222.生き抜く力を教えなければ
「ソル!」
ソルと出会った森の中から
そう呼ぶ楓の声だけが寂しいこの森にはよく響く。
「ぎゅーー」
ソルの、成長のスピードは凄まじく
出会って、1ヶ月も経っていないほどでみんなの背を抜くほどに大きくなっていた。
「ソル声まで低くなって」
花は、おばあちゃんが孫を見るような優しめで見つめていた。
ソルは、大きくなってもやっぱり森へ帰ろうとしない。
それに、どんどん懐いてしまっている。
最初は、楓に懐いていたが餌や遊びをみんながする内にみんな同じぐらい懐いてしまった。
「俺だけだったのに」
楓は、その事がショックでたまにぶつぶつといじけながら文句を言っているのがここ最近のルーティンだ。
「まぁまぁ」
陽葵が、励ますように言った。
楓は、気づいていないようだが
ソルが、甘えたような声を出すのが特に多いのは楓と一緒の時なのだ。
「それにしても、」
「陽葵は、今日なんでここに来たの?」
ずっと傍で見ていた柚が言った。
今日は、陽葵の誘いでソルを連れ
楓と花、柚の4人で不帰の森に来ていた。
「今日は」
「ソルがある程度大きくなったから」
「ソルに魔法がどれぐらい使えるか見たくて」
陽葵は、当たり前のように言った。
「神獣は、魔獣よりも魔法の扱いが上手いの」
「でも、ソルに魔法を教える必要があるのか?」
「俺たちがいるのに」
「まさか、陽葵はソルを戦場に?」
楓は、珍しくよく喋った。
「そんなこと考えてないよ。」
「私たちは、人間と人間の戦いだよ?」
「関係のない生き物にそんなことさせないよ。」
陽葵は、そんな考え方を自分がしていると思われていることにガッカリし
拗ねたように楓を細くなった目で睨みつけた。
「そ、そうよねぇ!」
花は、その2人の間に入り
乾いた笑いだけを繰り返した。
「それならなんで?」
「私が心配してるのは戦いの最中じゃなくて」
「全てが終わった後」
「を心配してるの。」
戦いが終わったあと
「...」
もし、みんなが国王に勝つことができたとしたら。
みんなは、元いた世界に帰ることになる。
「その時、ソルは1人でも生きていける様な力が」
「必要になるのは分かるよね?」
ソルを自分たちの世界で育てることなどもちろんできない。
もし、できたとしてもソルにストレスがかかりすぎる可能性も出てくる。
「もちろん、私もソルのために手は尽くそうとは思ってるけど」
「国王を倒したとなると」
「私の身は保証させない。」
「それに、神獣は長寿だから」
「きっと、いつかは1人になっちゃう。」
「陽葵、」
考えもしなかったけど
陽葵は、今自分の国を裏切ろうとしている大罪人。
国民の陽葵に対する捉え方は様々かもしれない。
きっと、陽葵はそのことを承知の上なのだろう。
だから、今ソルに自分自身で生き抜く力を覚えて欲しい。
「きゅーー!」
ソルは、自分たちを選んでくれたのだから。
最後まで、大切に育てなくては。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。




