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魔法少女の変身解除シーンの場所が俺の家になってる件  作者: 揚羽常時


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第100話:天より降りし


「くあ……」


 沖縄旅行も大成功に終わって、夏休みを満喫していた俺だったが。そういえば宿題に手を付けてないという事実を思い出し、八月の初頭から少し先。一人で家で宿題を消化していた。うーん。あまりに問題が簡単すぎて歯ごたえが無い。さらさらとペンを動かして解いていくのだが、まるで水にぬれた障子なみの歯ごたえの無さ。この際俺の比喩表現がセンスないのはツッコんでほしくなく。


「コーヒーでも入れるか」


 コーヒーメーカーでメーカーというくらいだからコーヒーをメイクしてカップにそそぐ。そうしてカフェインを取りつつ宿題に励んでいると。


「――――」


 スマホに通知が現れた。またどこぞの馬鹿が馬鹿したのだろう、という結論はおおむね当たっていて。今回はロシア地方でメターマンが暴れている。んなこっちの核融合技術を盗み出そうとしなくても、もうすでに汎用性を持ったトンネル効果発現のプログラムを開発しているので、そのうち世界中にばらまくつもりなのだが。


 朝路辺イイトが開発した俺の脳を媒介としないコネクトーン・ネクサスのシステム構造はまだデバッグを必要とはするが、機能としては十全に働いており今も着々と規模を大きくした核融合炉の運営に近づいてきている。このままなら夏休み中には三号炉だけでも俺のWARPドライバを使わない核融合炉の実践投入が実現できるだろう。


 その後は折を見て安定した核融合が再現できれば、世界中に技術を普及すればいい。まぁ海に面していない国で重水素をどうやって調達するかという疑問は無きにしも非ずだが。


 まずは無雲帝国がお世話になっている日本国からだろう。内閣府にも色々とお世話してもらっているし、恩返しの意味も込めてまず真っ先に核融合技術を提供しましょう。と、その旨総理大臣に伝えると。


「マジっすか!?」


 と政治家にあるまじき返答が返ってきた。宿題をしつつ、シングルモルト固有のタブレットで日本政府とも仲良くしているのよ? 一応外交的な目的で。


「まぁまだ汎用性を獲得していない段階ですけど、実験が成功次第話は通すので……」


 とか総理大臣ならびに経済産業省とも連絡していた。一応極秘にお願いします、とは言ってあるが。


 そうしてエンドレース株式会社の社長をしつつ、ついでに独富学園の生徒としての宿題もしながら、一人暮らしの部屋の中でだべったり宿題したり茶を飲んだり。祖母の家を改築してできた家で、俺は幼少期はここで生まれ育った。のちにマスラオとは涙の(失敬。表現に誇張が入っているな)別れをして、東京都まで出張。ローンを組んで都心に家を建てたわけだが。まさか親が欧州に出張になるとは思わず。東京都に一人だけ住んで右往左往するのも面倒だし。どうせ無雲帝国ならびにエンドレース株式会社の運営をしなければならないので、ちょうどいいと思い独富島に引っ越してきたわけだが。よく考えると濃密な時間を過ごしているな。


「お、今日は究極少女アルテミストか」


 二江キワミの変身した姿だ。斥力魔法を使うバーゴストライクで、その圧倒的攻撃力と防御力の並列は、ある意味で最強と言っても過言ではない。


「……ファイナリティマジック」


 巨大化して暴れまわるメターマンに、決着魔法の行使を選択したのはむしろ必然。


「……ホワイトホールインパクト」


 メターマンの周囲を斥力の結界で閉じ込めて、その内部にホワイトホールを創る。もちろんその反重力特異点から放出される無限のエネルギーにメターマンが抵抗できるはずもなく。というか事前に斥力の結界を張っていなければ、地球どころか太陽系が灰燼になる。


 そうしてスリークイーンが用意したドローンカメラのライブ映像で、


「……究極少女アルテミストのフォローと高評価を忘れないでね」


 というお決まりの文句を言って、Eカップの胸をドレスの上から寄せて上げて、ライブ映像を見ていた男性諸氏は大興奮。世紀末並みのモラルハザードなコメントが投げ銭とともに多く投下された。まぁ男なんて幾つになってもおっぱいが好きということらしい。


 で、そんなことをしている間に、今度は焦った様子のキレイさんならぬ極秘回線のハーレクイーンから連絡が入る。焦った様子なのは、つまり危急の問題があり、それもシングルモルトが判断しなければならない類の問題だというわけだ。


