81.最後まで諦めなかった
「ドラゴン?」
その名前を知らない者はいないだろう。そして、みんなが想像していた姿そのものが目の前にある。
だから、ドラゴンであることはしっかりと分かっている。
でも、信じたくない。
死を自覚したくないから。
「ゴァアアアア...」
ドラゴンは、これから戦うことを楽しむようにゆっくりゆっくりと近づいてくる。
1歩ずつ。
ドラゴンが、歩く度地面が揺れる。
「終わった、」
蓮が、ボソッと呟いた。
その声に、絶望を含みながら。
「諦めちゃダメだよ!」
「ほら、何とか行けるよ!」
「...ねっ?」
「...」
最後まで諦めなかったのは、花だった。
協力すれば勝てるかもしれない。
そんな期待を寄せてみんなに問いかけたが、答えの声は返ってこなかった。
「ドラゴンって、強いんだよ」
司から一通りの魔獣のランクを教えてもらった。
ドラゴンのランクはA級の上
「......S級だよ。」
ドラゴンは異世界でも、物語の中の生き物として扱われていたはずだ。
なぜなら、何千年という時の流れの中でたった
3回しか姿を現さなかったからだ。
そして、その3度で、幾つもの国が消えた。
だから、ただの高校生は
きっと、一瞬で倒されてしまう。
「くそっ、」
直人が前に出た。
右手を突き出し唱えた。
「岩魔法」
「落天地」
その瞬間、
ドラゴンの頭上、空中に小さな岩が形成された。
小さな岩が勢いよくぶつかり1つの巨大な岩が生まれた。
「ー落ちろ。」
直人が右手を下に振り落とした。
巨大な岩は、ものすごい速さで落ち、ドラゴンの頭にぶつかった。
ゴォォンッ
ドラゴンの頭がわずかに動いた。
「効いてる!」
興奮まじりに言った。
だが、
「グルァアアア!!」
ドラゴンは何事も無かったかのように再び叫んだ。
「う、嘘だろ」
直人の固有魔法は岩魔法。
その中で一番攻撃力がある、落天地。
それが効かなかった。
「ギュアアアア」
ドラゴンが上を向きながら叫び、
異様に長いしっぽを振り回した。
「ぐはっ、」
「ぎゃぁぁ」
乱雑に振られたしっぽに何人もがまとめて投げ飛ばされてしまった。
「みんな!!」
幸い、みんな意識はあるみたいだ。
「ここで、司の鬼訓練が役に立ったよ」
吹き飛ばされた健一が、倒れながら言った。
「何言ってるのよ」
空もうずくみながら言った。
「わ、私も」
「行くわよ!」
「でも、硬そうよね」
花の言う通りドラゴンの鱗は固いだろう。
あんな大きな岩でも、平気だったのだから。
「...なら、」
「植物魔法」
「心核蕀」
―心核蕀
それは、一撃で心臓を撃ち抜く魔法。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。




