89.桜
「桜?」
司がなんのことか分かっていなかった。
「司は知らないのか?」
もちろん司は、異世界の人間だから元いた世界のことを知らないのは仕方ないのだろうけど。
小さい頃から何度も陽葵に会っているのだから1回ぐらいは春の季節に来てもいいのではないだろうか。
「私と会う時は毎回室内だったからかな?」
なるほどそれなら司が桜を見たことがないのも納得ができる。
「私もそんなに外出ないから」
「桜ってこんなに綺麗なんだね。」
陽葵は、感動していた。
きっとこの木は、桜に似た違うものなのだろう。
でも、何故かここには懐かしさがある。
「陽葵も見た事ないの?」
「じゃあ元の世界に帰れたら」
「みんなで見なきゃね!」
未来が、嬉しそうに言った。
「そうだね!」
陽葵も、未来の笑顔に引っ張られるように笑いながら答えた。
その約束がかなった時、司と花は一緒だろうか。
「じゃあ帰ろっか。」
もう少し桜を見たいがきっと見すぎたら
もっと帰りたくなってしまうから。
──────
「でもさ、どこにあの魔法陣」
司の言っていた木はこれで間違えないはずだが
どこを探しても
―魔法陣がない
もしかしたら、木の中に入れるドアがあるのかもしれないと
一生懸命探したがもちろんそんなものはなかった。
「どうすんだよ」
みんなは、少しづつ焦りを感じた。
「あれ?」
陽葵が木の下の方を見て声をあげた、
「どうした?」
司が陽葵に近づきながら声をかけた。
「ここの土のところこんなにえぐれてた?」
そこには、さっきまではなかったはずの穴が空いていた。
「誰か転んだのか?」
蓮が聞いたがみんなは首を横に振った。
「じゃあなんだろう」
陽葵が、その穴に顔を近づけた時だった。
グワァン
「えっ?」
ドンッ
「...陽葵!?」
さっきまで小さかった穴がいきなり広がった。
そして、深くなった。
そこに、運悪く上にいた陽葵が落ちてしまったのだ。
「いったぁ」
陽葵は、お尻を擦りながら立ち上がった。
「なんなの?」
「って、」
「あぁぁぁ!」
陽葵は、いきなり大声を出した。
「陽葵!?」
司が心配そうに声を出した。
「あった!」
「みんなあったよ!」
「魔法陣!!」
「...えぇぇ!」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。




