216.メガホン
「それじゃあ私から行きますわよ!」
そう言って恋歌は、メガホンを強く握り絞めた。
「私、メガホンなんてものを初めて使いますから」
「楽しみで仕方ありませんの!」
このお嬢様はなんと怖いもの知らずなのだろうか。
言葉通り恋歌の目はいつもよりも輝いて活気に溢れているように見えた。
「北の方からウーストが1匹来る」
「そいつで練習してみろ」
ウーストは、狼のような魔獣で基本的に1匹で行動するという似た特徴を持っている。
恋歌は、分かりますたわと司に返事をして
口元にメガホンをセットし
「ガァルル」
司の言っていた通り草むらから1匹のウーストが見えた時
右手でメガホンのスイッチをカチッと押した。
「歌魔法」
「夢誘」
恋歌は、下級魔法を唱えた。
そして、その後に歌詞のない歌をメガホンに乗せ歌った。
「ガ、ガルゥゥ」
ウーストは、一瞬唸りを止めた。
それも無理はないだろう。
恋歌の歌を聞いていると
上手く頭が働かず
時間の流れるスピードが遅くなる感覚がする。
まるで、頭の中が恋歌の歌で支配させるような
「らーらぁ」
恋歌は、そんなことお構い無しに歌を続ける。
ウーストは、どんどんと足に力が入らなくなり
右へ左へとゆらゆらと揺れ始め
最後には、ゆっくりと地面に寝っ転がり
眠りについてしまった。
「出来ましたわよ!」
「みなさん!」
「あれ?」
恋歌が、ウーストを倒せたことが嬉しかったのか
テンションが上がったように振り向いたが
「よ、良かったよ」
ほとんどが、恋歌の魔法に当てられて意識朦朧としていた。
「ありゃ」
「恋歌が、メガホン使ったことでコントロールが難しくなっちゃったか」
そんな時でもケロッとしている
司と陽葵がなにやら話していた。
「2人は流石なことで平気なんだね。」
少しずつ目が覚めたような感覚を取り戻し
花が、起き上がりながら言った。
「私の場合魔力吸っちゃうからね。」
司は、慣れだろうけど
陽葵は、体質なのか。
とことん格の違いが分かってしまう。
「それよりも、恋歌はその武器のコントロールを上手くなんないと行けないね。」
陽葵は、恋歌にそうアドバイスをした。
「そうですわね。」
恋歌は、恋歌なりに反省しているようだ。
チャレンジ精神は素晴らしいけど突っ走る癖がれんがにはあるからな。
「でも、効果はすごくていいよ!」
「戦場になったら誰の命も取らずに倒せるし」
「でも、仲間まで倒れちゃ意味ないから」
「訓練すれば全然平気だよ!」
陽葵は、慌てて恋歌を励ました。
その後、一通りみんなの武器に対しての良い点改善点を陽葵が、教えた。
「みんな、センスはいいし」
「さすが一さんが考えただけあるなって感じ!」
日も落ちてきた頃
剣や弓などの武器を扱う人達の訓練が落ち着き
夢描達の方の訓練はまた後日となった。
「じゃあ遅くなったら危ないし」
「そろそろ帰ろっか。」
陽葵は、そう言って
みんなは、返事を返した。
「あれ?」
「楓は?」
さなが辺りをキョロキョロした後に呟いた。
そういえばさっきから楓の姿を見ていないような。
「まさか、迷子?」
そんな考えが頭をよぎった。
よりにもよって楓が迷子はまずい。
他のみんななら魔法が使えるから何とか生き残るかもしれないけど楓は今だ魔法が使えないから。
「とりあえず手分けして探そう!」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。




