第21話 『夕暮れの空き椅子』
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「......っ!」
目を覚ますと、部屋は夕暮れの色に染まっていた。
窓から見える斜面には長い影が落ちており、赤みを帯びた光が石壁を撫で、昼間より少しだけ街を柔らかく見せていた
――けれど。
眠る前の記憶はあるのに、起きた瞬間、自分がどこにいるのか分からなかった。
とはいえ、眠る前まで感じていた身体の疲労が、とっくに抜けていることだけは、すぐに感覚で分かった。
僕はすぐに、部屋の中を見渡した。
「クルエルの奴、どこ行ったんだぁ...?」
部屋の中にクルエルの姿はなかった。
一向に帰ってくる気配さえしない。
あの男は確かに「夕方まで寝てろ」と言っていた。
それなのに、当の本人はどこへ行っているんだか。
不安になり、部屋の扉を開けて廊下を見ても、人は誰一人いなかった。
それに、足音だって一つたりとも聞こえてこない。
もしかしてと思い、机の上を確認してみたものの、クルエルからの書き置き等は何もなかった。
(置いていかれたのか...)
そんな嫌な考えが、一瞬だけ僕の脳裏を過った。
しかし、わざわざ宿まで取ってくれたクルエルに限って、そんな意味のないことをするはずはない。
僕は嫌な考えを振り払うように頭を振り、両頬を軽く叩いた。
『ぺちんっ!』
その後、再び部屋の窓からドロームの街並みを眺めていると、家々の灯りが一つ、また一つと増えていく光景が視界に入ってきた。
そのせいか、ベルクレアの夜景しか見てこなかった自分が、今は別の街へ滞在しているのだと、改めて実感させられた気がしたのだ。
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