王都
「弟子よ、王都は人生で一度は行ってみるべき場所じゃ。王都は人も、物も、景色も、全て圧巻じゃぞ」
「師匠も行ったことないって言ってましたよね!? なに情報ですかそれ!」
そんなやりとりをした事を思い出した。
師匠、僕は今、人生一度は行ってみるべきだと師匠が言っていた王都に入ろうとしています。
師匠より先に来てごめんなさい。
――――――――――
「はえ~、ここが王都かあ」
僕は王都の人の多さと建物の高さに驚いた。もちろん現代日本を知っている僕としては、東京の人ごみとコンクリートジャングルを知ってはいるけど、それとこれとは別。日本風に言うならファンタジー感満載の景色だ。
「で、使者のおじいさん。ここで1日待つんだっけ? 王様にすぐ会えないの?」
別にすぐ会えなくて良いけど。王都観光もしてみたいし。
「はっ、申し訳ありませぬ、弟子殿。タウンゼンド王は弟子殿を国を上げて歓待し、大々的に周知することでもコルマド殿と弟子殿の名誉回復の一助になるとお考えです。和睦が成ったあかつきには、国として名誉回復の手続きも進めます。弟子殿は王都は初めてとの事。よければ案内をつけますので、王都を楽しんでくだされ」
「おおー、それはよろしおすなぁ」
「え? よろし?」
しまった。嬉しさのあまりつい京言葉が出てしまった。京都も行ったことないけど。まあ初めての王都だし? 案内つけてもらおうかな。マナーとか知らないからね!
「弟子殿ですね。はじめまして。案内兼、護衛を仰せつかりました王国近衛騎士第三部隊、隊長のルークと申します」
「同じく王国近衛騎士第三部隊、副隊長のブレットです」
案内にって来てくれたのは、王国騎士とやらの偉いっぽい感じの人だった。隊長とか副隊長とか。強そう。でっかい剣を腰に差している。騎士団だけど鎧は着ていないみたい。街中だからね。雰囲気はザ・騎士って感じの二人だ。
「えーと、よろしくお願いします。さっそくですが、お腹が空いたのでご飯食べられるところに案内してください」
お腹空いたからね。仕方ないね。王都のご飯ってどんなんだろう。楽しみだったんだよなあ。
――――――――――
「まじうめぇ! こんなの食べたことないよ! 師匠のシチューなんて目じゃないね!」
連れて行ってもらったのは、王都で老舗のカフェっぽいお店。しかも結構お高い感じのお店だった。周りのお客さん見てもちょっとおしゃれ感あるような人しかいない。グルーエンの酒場にいた半分山賊って感じのおっさんなんか一人もいない。
「このお肉も……なんの肉かわかんないけど、ただ焼いただけじゃないね!」
下味がついてるんだろうけど、主張しすぎない、お肉本来の旨味がジュワっと出てくる。しかも焼き加減がめっちゃ自分好み。残念ながらお米はないからパンがついてくるんだけど、このパンも柔らかいんだけど、ふわふわすぎない、絶妙の柔らかさ。お肉にすごく合う! ズビッ! って感じ!
「ハハ、弟子殿はすごく美味しそうに食べられますね。私も食が進みます」
隊長が少し笑いながらそう言う。最初は一緒に食べないって言ってたんだけど、ちょっと強引に誘ったらほいほい席に座った。副隊長も一緒だ。こんな初めてのお店で一人で食事なんて罰ゲームでしょうよ。しかも食べないけど、席の後ろに立ってるって言うんだもの。物々しいよ。だから二人には一緒に席に座って食事を楽しめと言っておいた。
「弟子殿は……少し聞いていた話と違います……ね」
副隊長がやや言いにくそうにポツリと零した。
「聞いてた話って?」
「ま、魔王と……聞いて、いまし……た」
ふーん。魔王、ねえ。そう名乗った覚えも、魔王っぽい事も、した事ないんだけどなあ。あ、領都滅ぼしたくらいかな。でもあれはそういう雰囲気だったからノーカンね。ノーカン。
「まあまあ、副隊長! 隊長も! 今日は案内ありがとね! ささ、飲んじゃおうよ! 王都に乾杯ってね!」
ああ、素晴らしきかな飲みにケーション。奢ってもらう美味しいご飯とお酒! 最高だね!
美味しいご飯と食事を楽しんでいたら、もう夕方になっちゃった。今日は王都の宿に泊まらせてもらうんだけど、そこも楽しみなんだよなあ! 王都の宿ってくらいなんだから、きっと豪華でしょ。いや豪華に違いない! 豪華じゃなかったら王都滅ぼしちゃうよ! あの領都みたいにな! なんてね! うきゃきゃきゃ!
「弟子殿! われわれと! 夜の街に! 繰り出そうではありませんか! 弟子殿!」
隊長さんもかなり酔っぱらってるよ。マジやばいね。なにがやばいって……夜の街! 宿も楽しみだけど、夜の街という甘美な響きに抗えそうもないよ……だって人間だもの! いや弟子だもの! 師匠にも教えてもらったから! 夜の街には人生で一度は行ってみるべき場所だって!
って事で、僕の王都到着はよくわからんけど、めっちゃ楽しい感じで終わったのでした。王都最高!




