214.この森の名前ともう1つの名前〜隠された真実〜
「まぁ、過ぎたことを言うのはこの辺で終わりにして」
陽葵が、落ち着いてと付け加えながらみんなに向けて言った。
「それは、こっち側が言ってこそなんだよな。」
空は、呆れながら言ったが
陽葵の耳には残念ながらどいていないようだった。
「よぉーし!」
「じゃあ訓練始めますか!」
外で森の中だからなのか陽葵の声がよく響く。
訓練とか大きい声で言ったら誰かに聞かれてしまうのではないか。
敵に顔も知られているのに
「てかさ、」
「陽葵ここどこなの?」
「生えてる植物がいつもの森の違うんだけど。」
流星が陽葵に質問を投げた。
言われてみれば
見たことの無い植物がちらほらある。
勝手にいつもの森の中だと考えていたけれど
王都の近くの森でドラゴンが出たらただ事ではすまない気もする。
「えっとね」
「王都を中心にした時の最北に位置する森」
「ネクノレア」
「って、言うんだけど」
「えっ、」
陽葵の話を聞いた花が力の無い声を漏らしてしまった。
「陽葵今」
「ネクノレアって言った?」
花は、陽葵に聞き直した。
どうやら花はこの森を知っているようだ。
有名なのかな。
「うん」
「ここの森にはね」
「別名があってこの森に入ったら」
「終わり、一生帰ることはできない」
「不帰の森」
ここで、ようやくみんなは理解することになった。
花の力の抜けた声の意味は驚いていたんだ。
来れたことに喜んでいるのではなく
来てしまったことに怯えているのだと。
「どういうことなの!」
さすがに、こればっかりは陽葵を許すことはできない。
だって、名前からしてこの森は絶対に良くない。
前の経験からここには何か悪いことが絶対に起こると思ってしまう。
それよりも、不帰の森なんて物騒な名前で呼ばれていることを陽葵は知っていながら
武器の扱いに慣れていないみんなを連れてきたのはなぜだ。
「なんで初めにこんな所で訓練するの!」
「訓練所もあるのに」
花が、陽葵に怒りをぶつけた。
それに対して陽葵は、何も言い返さずただごめんと謝るばかりだった。
「お前らは、本当に馬鹿だな。」
それを見ていた傍観者、司は
いきなり陽葵以外のみんなに罵倒を浴びせた。
「なんで、こんな時だけ司は喋るの!」
「てか、私たちのどこが馬鹿なのよ!」
空は、司に怒りの矛先を変え言った。
「本当よ!」
「蓮が言われるなら頷くしか出来ないけど」
「私たちまで馬鹿呼ばわりなんて」
「頷くなよっ!」
蓮は、顔をしかめ言った。
「いいやお前らは馬鹿だね」
「なっ!」
これは、どんどん盛り上がってしまうのではないだろうか。
司は、自分の発言に謎の誇りを持っているから
折れるはずもない。
だけど、今のみんなは死にかけた森が本当に死ぬと言われている森に黙って来させられて怒っている。
これは、長い戦いになるのか?
そう、考えていた時だった。
「ごめん」
「確かに私が悪かった。」
陽葵が、みんなの方を見ながら頭を下げた。
「ここが良くない噂が流れてることを知っているのに」
「連れてきたのは私だから」
「だから、本当にごめん。」
そんなことを言われたら何も言えなくなってしまうではないか。
「でも、なんでわざわざここにしたの?」
ここでようやく、花は陽葵の話を聞く気になった。
「花は、ここがなんで不帰の森って言われるか知ってるの?」
陽葵は、ゆっくりと頭を上げて
花に質問をした。
「それは、文字通りこの森に入った人は」
「二度と帰ってこなかったからじゃないの?」
花は、曖昧に答えた。
そこで、陽葵はニコッと笑いながら人差し指をピンッと立てて
まるで、眼鏡をかけているかのように鼻の上をクイッと持ち上げた。
「それじゃあ」
「この国の経済のことについて分かることはある?」
またもや、陽葵は花に質問をした。
花は、その質問の答えを考えるため一瞬下を向き考える動作を見せた。
「あっ!」
花は、考えた末何か思い出したようだ。
「なに?」
「私が小さい時に読んだ絵本で」
「北は貧しい場所だから」
「みんなで手を取りあって暮らしていますって」
「書いてあったわよ!」
そう言った。
「そう!」
「花、その通りなんだよ!」
陽葵も、ヒートアップしてきた。
「この国の経済は」
「残念ながら結構な差があってね」
陽葵は、花の話に詳しく説明を付け加えた。
「王都以外で見たら」
「南に行けば行くほど経済は発展していて」
「北に行けば行くほど経済は衰えているの。」
「そんなことがあるの。」
私たちがいつもいるのは王都周辺だから
よく分からなかったな。
「でも、それがこの森が不帰の森と言われている理由にどう繋がるのよ」
花は、結論を急がせた。
「まぁまだまだ」
陽葵は、逆にまだ説明足りないようだ。
「じゃあちょっと飛ばすけど」
「この森に入る人はどんな人が多いと思う?」
きっと、経済が発展しないのは物資があまり取れないからだろうか。
森の中にある植物も変な色のものばかりだから。
だとしたら、わざわざ発展しているところの場所から人がここまで来るとは思えない。
そうなると
「...北に住む人達」
夢描は、ぼそっと言った。
その、小さい声も陽葵は見逃さなかった。
「そう!」
「この森に入る人の多くは貧しい暮らしを虐げられている」
「北の住民なの。」
「それに、この森には魔獣が多い。」
「ここまでいえば何となく不帰の森って言われるのか理由が分かるよね?」
なるほど、陽葵がさっきから質問形式だったのはみんなにこの国について考えさせるためだったのか。
「防具やちゃんとした武器を買えない持つことの出来ない北の住民が魔獣の多い森の中に入ったら」
「森から帰ってこれる可能性は極めて低い。」
空は、スピードを落として言った。
「そういうことになるね。」
「北の人にとってこの森は物資を取れる」
「唯一の助けだから、帰って来れないかもしれないと思っても行くしか無かった。」
「それが、誰かの口から口へと広まり」
「北から東へ西へ南へ王都へ伝わったんだよ。」
この森は、北の住民にとって救いであり。
絶望だったのかもしれない。
「でもね、」
「この森はみんなが知らないだけで」
「本当はとても素敵な場所なの。」
「この森が?」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
昨日は体調不良のため投稿ができず申し訳ありませんでした。
どうぞ次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。




