第11話:キラーンはオワルをマスラオと
「おはよーっ! 今日もいい天気だね!」
そうして教卓前の席の俺と、その一つ後ろの席のマスラオ。二人で談笑していると。三美姫の一人、星崎キラーンが現れた。あれからちょっと気まずい思いもしたが、まぁそれはそれで。
「オワル。おっはよー♪」
隣の席の特権か。俺の右隣の席に座ったキラーンことキラが俺に挨拶する。
「何? 仲良くなったのか?」
まぁ説明すると長いことながら。訝し気に俺を見るマスラオ。仲良くなったかと言われると、まぁ仲良くはなっていて。
「斑鳩くんもおはよ。今日もよろしくね?」
「おう。シクヨロ」
どこかマスラオは不機嫌だった。何か機嫌を損ねることを俺はしただろうか? それをちょっと考えるに、なんだか俺にはなんだかなぁ。
「オワル。今日の放課後暇?」
穏やかな笑顔で俺の予定を聞いてくるキラ。ザワリ、とクラス中がどよめいた。当たり前だ。ここにいるさえない男の放課後の予定を気にして彼女に利することが無い。
「暇ではあるんだが……」
「じゃあデートしよ。色々案内してあげるからさ」
「案内も何も狭い島国だろ」
無雲帝国。元の名前は独富島。
「ふっふっふー。侮っちゃーいけませんよ。メガフロートの方はトレンドの発信地になっているくらい栄えているんだから」
「本当か? マスラオ?」
「嘘はついてないな」
「だからさぁ。私とデートしよ。拒否権はないから」
そんな無理矢理都合を付けられてもな。
「残念だが」
そこでマスラオが割って入った。
「今日のオワルは俺とデートする予定だ」
ピシリ、と空気が割れる音がした。俺の気のせいならいいんだが。
「何言っちゃってるの? 斑鳩くんにそんな権利あると思う?」
「まさにざまぁ。俺とオワルは幼馴染だからな」
独富学園の三美姫。キラーンとマスラオが俺を取り合ってバチバチ。もちろんそれを座視する男子ではなく。
「何故だ! 何故あの転校生に某の星崎さんが!」
「拙の斑鳩ちゃんがあんな転校生に!」
何言われているかはよーくわかるが。
「そもそも斑鳩くん男じゃん? 男とデートして楽しいの?」
「オワルは楽しいって言ってくれるもんね」
「本当? オワル?」
「まぁマスラオと遊ぶのが楽しいのは事実だ」
「ゲイ?」
「道を踏み外しそうなくらいマスラオが可愛いのは認める」
「ふーん。へー。私の前でそんなこと言っちゃうんだ?」
「何か問題でも?」
「じゃあ聞くけど、おっぱいのある女の子とおにんにんのついている男の子だったらどっちが好き?」
「おっぱいのついてる女の子!」
「なら見ず知らずの他人と幼馴染ならオワルはどっちを選ぶ?」
「幼馴染!」
どっちも即答してしまう。
「ぎにににに!」
「ぐぬぬぬぬ!」
視線をバチバチと放電させながらなんとか俺の話を聞くべきか悩んでいる様子だ。全くもってどうでもいい。
「私とデートするよね? オワル?」
「俺とデートするだろ? オワル?」
あのー、ね。さっきから男どもの嫉妬が鳴りやまないのだが。
「次の新月の夜は」
「芻〇呪法のために……」
「じゃあ俺が遠藤の髪の毛を……」
恐ろしい会話が男子の間でされていた。さて、そうするとだ。
「三人でデートしねえ?」
「殺そう。晴れやかな気持ちで」
だから俺にそういうことはだな。
「じゃあデート代は私が全部持つから」
「いや、俺が出す」
なんかもう俺がヒモに思えてきた。
「あれー? 無理しない方がいいんじゃない? オワルにいい格好したいのはわかるけどさー?」
嘲るように綺羅がそう言う。
「ああ? これでも稼いでんだよ。お前こそ親の小遣いを男に使っていいのか?」
ちなみにだが、ブローギアにはパーソナルジャマーが備えられているので、基本的にバーゴストライクの皆々様はお互いのことを知らない。
堕星少女スタッブスター。
究極少女アルテミスト。
太陽少女オーバーサン。
罠娘少女ダーンディアナ。
都合四人の魔法少女がいるのだが、その四人は互いに不干渉で、ぶっちゃけ競合他社みたいなものだ。一回の出動で五億から十億円稼ぐので、バーゴストライク……つまり魔法少女は大金を稼いでいるのだが、ソレをここで言うわけにもいかないのだろう。スタッブスターことキラも先日五億稼いでいるし、ダーンディアナことマスラオもそのちょっと前に五億稼いでいる。無雲帝国には確定申告も累進課税もないので、儲かった金はそのまま本人の手元に置かれる。
「無茶しない方がいいんじゃない? ここで意地張ってもお金をスるだけだよ?」
「バカ言え。俺は稼いでいるんだよ。なんならオワルと三ツ星ホテルのレストランでコース料理頼んでもいいくらいだ」
マジで俺をヒモにする気か。
「「オワル!」」
なんでしょうか?
「どっちとデートするの?」
「三人仲良くデートしないなら、この話はうちきりだ」
「オワル~? そんなことを私が許すと思ってるの?」
まぁそうだよなぁ。キラにとっては俺は監視対象だ。ぶっちゃけ俺の機嫌を損ねれば、そのまま破滅と言っていい。そこまで鬼畜になれる俺ではないのだがそこまで鬼畜になられて困るのがキラで。地球人類全てをバカにした醜態を俺から封殺するためには監視が必要……という理屈は誰よりわかるのだが。
「お前らがソレを飲めないってんなら、話は終わりだ」
「オワル。マジで星崎とデートするのか?」
「まぁ可愛いし」
「だしょ? 私可愛いよね?」
自分で言わなければもっとな。
「じゃあマジでホテルのコース料理頼むからな?」
「別に拒否はしないが……お前の財布的に大丈夫か?」
「任せろ。男に二言はない」
「別に二言目くらい在っても文句は言わないんだが」
「オワル。ホテルでいっぱいしようね?♡」
「そういうのは求めていないので」
「ズルいぞ星崎! おっぱいで男を釣るな!」
「ふーんだ。男に生まれた自分を呪うんだね!」
お前らは誰と戦っているんだ?




