第104話:結論少女ユニバーゴ
無雲帝国の皇帝が演説をする。そんな情報がネットに流れるとネット民は沸騰した。今まで謎とされた帝国の皇帝だ。どういう人間で名前で性別か。全てが不明だったのだ。それが人前に現れるという。こういう時は色々と憶測が飛んだりするのだが、まぁさすがに俺も「俺が無雲帝国の皇帝、遠藤オワルでーす。てへぺろ」とか言うつもりは無いのだが。
演説は室内がいいだろうということで、エンドレース株式会社の会議室を選んだ。流石に社長室でやると人が少なすぎて中々ね。そもそもエンドレース株式会社の社長もまた正体不明なので、色々と不穏な噂は駆け巡っているのだが。
「お時間です。シングルモルト様」
高性能のカメラは先ほどから起動している。その上で誰も座っていない空席が映されており、そのまま動画に俺、つまり無雲帝国の皇帝が現れるのをカメラが配信している先のネット視聴者は今か今かと待っている。そのカメラの映像の先に、俺は徒歩で現れ、そうして碇ゲ〇ドウがそうするように、席に着くと肘をついて両手を組んで口元を隠す。
「世界の皆さま。ごきげんよう。俺が無雲帝国皇帝……ユニバーゴだ」
魔法少女のドレス姿。可憐な容姿。机に立てかけているブローギア。その全てが俺を四人とはまた別のバーゴストライクだということを全力で説得していた。
『新しいバーゴストライクキター!』
『いや、、ちょっと待て。バーゴストライクが無雲帝国の皇帝!?』
『こんな可愛い皇帝なら税金払いたい!』
『推しかもしれない……』
「まずは無雲帝国を国際的にヒューマニティキャンサーと称した世界の皆様方に敬意を表したい。こちらの保有戦力を知っていながら、それでも喧嘩を売る蛮勇……いや、この場合は匹夫の勇か。こっちがその気になれば都市機能どころか国家運営さえも取りやめさせることができるというのによくぞここまで罵倒してくれた。人類のガンか。ではその通りに内部的に発生したガンらしく、地球人類を殲滅するとしよう」
俺がそう言うと、世界中が悲鳴を上げた。
『違うんです!』
『アレは米国大統領の妄言で!』
『俺たちは無雲帝国肯定側ですよ!』
『そもそも米国とか世界警察名乗ってるけど根拠無いし!』
『どうかお慈悲を!』
「俺は魔法少女だがバーゴストライクではない。だがあえて名乗るとすれば結論少女ユニバーゴとでも言っておこう。さて、その上で、皇帝としてここに宣言しよう。我々無雲帝国は地球上の国家全てを平定する用意がある。もうちょっとわかりやすく言うなら世界征服を行うつもりだ」
頭の悪い言葉。だがこれくらいぶっこまないと俺の理想に届かない。
「貴君らも既に承知しているだろう。メターマン一体が暴れるだけでも都市を機能不全に出来る。それが我が無雲帝国には約五万体のメターマンが存在している。巨大化し、大陸を蹂躙した場合、どれだけの被害規模が出るか。子どもでもわかる計算だな」
脅しているわけだが、心にもないことをよくもまぁペラペラと喋れるものだ。
「妥協の余地はない。無雲帝国を主国と仰ぎ、我が国の属国になると宣言した国には、我が国の核融合技術を提供しようではないか。ただし毎年国家予算の一割を頂く。核融合技術の代価と考えれば決して不当な金額ではないと俺は考えているが……」
碇ゲ〇ドウのポーズのまま、俺は話を続ける。
「我が国の世界征服を阻む国にはメターマンを派遣する。バーゴストライクの対応が追い付かないレベルの個体数を送り込むことをここに固く約束しよう。誰が死のうが知ったことか。これより地球人類は俺の意向を最優先に運営させてもらう」
この横暴にネット民は悲鳴を上げた。
「なお。独立したとはいえ、独富島は元々日本の領土。総理大臣の心ある演説にも応える気でいる。友好国として日本を遇し、まずはこの国に核融合炉を設置することを確約する」
これに日本人の視聴者は沸騰した。
