196.天龍様はどこにも存在しない?
「晴日さんが!」
「夢描しー!」
「ご、ごめん」
「でもなんで晴日さんが?」
「それが、よく分からないのよね」
晴日さんは、恋歌の顔を見たことがあるが、
進化した幻想の面のおかげでバレていないはず。
「あの方達も一応は騎士」
「ご令嬢を助けるのは言ってしまえば」
「当たり前のことですわよ」
恋歌は、はギリの悪そうな顔をした。
「でも、私の顔をじっくりと見られた時は」
「流石に驚きましたけれどね」
「えっ!」
「それ大丈夫なの?」
もしかしたら面の効果が効いていなかったとか?
「そのあとは、何事も無かったので」
「バレてはいないと思いますわよ」
「ただ、」
恋歌が、下を向いてしまった。
さすがの恋歌でも、怖かったのかもしれない。
近くにいた花が慰めようと、
「あのクソ野郎殿方に1発ほど」
「腹パンチを喰らわせてやりたかったですわ!」
なんだよ。
怖がっていなのではなくて
悔しがっていたのか。
「とりあえず進もうか」
「ここから先は」
「人があまり通りたがらない場所だけど」
「油断はダメだよ。」
「ここから先ってどこに行くの?」
「暗くて見えずらいけど」
「あの扉の向こうに」
「地下へ続く長い階段があるの。」
「何個か階は、あるんだけど」
「終契監獄は、一番下の階みたいだよ」
陽葵がそう説明した。
──────
―カツカツ
3年B組計25人が階段を降りていた。
「それにしても、」
「不思議なことばかり起きるのね」
花が階段を降り疲れたのか話をした。
「そうだね。」
「もしかしたら天龍様の顔を見れると思ったけど」
「今年も欠席みたいだったし。」
りかの言う通り
大広間で、国王が座る席の両側とも空席だった。
1つは、亡くなられた王妃様の席だろう。
もう1つは、天龍様の席。
「そういえば俺」
「さっき、聞こえちゃったんだけどさ」
「天龍様のことで」
蓮が、怖い話でもするかのような
声のトーンで話し出した。
「天龍様のこと?」
そこに乗ったのは陽葵だった。
「そう。」
「貴族の間では」
「天龍様は、いないんじゃないかって言われてるんだってよ!」
「そうなの!」
夢描は、あくまで貴族の間の都市伝説みたいなものだと言うのに
本気にしてしまったようだ。
「ああ、」
「最初は、本当に出席できないのをみんな心配してたみたいなんだけどさ」
「流石に10年以上姿が見えないと」
「いないんじゃないかって」
確かに、国の象徴であるお姫様の姿が見えないとなると
国民は不安だろ。
「今はそんな風に言われてるのね。」
「でも、そっちの方がいいかも?」
花が、スカートの裾を持ち上げ階段を降りながら言った。
「昔は、違うの?」
美月が、質問を投げた。
「うん。」
「昔は、天龍様は病弱だったから。」
「体が持たずに亡くなられたんじゃないかって」
「えっ?」
それだったら、最初からいなかった説の方がいい気もするかもしれない。
「あくまでも、そうかもって話しよ」
「王様は、王妃様と天龍様のことを愛していたから」
「新しい家族を作らないんじゃないかっていう話もあるのよ。」
王族にとって、跡取りがいないのは致命的だろう。
仮に、天龍様が存在していたとしても
体が弱いのでは跡取りは望めない。
それなのに、新しい家族を作らないのは
愛していた以外に理由が存在するのだろうか。
「そんな綺麗なお話なら良かったのにね。」
その悲しみの声は、誰の耳にも届かなかった。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。




