浮気はいかんぜよ
一方そのころの次郎は、仕事に追われていた。次郎は両親の進める系列会社に若くして社長として努めている。
部下に頼んでいた花子の近況報告に、次郎はため息をつく。
「浮気はいけねぇだろうが」
「社長、お客様です」
秘書の田所が無表情で入ってくる。
「今行く」
客間には着物姿の小柄なおかっぱ女性が座っていた。次郎はその姿を見て笑う。
「久しぶりだな、琴音」
木村琴音は元次郎の婚約者だ。今は次郎の兄の婚約者だが。お察しの通り、琴音はひどく次郎を恨んでいる。
「どういう風の吹き回しか?次郎が私を呼び出すなんて」
「お前山田花子のこと害する気満々だろう?裏から手を回してんのはわかってんだよ?」
「なんのこと?」
「俺の情報網を舐めるなよ」
「酷い言い草。久々に会う婚約者に他に何か言うことないの?」
「もうお前とは婚約者じゃねぇ。兄貴とうまくいってんだろうが。俺よりも兄貴を選んだのお前だろうが」
「両親に言われて仕方なくてよ。それにあのひとつまらない」
「だからって花子で遊ぶなよ」
「次郎が私と遊んでくれたら考えるわ」
「俺はお前とは殺し合いはやりたくないんだよ」
「大好きだから?」
「似たもの同士だから、収拾つかなくなるだろうが」
「まぁ、ね。私もあなたも血を見るの好きですものね。大好きよ、次郎。あなたは私のものよ」
「俺はお前のものじゃねぇな。俺が好きなものは、あの女だけだな」
「あのとんちきそうな女のこと?失礼だけど育ちもよくないようだけれど」
次郎はため息をつく。
「あなたが私のこと今抱いてくれたら考えてもいいわ」
「いいぜ」
にっこり次郎は笑う。
こうして次郎は琴音を抱いた。監視カメラがある部屋でだ。次郎と琴音はお互いほくそ笑んだ。




