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64.誰のための勇者

「この国をぶっ壊すためだ。」


勇者の口から出た言葉だとは到底思えない。


「すごい夢だな」


案の定、蓮が引いていた。


「まぁ、国を壊すじゃなくて、」

「国王を倒すって意味で言ったんじゃないの?」


陽葵が、司の言葉に付け加えて言った。


「そんなところだ。」


確かに、そう思えば今までの行動が納得いく。


国のトップに立つ勇者がわざわざ異世界の高校生のために家を用意して、危険な時には魔法を使って助けてくれた。

その行動が今まで謎だったが、なるほど


「今までの行動は自分のためだったんだな」


楓が、ボソッと言った。

その言葉は喧嘩と受けてることもできる。

このままでは喧嘩が始まってしまう...


「いや、」


出てくる言葉は想像していような怒鳴り声ではなく、優しい否定だった。


「俺は、国の勇者にも自分のための勇者にもなったつもりはない。」


そう言って、司は口を閉ざしてしまった。


「なんだよ」


その続きを知りたいのに、聞かせてくれないのかよ。


「気が向いたら話す。」


これは、一生聞けないやつではないか?

とみんなは悟った。


「じゃあ勇者になったことに後悔はないんだ。」


今のように陰口を言われることはなる前から分かっていたはずだ。

それを無視しようと決意したのだ。


「いや、1つだけある。」


司は、上げていた頭を俯かせて自分の手を見ながら言った。


「俺が勇者になるのを最後まで止めていたのは母さんだった。」


それはそうだろうな。

自分の夫を任務で亡くして、今度は息子を亡くすかもしれない止めない親は居ないだろうな。

たとえ、絶対に止められない運命だろうと。


「その後母さんは流行病...」


司はその後の言葉を言わなかった。

みんなも察して何も言わなかった。


「俺が、もっと母さんの近くに入れたらって思うけど」

「でもな、俺は、今の選択をしなかったらきっともっと後悔してた。」

「だから、これでいいんだよ。」


その言葉は、司がみんなに向けて言ってるものではなく自分に言い聞かせるように言っていた。


「司、」


陽葵は、司の肩をぽんと触った。


「じゃあ絶対に成功させよう。」


きっと、上手くいく何故か不思議とそう思えた。


なんの根拠もないのに。


ここまで読んでくださってありがとうございます。

次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。

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