第10話:斑鳩マスラオは可愛い
次の日。俺がモグモグとご飯を食べて、それから制服に着替える。ガラガラと引き戸の玄関を開けて、外に出る。そうして施錠。俺は登校しようとして。
「よう」
可憐な女子制服を着たマスラオに出会った。
「?????」
意味不明という言葉をよもやここで使うことになろうとは。
「なんで女子制服?」
「ん? ああ。これか。たまに女装するんだよ。俺」
斑鳩マスラオは男の娘だ。女装すればそれはそれは可愛い。女子制服もよく似合っている。しかし女装か。アリだな。
「可愛いか?」
「超可愛い」
俺もグッとサムズアップで返礼だ。
「だったらよかった。じゃあ学校行こうぜ」
そうしてマスラオと二人。独富学園に登校する。周囲のマスラオを見る目は、ちょっと性欲的に傾いでいた。
「大丈夫か?」
「あ? 周囲の反応か? いつものことだ」
いつものこと……で済ませていいのか。まぁマスラオが気にしないなら俺もどうでもいいんだが。
「っていうか俺が罠娘少女ダーンディアナだと知ってるのはオワルだけなんだから。監視しないとな」
それ、星崎さんにも言われてるんだが。
「それにほら。俺可愛いだろ?」
「まぁ可愛いな」
「発情するか?」
「しないとは言えないんだが」
「そっかそっか。それは良かった」
何が良かったんだろうか?
「そりゃもちろんオワルが俺をオカズに……」
「自重しろ」
ドスッとチョップをくらわせる。
「どうせ抜くなら俺でもいいだろ」
それで「ああそうだな」とか言えたら俺は上級者過ぎるだろ。マスラオは男。マスラオは男。マスラオは男。でも可愛いのは覆せない事実で。
「これでも男子から告白されたりするんだぜ?」
「気持ちはわからんでもない」
「へー。オワルでもそんなことを言ってくれるんだな」
道を踏み外しそうな程度にはマスラオ可愛いし。惚れた男子には哀悼の意を表するしかないが。
「スカートの中身とか興味あるか?」
悪戯っぽくスカートの裾を持ち上げる。周囲のマスラオを見る目に熱がともった。
「はしたない真似はやめなさい」
「そんなんだからオワルは童貞なんだよ」
法律に違反しているわけじゃないからいいだろ。
「ま、そうなんだがな」
同じ教室。俺が教壇前で、マスラオはその後ろの席。
「何ならキスとかするか?」
「もうちょっとロマンチックな場所でな」
「期待しているからな」
「永遠に待ってろ」
他に言えることがない。
「さて、そうすると」
「今日から授業かー。めんどいなぁ」
「マスラオは勉強嫌いか?」
「成績はそこそこだが、勉強せずに好成績を残す方法を模索している」
まさに楽するための努力。日本人が好きな奴。
「斑鳩氏!」
で、教室でだべっていると、はぁはぁと息を荒らげてマスラオを見る一人の男子生徒。
「何か?」
「拙者と一緒に放課後デートしてくだされ!」
「ああ、既に予約済みだ」
へー。そうなのか。隅に置けないな。
「それは拙者より優先すべき事柄か!?」
「当たり前じゃん」
バッサリと切りつけるのはいいが、相手が暴虐に変じるリスクもちゃんと考えているんだろうな?
「ちなみに、その御仁は?」
「コイツ」
とマスラオは俺を指す。
「は?」
「デートしようぜ。イチャラブな奴」
「キサマの作戦目的とIDは!?」
「正義。遠藤オワル」
「拙者から斑鳩氏を奪うのが正義か!?」
「コイツ男だぞ?」
「修羅の道と分かっても、避けられぬ試練は存在する!」
「らしいが?」
「俺はオワル以外興味ないから」
あの。それは。マジで? 斑鳩マスラオって俺のことが好きなの?
「さて、どうだろうな。でも嫌いじゃないぜ?」
それは重畳。
「では遠藤氏! 拙者と勝負でござる! 拙者が勝ったら斑鳩氏から手を引け」
「嫌」
「敵前逃亡は男の恥ですぞ」
「そういう挑発には乗らないことにしている」
「貴様ーッッ!」
「というわけで頑張ってな」
「斑鳩氏! この男は玉無しでござるぞ!」
「ちゃんとあるぞ」
「え? それは? そのぅ? え?」
言い寄っている男が困惑した。
「別に直に見たとかそんな話じゃないが」
だよな。俺も見せた覚えないし。罠娘少女ダーンディアナのラ体は拝んだが。
「斑鳩氏は拙者が幸せにする!」
「頑張れよ。応援している」
「ハートがこもってねぇ!」
込めるモノでもないだろ。
「っていうか、これってBLか?」
「まぁ男の娘がBLの範囲に入るかは議論が必要になるな」
「たとえゲイでも生きる権利はあり申す!」
多様性の時代だしな。
「いずれオワルも落としてみせるからな」
「無駄な努力ご苦労様」
「幼稚園の時に結婚の約束したろ」
「え? マジ?」
「嘘だけど」
心臓に悪いことを言うな。




