第105話:世の中は大変なことになっている
「いやー。凄い事になっているな」
で、今日はマスラオの親父さんに船に乗せてもらって船釣りを楽しんでいた。世界は激動の渦中にいるのだが俺たちにとっては激しくどうでもよく。俺とマスラオ、キラとキワミは船釣りを楽しんでいる。さすがに壱岐尾先生は仕事があるので今日はいない。
「結論少女ユニバーゴ……か」
「勝てそうか?」
「何とも言えんな。向こうはこっちの魔法を知っているだろうが、こっちは向こうの魔法を知らないし」
釣竿を握りながら、マスラオはため息をつく。
「だからさ。ユニバーゴが現れたら四人で囲もうよ!」
意気込むようにキラが言う。
「……バーゴストライク全員で挑む相手……ということね」
キワミは的確に相手を警戒しているらしい。
「一応全世界が無雲帝国の属国になれば問題は起こらないんじゃないか?」
俺がそう言うと。
「「「それはない」」」
三人が口を揃えた。うん。まぁ。俺もそう思ってるけど。そうして俺が魚を釣り上げる。
「よし。一匹目」
「こんなことしていていいのかなぁ?」
「……とは言っても動きようがないし」
「いっそ先に無雲帝国のメターマンを削っておくか?」
「それはそれで逆鱗に触れるんじゃない?」
キラが正解。ついでに言えば大量のメターマンと戦った場合、バーゴストライクに勝ち目はない。俺がそのように設計したのだ。あくまでバーゴストライクがメターマンに勝てるのは一対一の時だけだ。二対一ならメターマンに分がある。それが五万体。ついでに言えばメターマンの量産は今まで以上にしている。とてもではないがバーゴストライクが対応するメモリを超えている。
「じゃあせめて結論少女ユニバーゴを倒すしかないか?」
「でもどこにいるのよ?」
「……エンドレース株式会社に尋ねてみる?」
意味ないと思うぞ。俺はここにいるし。
「ネットは荒れに荒れているしな」
「ホントそれ。なんでユニバーゴは世界征服なんてするの?」
「ロマンだからじゃないか?」
俺はそう言ったが、実を言うと正確ではない。
「っていうか、それでも各国に核融合炉の技術提供するんだろ? そういう意味では善良的じゃないか?」
「あくまで属国に限り、ってお題目さえなければね」
それも事実だ。
「っていうか、そもそも今まで核融合技術を秘匿していたのに、なんで今になって?」
それは朝路辺イイトのおかげだな。俺のWARPドライバに頼らなくても、トンネル効果を発揮するプログラムを構築したおかげで、俺に依存しない核融合を実現できるようになった。であるからこうして日本にも核融合炉を建設する意図が実現できたわけだ。
「どう考えても先進国は納得しないよね?」
「……多分とは言っておきますが」
「でも核融合炉だぜ? 欲しいんじゃないか?」
設置するだけで電気エネルギーの生産が今の何十倍にもなる。そのことに理性をやられない政治家もいないとは思うが。問題は属国だ。無雲帝国の植民地になると国家予算の一割を毎年献上する必要が出てくる。大国であるほど、この国家予算という奴が膨大になるのだ。もちろんそうだと知っていて提案したのだから、俺はその意味をしっかり認識している。
「お、釣れた」
そうして世界情勢について話しながらも船釣りは続けていて。マスラオが魚を一匹釣った。今のところキラとキワミは坊主だ。というか釣りに対して熱意がない。ヒットはするが逃げられてばかり。
「釣りって難しいんだね」
「……むぅ」
ちょっと不器用なところも俺としては加点対象なんだが。
「マジで世界中にメターマンが発生したらどうする?」
「世界中から入金されてウハウハじゃない?」
そういう問題でもないような。っていうか複数のメターマンには勝てんのよ。
「地球秩序維持思想団体オーダーメイドはどうするんだろう?」
「まぁミズキはまずユニバーゴを殺しにかかるな」
レコンキスタドーンに両親を殺されて復讐のためにスクール水着仮面二号になったわけだし、無雲帝国の皇帝が結論少女ユニバーゴだと明らかになった以上、その彼女……つまり俺をつけ狙うのも真実であり。
「やた! 一匹釣れた!」
シマアジを釣ったキラは嬉しそうだ。もちろんマスラオの親父さんの船には魚を保管する水槽があるので、そこに入れてもらう。
「釣りって楽しいね!」
「だろ。やはり島民としては釣りこそが一番の娯楽と言わざるを得ない」
うんうんとマスラオの親父さんが頷く。
「だーかーらー……バーゴストライクとしてどう動くかって話で……」
釣りは釣りとして、マスラオはバーゴストライクのこれからを模索したいらしい。
「……結論少女ユニバーゴが現れたら殲滅。……他にありますか?」
キワミの意見は見事に正しいのだが、それでバーゴストライク四人と戦っても勝てるんだよなー。結論少女ユニバーゴの戦力は。
「ホント。どうしたものか」
「……じゃあまずは独富島の核融合炉を一つ潰してみますか?」
「おいおい。インフラ破壊かよ」
「……自衛のために結論少女ユニバーゴが現れるんじゃないですか? ……一応無雲帝国の皇帝ですし」
「むぅ」
一応論じ方に筋は通っている。そうマスラオが悩む。まぁ確かに核融合炉を破壊されようとすれば、俺も出向かざるを得ないのだが。ついでに正体を隠すために結論少女ユニバーゴに変身もするだろう。そういう意味では合理的な手段ではあるが。
「放射能汚染についてはどう思っている?」
俺がそう聞くと、三人は黙った。
「というわけで机上の空論だな」
「でもさー」
「……皇帝の横暴は座視できません」
「むしろ俺は帝国に反抗する先進国の行く末が心配だ」
ま、結局そうなるよな。
「お前らが結論少女ユニバーゴをどう思ってるかはわかったよ」
俺に対する感情がどう揺れ動いているのかもな。
「……あ……釣れました」
そうして四人とも魚を釣って。俺とキラとキワミは一匹ずつ。その間にマスラオは三匹釣っていた。
「まぁまぁ。いいじゃねえか。とりあえず今日はお前らの釣った魚で酒を飲もう」
飲めるのはマスラオの親父さんだけだが、確かに釣りたての魚の刺身は美味しいからな。
「っていうかさ。結論少女ユニバーゴもバーゴストライクとの敵対を想定してるよね?」
「……それは……まぁそうでしょうね」
「とするとその上で勝算が?」
まぁあるわけだけど。フィニッシュブローギアを持つ俺……結論少女ユニバーゴは四人の魔法少女の全ての魔法を使える。
「魚の刺身楽しみだなぁ」
だが、それよりなにより俺は今日釣った魚の刺身に興味津々だった。




