを成した相手を見る。スクール水着を着て仮面をかぶっている女子。地球秩序維持思想団体オーダーメイド。そこの所属であるスクール水着仮面二号。この地球の秩序を望む彼女を想定してなかったのは確かに俺の落ち度。
「…………は?」
「やっと油断したな。無雲帝国皇帝シングルモルト陛下」
煮えたぎる復讐心を仮面の瞳から顕にし、そしてスクール水着仮面の持つ固有魔法……斬撃魔法が俺の肉体を袈裟懸けに一刀両断するのだった。一撃で肩から腰まで斬撃が走る。肺。心臓を切り裂かれ、一撃のもとに俺は絶命する。
「がッッッ!」
「何が皇帝だ。何が核融合だ。そんなものは私の両親を生き返らせてから言え」
即死に近いショック死をした俺が眼で最後に見たのはミズキの瞳に爛々とともる憎悪の炎。この瞬間だけを待ち望んでいたのだろう。彼女はこの時のためだけに死なないでいたのだろう。だからこうして夢は叶った。諦めなければ夢は叶う。それを彼女は証明した。だったら俺から言えることは、まぁ一つだけで。




