すっぽんぽっぽっぽぽぽぽぽん
そんなこんなで大人花子は、薫君の家にやってきた。家の呼び出しベルを鳴らすと、薫君はすぐさま出てきてくれた。
薫君は花子の姿を驚いた様子で見ている。
「で、電話つながらなかったから」
慌てて花子は言う。つい言い訳めいたことを言う。だってこのままだと急にやってきた変な女だと思われてしまう。
「ああ、電話全部桜に捨てられちゃったから。久しぶり、山田さん」
大問題発言をし、薫はにっこり微笑んだ。
にっこり微笑んだ薫君はあの昔のころのままで、嫌、大人びて妖艶な退廃的なやつれた様子の薫君の姿に、なんだか花子は泣きそうになってしまう。
やはり花子には薫君のことを忘れるのは無理だった。
「久しぶり、山田さん」
「久しぶり」
やはり薫君は花子と、名前で呼んでくれない。
「今日はどうしたの?」
不思議そうな様子の薫君。
「少し薫君に話があって」
「そこではなんだから、よかったら家に上がって」
薫君はそう言ってにっこり微笑んだ。
「え、いいの?」
「いいよ」
薫君の家のドアを開けると、そこはゴミの山だった。異臭が鼻を衝く。
「ひ!?」
花子の前をゴキブリが通りかかっていく。花子は飛び跳ねてよけた。
「適当に座って。よっこらしょ。ここにソファーがあるから」
薫君はソファーの上のごみをどけてくれた。薫君はソファーに座る。正直ソファーには意味わからん染みがこびりついていて、座りたくなかったが、仕方なく花子はソファーの上を何度かハンカチで拭いてから座る。
ごみ部屋の中にいる薫君は、やつれた顔で笑った。
「がっかりした?皆俺に夢見るようだけど、おれはごみ部屋に住んでいるただのなんでもない人間なんだ」
俯く薫君を、花子は鼻息荒く見つめる。
弱弱しい薫君は、まるで倒れそうな可憐な花のようだ。ごめん。次郎君。辛抱たまらん。
花子はソファーに薫を押し倒した。
「ええええ?な、なに、山田さん?!」
「大丈夫!少しだけだから!!!」
「少しだけだからって何が!」
「花子って呼んで♡」
いいではないか。いいではないか。はぁはあ
「だめだよ、山田さん、俺一応まだ既婚者」
「は」
目の前にはうるんだ目の美しい青年の姿があったが、既婚者の言葉で花子は我に返って、薫の上から飛びのいた。
「山田さんって積極的なんだね」
「ご、ごめん、つい」
「そうだね。山田さんは異性だってこと忘れてたね。ごめん」
その薫君の言葉が、花子にグサッと、突き刺さる。
薫君、花子のこと異性として意識してないやんけ。失恋決定やんと、花子は内心泣きそうになる。しかしこのままで終わらすことはできない。終わるのならば、告白してからだ。
「あの、薫君ってその桜と結婚したの?」
「いや。桜は俺の結婚相手に危害を加えて、服役しているんだ」
「す、すごい、真実」
ショックである。
「それで俺の結婚相手には逃げられたんだ。今は離婚協議中」
だったら花子にもチャンスがあるのでは?
花子はどぎまぎする。
「ずっと好きでした、薫君」
やっとこさ花子は薫に告白することができた。
薫は悲しそうな顔をして、俯く。
「ごめん、山田さん」
「な、なんで」
「なんかどうしても山田さんのこと、異性として見れない」
「いや、もしかして薫君、いまだに私のこと飼い犬だと思っている」
「う」
「図星かー」
「ご、ごめん」
「私は犬じゃないやい!」
頭に来た花子はすっぽんぽんになって、「人間でしょうがー!!」と叫んでびえーんと泣き出した。
薫君は洋服を着せて、花子の頭をぽんぽんとなでた。
完全に異性として見てない。
花子はがっくり膝をついた。




