210.私は頭がいいからね!〜もう1つの地図〜
「羨ましい?」
今の自分の発言の中に
空が羨ましがるところはあったのだろうか。
「うん」
「陽葵が天龍だって分かる前から」
「思ってたんだけどさ」
「頭の良さから」
「人に対しての関わり方」
「陽葵は、私に無いものを全て持ってる」
「さっきの地図を書いたって話」
「私はきっとこの先どう頑張っても」
「出来ないなって」
「空...」
空が、そんなことを思っていたのか。
空は、B組の中で1番頭が良かった。
でも、今は違う。
空自身もそのことを分かっている。
だから、羨ましいと言ったのかもしれない。
「陽葵だって、努力してるのに」
「こんな考えしかできないなんて」
「私本当に最低だよ。」
「呆れるよね。」
空は、そう言って目線を落とした。
やるせない気持ちを
どうすることも出来ず
言葉だけが前へと出ていくように
「そうだね。」
「えっ?」
「全く聞いて呆れるよ!」
陽葵は、そんなことお構い無しに
強く言った。
「今の私の頭の良さは」
「地頭がいいからだし」
「地図が簡単に書けたのは才能だし。」
あろうことか
その場で立ち上がり自分のすごいところを
熱弁しだした。
「やっぱりそうだよね」
「陽葵は、すごいよ。」
空は、陽葵の発言を聞いてますます
気分が下がったように見える。
「なんて、」
「嘘だよ」
「えっ?」
陽葵は、ぶっきらぼうに土の上に座った。
その座り方は、陽葵でも天龍でもないようだった。
「私の地頭めっちゃ悪いの!」
「嘘だよ!」
信じられない様子だった。
「本当なの!」
「昔ね王族だから」
「王族としての作法とかマナーとかを教えてもらう時」
「1回ではもちろん覚えられないから」
「なんども、先生みたいな人に鞭で」
「背中を何回も叩かれて」
「腫れるってことは日常茶飯事だったし」
陽葵は、そっと自分の背中に手を当てた。
「そんな」
「陽葵の知識量で勝手に」
「なんども本を読み返してようやくだよ。」
「でも、その知識を活かして地図を作ったのはすごいことじゃないの?」
努力が実ったと大いに言える結果に思える。
「実はね」
「さっきみんなには言えなかったんだけど」
「私が書いた地図もう1つあったの」
「なんで、」
言わなかったのだろうか。
空の口からポロッと出そうになったが
無理やり抑えた。
「特別だよ」
「空にだけ話す」
「分かった」
「誰にも言わない。」
空は、固くそう誓った。
「さっきみんなに見せた2枚の地図が完成した時」
「確かに努力してよかったって思った」
「でも、地図を書いたことが」
「あと人にバレて」
「もう1つ地図を書くように命令されたの」
「...もう1つの地図」
「隣国の国全体の地図だった。」
まさかの、他国の地図を書かせるとは
「色んな手を使って」
「隣国の地図を手にしたみたいなんだけど」
「技術の差はあまり変わらないから」
「隣国も分かりにくい地図ばかりだったの」
「だから、あの人は私にあの2つと同じような」
「地図を書かせた」
ここまでの話はさっき聞いた2枚の地図とそう変わらないように感じる。
「でも、それって良かったことじゃないの?」
「国王が天龍の能力を認めてるってことじゃないの?」
「そうだよ」
「私も最初はそう思って喜んで書いてた」
「初めて認められたと思って」
「丁寧に自分の隣国の知識を全部出して」
「完璧な地図を完成させた。」
今まで聞いてマイナスに取られている陽葵の考えに納得が行かない。
「...」
「陽葵?」
陽葵がいきなり黙ってしまった。
眉間にシワを寄せ
何かを堪えるように
「その地図がなぜ必要なのか分かる?」
「隣国のことをよく知るため?」
「ある意味正解だね。」
陽葵は、ずっと下ろしていた顔を上げた。
その目には涙を浮かべながら
「戦争で使うためだよ」
「私が書いた地図のせいで」
「隣国の国民はほとんど戦争で死んだ。」
「あの人は私を認めてくれたんじゃない」
「ただ、戦争のために私を利用したんだよ」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。




