208.みんながみんなで良かったよ。
「でも、一体どんな呪いをかけたの?」
花が、言った。
見た感じ操られるみたいだったけど
「これは、私の予想なんだけど」
「慎さんとかって」
「魔力を抑えられてるって言ってましたよね?」
「はい」
「魔力量の多い人は特に重要視されてましたよ。」
「差別化を防ぐためと言った理由で」
「それだと思うんですよね。」
「それ?」
「この呪いはその魔力を抑える」
「というか吸ってしまう」
「それって国王が国民の魔力を使うためにってこと?」
「多分そうだと思う。」
だとするならば
話で聞く限りの魔力量の多さにも納得がいってしまう。
「でも、なんで操られたみたいにみんな変になったの?」
「呪いは気持ちが落ち込んだ時の方が」
「かかりやすいしかけやすいの」
「だから、一旦かけやすい状態にしてるんだと思うよ。」
「まぁ、これも本からの情報なんだけど」
陽葵は、苦笑いをした。
「それよりも2人体調は大丈夫?」
「光魔法って自分では分からないからさ」
見る限り辛そうなところはないが
無理やり呪いを解いたようなものだから
「分からないの?」
「うん」
「前呪魔法で説明したと思うんだけど」
「光とか呪魔法って」
「あくまで他者にかける魔法だから」
「自分にかけることはできないの。」
「だから、魔法がかかったらどうなるかは」
「相手に聞かないと知ることができないんだよね。」
「意外と不便な魔法なのかもね。」
「そうかも」
陽葵は、笑顔を見せながら答えた。
──────
「陽葵さん」
「いいえ」
「天龍様」
「よくぞご無事で」
慎さんは、ゆっくりと
陽葵にいや
天龍に跪いた。
慎さんは、陽葵の天龍となった姿を見て
正体をみんなに明かしたことを察したらしい。
「そんな」
「かしこまらないでくださいよ。」
「今まで通り接して欲しいです。」
陽葵は、茶化すように言うのではなく
お願いしますと念を押して言った。
「これはこれは困りましたね。」
「でも、承知しました。」
「これからもこれまで通りですね。」
慎さんは、陽葵の言葉を汲み取り
ゆっくりと立ち上がり
いつもの優しい微笑みをしながら言った。
「はい!」
「私はいつまでも」
「陽葵であり天龍です。」
その言葉には嘘も本当もないのだろう。
「さぁ、皆さん」
「こんなに寒い外にずっと居るのは体に悪いですよ。」
「皆さんが無事に帰ってこれたので」
「今回はご馳走を用意ているのです。」
「早くお家に入りなさいな。」
「ご馳走!」
「おい!みんな早く入るぞ!」
「こんな時だけ蓮は、率先して動くのようね。」
「うっせぇ!」
司の奪還も無事終わりいつも通りの日常が帰ってきて
みんなの中には笑いで溢れていた。
「みんながみんなで良かったよ。」
そんな様子を最後まで後ろで見つめていた陽葵が司にそう呟いた。
「こんなことを隠してた私を」
「みんなは当たり前のように受け入れてくれた。」
「そうだね。」
「これって幸せすぎることだよね。」
陽葵の話す言葉には力がなかった。
まるでずっと抱えていた重りが外れたかのような。
軽すぎて優しく吹く風に流されてしまいそうな
そんな声だった。
「ああ」
「でも」
「あのことは言わないのか?」
司は、陽葵の方を見ながら言った。
「言わないよ」
「言ってどうなるって言うの?」
「みんなを不安にさせたくない。」
「でも、」
「大丈夫。」
「自分のことは自分でどうにかする。」
「それに、まだ時間もあるしね。」
「私はまだのまれない。」
「だから、今はあの人をどう倒すか考えなきゃ」
「分かった。」
「ただ、助けて欲しくなったらすぐに言って」
「...」
「分かった。」
司と陽葵の間ではまだみんなに伝えられない秘密がある。
その秘密に、陽葵の弱点が大きく関わっていることをみんなはまだ知らなかった。
─────────
「国王陛下」
「報告します。」
「終契監獄から」
「勇者」
「龍真様が逃亡致しました。」
「そして、逃亡は何人かによって行われたかと思われます。」
「追跡しますか。」
兵士の1人が夜の暗闇の中
そう呟いた。
暗いせいなのか
はたまた元々そう言った雰囲気なのか
この場所だけが重く冷たい空気が漂っていた。
「いいや」
「お前らは何もしなくて良い。」
その空気を作り出しているのは
間違えなく今喋った。
この国の最高権力者である千国王だ。
「っ、ですが!」
兵士は、国王の思い言葉にひれながらも反論しようとした。
「なんだ?」
「お前は私よりも高い地位にいるのか?」
「いいえ」
「滅相もございません」
「なら、私の命令に従えば良い」
「虫のように何も考えず」
「ただ、私の言葉全てに従え。」
「承知しました。」
「下がれ」
「はいっ!」
兵士は、言われるまま
国王に目を合わせないよう努力して
部屋を後にした。
──ドン
「やっと来たか」
「天龍」
「楽しみにしていたぞ」
「お前の敗北に絶望すり顔を見ることができるのを」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
投稿時間が何日も遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。




