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灰雪のベルクレア  作者: ラッキー中学生
旅立ち編②
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第50話 『武具の街アバンダス』

 

 あれからさらに、数十分ほど歩いた頃。


 辺りは微かな光とともに、目覚めの気配を少しずつ見せ始めていた。

 その証拠に、近くの野鳥が『ピヨピヨッ』と鳴いた。


 周囲には夜の虫もまだ残っていたけれど、世界はたしかに、朝の活動に向けて少しずつ動き始めていた。


「うわぁー! あれがアバンダスね!」


 ティエラはクルエルを抜き去り、疲れを感じさせない明るい声でそう言った。


 僕は彼女の言葉を聞きながらも、アバンダスの城壁をじっと見つめていた。


 武具の街・アバンダスと呼ばれているくらいなら、外側の壁に特徴的な施しでもされているのかとも思ったが、ベルクレアとそこまで違うようには見えなかった。


 アバンダスへ近づくにつれ、門の外にまで漂ってくる鉄の匂い。

 朝の湿った空気の中に混じる、火と金属の匂いだ。


 鍛冶場の熱を思わせるその匂いが、この街が何で成り立っているのかを、門の外にも教えてくれているようだった。


「ここが武具の街・アバンダスか...」


 僕は誰に聞かせるでもなく、そう呟いた。


 門の脇には、剣を携えた門兵が二人。

 彼らの装備は実用に寄ったもので、ただ単純に飾り立てるための甲冑ではなさそうだった。


 門前まで行くと、クルエルが門兵たちと話し始めた。

 会話の内容は聞き取れなかったが、おそらくドロームと同じで、滞在の目的とかを聞かれているのだろう。


 やがてクルエルが話を終え、僕たちは中へ通された。

 そして、アバンダスの街並みを見た瞬間。


「おぉ...すげぇー」と、思わず声が漏れてしまった。


 石畳の道がゆるやかに伸び、その両脇には鉄骨で組まれたであろう家々が並んでいた。


 その家々の一階部分は店になっているところが多く、武具を初め、花やアクセサリー等の雑貨を個人で売っている家もあった。


『カンッ! カンッ! カンッ!』

 近くから、熱した金属を槌で叩く音が聞こえてくる。


 朝だというのに、火床はもう動いているらしい。


(さすがは武具の街...)


「ゴホッゴホッ! うえぇ...」


 煙突から上がる細い煙が空気の中へ溶け、僕は運ばれてくるその空気に喉奥を掴まれてしまった。


 するとティエラが、僕を心配して声を掛けてくれた。


「大丈夫? イザヤ」


「あぁ。少し喉を刺激されただけだ」



「あの...」


 ムシュキが、何かを伝えようと唇を震わせた。


「ありがとうございます。僕たちの家はあっちです」


 そう言われ、僕たちはムシュキたちの背後について歩き始めた。

 その道中、僕は色んな姿をした人を目にした。


 武具の修繕を頼む冒険者。

 腰に武器を下げて歩く、騎士のような男。女。

 布に包んだ槍とかを、肩に担ぐ商人。

 皮手袋をつけたまま、食料を買っている鍛冶職人。


「ほんと武具の街って感じね...」


 ティエラが辺りを見回しながら、そう言葉を零す。

 するとクルエルが、続けて少し得意げに言ってくる。


「ここは冒険者も騎士もよく出入りする。研ぎ直し、継ぎ直し、調整。武具に関することなら、大抵のことは何とかなる街だからな」


 その言葉を聞きながら、僕はもう一度通りを眺めた。

 もしかしたら、ここには何かあるのかもしれない。


 強くなるための何か。

 旅を上手く進めるための何か。


 あるいは――


 ウェインを元に戻す、手がかりに繋がる何か。


 いやいや、そんな簡単に見つかるわけないだろ。

 そう分かっていても、少しだけ期待してしまう。


 だってこの街は、こんなにも僕のことを飛び立つ思いにさせるのだから。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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