「どうかしたか?」


「テロ組織から犯行声明が下りました! 核融合技術を提供しなければテロ行為も辞さないと……」


 へー、ってな具合。別に喧嘩を売ってくるのはいいが、損害が出てもこっちから保証する気はないぞ。しょうがない。出社するか。俺はシングルモルトとしてエンドレース株式会社の社長室に顔を出す。スリークイーンもシタギを装着して、五分の四ラ状態で社長室まで空間転移。そうしてテロリストの犯行声明を読み、一拍。


「お祈り申し上げろ」


「その場合手段を択ばず政治的要求をする……とありますが」


「やれるもんならやってみろ、とサムズダウンで返答だ」


「承知しました。シングルモルト様の御随意に」


 ハーレクイーンも大変だ。俺の我儘に付き合わされているんだからな。


「で、ランクイーン。相手の出方は分かったか?」


「米軍の軍事衛星から独富島をポイントしているであります。ただしテロリストがハッキングしている様子はないでありますね。全部国防総省が主導してるであります。多分ですけど衛星爆撃を仕掛けた後に、テロリストに軍事衛星をハッキングされて誤射してしまった。すみません。というつもりだと思うであります」


「えげつないことするな……」


 とするとこっちが撃てる対策となると……。俺はまたWARPドライバで家に戻る。一仕事終えた究極少女アルテミストがドレスティック・インバータで全ラになっており、それを俺は何時ものようにスマホのカメラで激写するのだが。それはそれとして。


「……え? ……究極少女アルテミストに仕事?」


「らしい。ニュース見てくれ。テロリストが無雲帝国に犯行声明を出している」


「……あら……本当」


「ってわけで、キワミにも無雲帝国を守ってほしいんだが」


「お金出せます?」


「そっちについてはエンドレース株式会社と相談してくれ」


 その社長が俺なんだが。そうして打ち合わせ通り、スリークイーンが国際魔法少女基金に入金して……あれ? これってマッチポンプか?


 とにかく究極少女アルテミストを稼働させる。金さえ振り込まれれば戦争行為以外には対応するのだ。そうして状況を知って、米国の軍事衛星から対地ミサイルが撃ち込まれると知った究極少女アルテミストは斥力結界を展開。独富島全体を覆う障壁を張って、そのまま維持。


 それが杞憂で済めばいいのだが、世の中そんなに甘くなく。


 冗談抜きで米国はテロリストの犯行声明に便乗して、対地ミサイル通称シングルロードを発射した。それは超音速で地球に落下し、一発撃ち込まれるだけでも小さな独富島には甚大な影響を及ぼすだろう一撃。頭が悪いにもほどがあるが。アルテミストの斥力結界で何とかしのいで。しかも衛星爆撃だ。言い訳の余地も無い。


 ペンタゴンは無雲帝国に謝罪文を送るとともに、軍事衛星をハッキングしたテロ組織を潰すと明言。


 無雲帝国はテロ組織にハッキングするだけの能力はなく、ネットワークから逆算しても国防総省が主体的に軍事衛星を動かして独富島を爆撃したと米国を非難。ペンタゴンで働くスタッフや高級官僚は、自分たちの愛する家族の頭部がペンタゴン内部に野菜売り場でキャベツをそうするように横一列に並べられた状態を見て絶望した。


 もちろんやったのは俺の命令を受けたスリークイーンだ。テロ組織を裏から操って無雲帝国を衛星爆撃したのだ。相応の代償は支払ってもらわねば。激情した職員もいたらしいが、そもそもどうやって愛する家族を頭部だけ西瓜売りみたいにペンタゴン内部に揃えて並べたのかわかっていない八割以上の職務者が腰が怖気づいており。


 無雲帝国に喧嘩を売るということがどういう意味を持つのか。それを思い知っているところだろう。


「しかし……これって米国主導じゃないよな?」


 政治的にこんな愚案をペンタゴンが判断するとは思えんのだが。


「とすると……」


「多分だけどアトランティス会議でありますかな」


 アトランティス会議?


「パシフィックオーシャンの秘密海底基地で行われている会議の事。世界のトップが円卓を囲んで世界の行く末を決めているらしい。自分……アサルトヘイトを雇ったのもここ」


 つまり世界経済のトップで無雲帝国の真なる敵……ということか。なるほどね。


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