「さて、では頷くにせよ拒否するにせよ熟慮の末にお願いする。ついでにだが、バーゴストライクによる防衛手段は期待しない方がいい。俺は結論少女ユニバーゴ。バーゴストライクの四人と真正面から纏めて相手をして勝てる戦力であるとここで宣言しておこう。五万体のメターマンを同時対処できるとは思わないが、我が国のメターマンを傷つけるというのならバーゴストライクさえも俺の敵だと明言しておく。ではな。地球人類諸君。貴君らの理性ある決断を期待するや切である」
そうしてカメラは止まった。
「ふう」
そうして魔法少女の姿のまま、俺は吐息をついて、テーブルに置かれている水を飲む。
「皇帝陛下。お疲れ様です」
エンドレース株式会社の広報部長がハンカチで冷や汗を拭きながら、俺に御機嫌を取ってくる。
「すまんな。急に会議室を占領して。普通の国と違って、ここは独富島を日本から独立させた国だ。米国のように大統領が演説するような場所がなかったんでな」
「いえいえ。お力になれたのなら光栄の至りであります。まさか我が国の皇帝がこんなにも愛らしい乙女だとは予想の外でしたが」
まぁフィニッシュブローギアで外見を偽っているからな。遠藤オワルで皇帝を名乗ると親にも迷惑かけるし。
「他国はどう動くと思いますか?」
で、五分の四ラという超エチエチな服装をしているハーレクイーンとシークイーンが俺を労ってからそう聞く。スリークイーンも本来なら極秘の存在なのだが、帝国皇帝が顔を出すということでレコンキスタドーンの女幹部としてエンドレース株式会社限定で正体を晒していた。
「まぁ後進国は俺たちを受け入れるだろう。核融合炉を提供されるとなれば、それこそ垂涎の的だろうしな」
「先進国については?」
「国民の意見が最優先じゃないか? 抵抗するか。受け入れるか。とは言っても抵抗を選ぶなら潰すだけだが。メターマンも今まで以上に量産する必要があるな」
「ですね。ではその通りに」
「対応するっす」
「ランクイーンはどうしてる?」
「パソコンと睨めっこっす」
本人が満足なら俺から言うことはないが。
「さて、じゃあ後は各国の表明を聞くか」
ネットはもう大騒ぎ。無雲帝国の属国となるか。あるいは反抗して戦争を仕掛けられるか。中には過激な意見も出ており、今すぐ独富島に攻撃を仕掛け焦土に変えるべきだという意見まである始末。
「ま、いいんだがな」
とりあえず世界中に意見を発信したのだから後は待つだけだ。
「さて、じゃあな」
そうして俺はWARPドライバで家まで帰りドレスティック・インバータで元の服装に戻る。ついでに男の身体にも戻ったし、美少女の顔も冴えないフツメンフェイスに。
「オワル! さっきの無雲帝国の皇帝の演説見た!?」
キラがそんなコメントを打ってくる。
「まぁ見たが」
見たというか。俺が演説したのだが。
「第五のバーゴストライクだよ!? ありえなくない!?」
正確にはバーゴストライクじゃないがな。国際魔法少女基金には登録されていないし。そもそも無雲帝国の皇帝なので、世界に対して防衛力を発揮するほどもの好きじゃない。
「アレってバーゴストライクの敵なのかな?」
「まぁ敵だろうなぁ。メターマンを世界中に襲わせるって言ってるし」
「さすがに五万体同時は私たちでも対処できないよ……」
「残念だったな」
あっはっはーと俺は笑う。
「結論少女ユニバーゴ……だっけ? どんな魔法を使うんだろうね」
全部だぞ?
堕星少女スタッブスターの重力魔法。
究極少女アルテミストの斥力魔法。
太陽少女オーバーサンの冷熱魔法。
罠娘少女ダーンディアナの電磁魔法。
この全てをフィニッシュブローギアは扱うことができる。終わりにして結論の魔法少女……結論少女ユニバーゴは四人のバーゴストライクと一人で戦える戦力を保有している。
「やっぱり戦う必要があるのかな?」
それは国際魔法少女基金に聞いてくれ。




