表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
要らない娘と呼ばれた私を、魔王は千年待っていたそうです ~捨てた公爵家は没落し、私は世界で一番幸せになりました~  作者: 蒼空ルーシェ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
59/71

第58話 魂の領域

 翌朝。


 地下の祭壇の間に、八人が、集まっていた。


 リーシェ、ゼルヴァーン、アルト、ナディア、フィン、リューシェ、デミウルゴ、ハインツ。


 そして——ノエル。


 ノエルが、家族として、隣に、立っていた。本来の姿で。銀灰色の髪と、薄い灰色の瞳の、若い女性。


 クリストフは、午前中に、王宮の公務が、あった。午後に、合流する、ことに、なっていた。



   ◇



「ノエルさん」


「ええ、リーシェ」


「お姉さまの魂を、私の中に、お移し、いただく、儀式を——お願い、できますか」


「ええ」


「どう、するんですか」


「ローシェお姉さまの絵の前で、私が、両手を、あなたの胸の上に、置いて、魂を、移します」


「ええ」


「お姉さまの魂は、銀の光に、なって、私の手のひらから、あなたの心臓に、流れます」


「ええ」


「儀式の間、あなたは——夢の中に、入る、可能性が、あります」


「夢の中」


「ええ。お姉さまと、最後の、対話を、なさることに、なるかも、しれません」


 リーシェが、頷いた。


「お受けします」



   ◇



 奥の、月光の部屋。


 ローシェの絵の、前で、二人が、向かい合った。


 家族たちは、扉の外で、待っていた。


 ノエルが、両手を、リーシェの胸の上に、置いた。


 心臓の、すぐ上。銀のロケットの、上に。


「リーシェ」


「はい」


「目を、閉じて」


「はい」


 リーシェが、目を、閉じた。


 ノエルの手のひらから、銀の光が、漏れ始めた。


 光は、リーシェの胸に、染み込んでいった。


 千年、ノエルの中に、閉じ込められていた、お姉さまの魂が——リーシェの心臓に、流れた。


 リーシェの呼吸が、深くなった。


 深く、深く。


 そして——



   ◇



 夢の中。


 月の庭園。


 しかし、今日の月の庭園は——昨日までと、違っていた。


 花が、咲き乱れていた。


 白い花。青い花。薄紅。銀。そして、もう、黒い花は、なかった。


 月の庭園が、千年前の姿に、戻っていた。


 中央に——一人の女性が、立っていた。


 ローシェ。


 彼女は、振り返って、笑った。


「リーシェ」


「お姉さま」


「ようやく、二人で、ゆっくり、お話、できるわね」


「はい」


「私の魂が、あなたの中に、移ったの。少しの間、夢の中で、お話、しましょう」


「はい」


 ローシェが、リーシェに、手を、伸ばした。


 リーシェが、手を、握り返した。


 二人の半身が、夢の中で、隣に、立った。



   ◇



「お姉さま」


「ええ」


「お姉さまは、これから、どう、なられるんですか」


「私の魂は、あなたの中で、徐々に、薄まって、最後には、世界の循環に、溶ける」


「世界の循環に」


「ええ。半身の魂は、最終的には、世界の循環の、一部に、なるの。私は、千年、ノエルの中で、止まっていたから——これからは、ゆっくり、世界に、戻る」


「お姉さまは、消えてしまうのですか」


「消える、というより——溶ける」


「ええ」


「世界の、空気の中に、土の中に、花の中に。私の魂は、ばらばらに、なって、世界に、戻る」


「お姉さま——」


「悲しまないで」


「ええ」


「私は、千年、休んでいた。これからは、世界の、循環の中で、もう一度、流れる。それが、半身の、本来の、姿なの」


「お姉さま」


「ええ」


「私は、お姉さまから、お力を、引き継ぎます」


「ええ」


「私が、咲かせる花の中に、お姉さまの魂が、流れています、ね」


「ええ」


「では、私が、咲かせる、ひとつひとつの花が——お姉さまの、続き、です」


「ええ」


 ローシェの目から、涙が、一粒、落ちた。


「リーシェ、ありがとう」


「私こそ、お姉さま」



   ◇



「お姉さま」


「ええ」


「ゼルヴァーンさまのことを——」


「あの方は、もう、私の方を、見て、いらっしゃらないわ」


「えっ」


「あなたを、見て、いらっしゃる」


「ええ」


「だから、私は——もう、安心して、世界に、溶けられる」


「ええ」


「あの方を、お任せ、いたしますね、リーシェ」


「はい」


「私が、できなかった、こと——揺らがれても、消えない、ことを、なさってください」


「はい」


「あの方の、千年の、孤独を、これからの千年で、埋めて、ください」


「はい」


 ローシェが、リーシェの両手を、握った。


「私の代わりに、ではなく」


「ええ」


「あなた自身の、千年として」


「ええ」


「お受けします、お姉さま」



   ◇



「リーシェ」


「ええ」


「お別れ、ね」


「お姉さま」


「次にお会いするのは——あなたが、咲かせる、花の中で」


「はい」


「私は、花の中に、いる」


「はい」


「あなたを、見ているからね」


「お姉さま」


「ええ」


「最後に、一つ——」


「うん」


 ローシェが、リーシェを、抱きしめた。


「お姉さま、と、呼んでくれて、ありがとう」


「お姉さま」


「血の繋がりは、千年、薄いけれど——あなたは、私の、千年遅れの、妹」


「お姉さま」


「妹に、お会いできて、嬉しかった」


「私もです、お姉さま」


「リーシェ」


「ええ」


「揺らいで、消えないで」


「はい」


「私は、揺らがず、消えました。あなたは——揺らいで、消えずに、いて」


「はい」


 ローシェが、リーシェから、離れた。


 光に、なって、月の庭園の、花の上に、降りていった。


 花が、揺れた。


 ローシェの魂が、世界に、戻り始めた。


お読みいただきありがとうございます。


リーシェが、夢の中で、お姉さまに、お会いに、なりました。

そして——お姉さまの魂が、世界の循環に、戻っていくことに、なりました。


「私の代わりに、ではなく、あなた自身の、千年として」


千年前の半身が、千年後の半身に、すべてを、お任せに、なりました。


次回、第59話「お姉さまへ」。

夢の中の、お姉さまとの、最後の対話の続きです。

そして——ゼルヴァーンに、お姉さまの最後の、お言葉を、お伝え、いたします。


ブックマーク・評価・感想、何卒、お願いいたします。

夢の中の、お姉さまに、☆ひとつ、お力添えを。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