第十七話 城門
朝の早い時間は人が少なく、散歩をしているみたいで気分が良い。それに、埃っぽい牢に比べて空気は美味しいし、胸の奥に淀む靄が朝の光とともに晴れていくようだった。
僕は今まで、どうしてベルクレアを嫌いになっていたんだろうと...そう思えてくる
――だが。
この街は格差がひどいのだ。お金のない貧乏人は学校に通わせてもらえない。それ以前に、まともな飯さえも食えない。そこさえなければ、僕はきっと、この街を好きになれていただろうに...本当に残念だ。
僕はそんなことを考えながら、家々の隙間を縫うようにして城門まで向かっていた。体は悲鳴をあげているようだが、能力の使いすぎによるフラフラはだいぶ回復してきている。
そのため、走れないことはないのだが、体力を温存しておきたい。なにが起こるか、分からないから。
***
――数分後
ベルクレアの城門が見えてきた。
大きな石造りの門。
僕はこの門を何度も見てきたはずなのに、一度もこの門をくぐったことがなかった。そもそも、外に出ようだなんて考えてもみなかった
――けど。
僕は今から、その門をくぐろうとしている。なんだか、大人になった気分だ。
僕が城門を抜けると、長くいた街の気配が遠のいていくのを感じた。そのせいか、僕の中で緊張の糸が少しだけ切れ、目を閉じ、固まった体をほぐすように腕を大きく上げると『ボキッ』と肩が鳴った。
普段よりも大きなその音に、驚いて目を開けると、少し奥の木立に一人の男が立っていた。
そいつは街道脇の木にもたれ、腕を組み、まるで最初からそこにいたみたいな顔をしている。
それが、逃げてくる者を待っていた...とでも言いたげに。
直後、僕の眠気が一瞬で吹き飛んだ。
そいつは僕に何も言ってこない。
ただ、こちらを見ているだけ。僕はフードを深く被りなおし、顔を見られまいと必死に隠した。
「......なんの用だ! こんな早くにっ!」
それと同時に、僕は右手を無意識に握る。
するとその男は、ゆっくりと口元を上げた。
ウェインと同じ階にいた野郎と同じで、こいつも僕を見て笑ったのだ。
フードで必死に顔を隠し、警戒している僕の姿がそんなにおかしいのだろうか。
そう思いながらも、しばらく僕と男が互いに見合っていた時、朝の最初の鳥が『ホッホー』と鳴き出す。
僕にはそれが何か、『はじまり』の合図のように聞こえた気がした。
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