209.盗まれる方が悪い
「それで、質問の続き答えてよね。」
ご飯を食べ片付けが終わったあと
空が、陽葵に問い詰めるように言った。
「は、はい」
陽葵は、もしかしたらみんな
そのことを忘れてくれているかなと
淡い期待でも抱いていたのかもしれない。
そんなはずはないだろう。
「私から聞いてもいい?」
花が、手を挙げて言った。
「もちろん」
「もし、言いたくないことだったら言わなくていいんだけど」
「なんで、王族である天龍が」
「牢屋に入れられてたの?」
気まずそうに質問をした。
「答えられそうなところまで答えるね。」
「ありがとう」
「えっと」
「牢屋に入ったのはお母様が亡くなられた後だから」
「7歳の時だね。」
「その後はパーティーとかで主席しなきゃ行けない時は」
「ちょくちょく外に出されたけど」
「4年前私が14歳の時に城を抜け出したから」
「7年間牢屋の中にいたかな。」
「...7年間」
陽葵は、淡々と話すから重い話に聞こなくなってしまうが想像するだけでゾッとする。
「牢屋に入れられてたのは」
「なんの理由でとかは分からないんだけど」
「精神をばらばらにするためかと思う。」
「ばらばらに?」
「うん」
「さっきも言ったけど呪いは精神が不安定の時の方がかけやすい」
「ふかふかなベットで寝るより」
「冷たくて硬い床で寝る方が気持ちは下がるし」
「暖かくてバランスの取れた食事より」
「固くて腐った食事の方が精神的にくるし」
「そう考えれば牢屋は最適なんだよ!」
「...」
「って、全部言っちゃった。」
陽葵が、無理に笑っていることは
誰でも分かった。
「うっ、」
─よしよし
花は、泣くのを我慢するために
口をつぼめて思いっきり陽葵の頭を撫でた。
「ちょっ、」
「なんで急に」
「だって、」
「帰ったら頭撫でるって言ったから」
「確かに言ってたけど」
「なんで今」
「理由なんていらないの!」
「したいからしたの!」
花は、そう言った後また頭を撫でた。
「私も!」
それに便乗して
夢描が、空が、未来が次々に女子たちが陽葵の頭を撫で始めた。
「ちょっと」
「痛いよぉ」
「そんなこと言って」
「ニヤけてるわよ!」
「なんで、花も嬉しそうなの!」
天龍の笑顔は陽葵の笑顔と一緒で
何となく安心してしまった。
私たちに向けてきた笑顔は偽りではなかったのだと
──────
「じゃあ次私!」
夢描が、そう言った。
「もう何でも来い」
なでなで攻撃で疲れきった陽葵は、
諦めたように弱々しく呟いた。
「陽葵が、城から持ち出したものって何?」
「あぁ」
「たしかにみんなに言うの忘れてたわ」
「ほら、私ナイス質問でしょ?」
「そーですねぇー」
「うわ、棒読みぃ」
「はいはい」
「それよりも本当に何持ってきたの?」
「えっとねぇ」
陽葵は、服のポケットをゴソゴソと何かを探していた。
「あった!」
「これだよ!」
陽葵は、そう言ってみんなに見せた。
「これって」
「お金と地図?」
空の言う通り
陽葵が、出してきたのは
大量のお金と2枚の地図だった。
「なんの地図だよ」
「1個がこの国の地図で」
「こっちが城内の地図」
「えっ、」
「これって」
「国家秘密だね。」
「何やってんだよ!」
国の地図はまだしも
城内の地図には抜け道や国王の寝室等細かく書かれていた。
「でも、盗まれるぐらいの」
「警備してるほうが悪くない?」
「陽葵って、国王が絡むと性格歪むのね」
「それでこっちの大金はなんだよ?」
「陽葵のお小遣い?」
楓が、お金の方を指さしながら言った。
「私にお小遣いをあげるはずがないでしょ」
「あの人が」
「じゃあこれも盗んだのか?」
「盗んだって言うか」
「貰ってなかった報酬を今貰ったみたいな」
「要するのに?」
「盗まれる方が悪い」
違う!
と言いたいところだが
陽葵の言い方的にこのお金は貰ってもいいのか?
「報酬って?」
「そこにある2枚の地図」
「描いたのは私なの」
「えっ?」
「元々地図はあったんだけど」
「どれも、分かりずらいし」
「途中で途切れてるものもあったから」
「色んな地図を見て私が分かりやすく書き直したの」
「そしてざっとこれぐらいの報酬貰っていいよねって」
「額を計算したってわけですよ。」
「もう、」
「お前と話をしていると頭が痛くなるよ。」
「私はさっきされた」
「頭なでなでで頭が痛いよ。」
──────
森へ繋がる出口の近くの森
「陽葵」
「こんなところにいたの?」
外は日も落ちて
森の中は薄暗かった。
「空」
「うん」
「森の中には本で見たものが沢山あるから」
「見てて飽きないんだ。」
「陽葵の頭の中にはどれぐらいの知識が詰まってるの?」
「えぇ」
「分からない」
「でも、本を見ることしかやること無かったからね。」
陽葵は、話している間も
植物から目を離さなかった。
「そっか、」
「正直さ」
「陽葵が羨ましいよ。」
「空?」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。




