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190.潜入

「よ、ようやく着きましたわ。」


蛍は、お城の入口の前に立って

安堵の声をあげた。


「それでは、行きますわよ」


高貴な人になろうと

恋歌の口調を真似してみているが

いつもと違いすぎて

夢描の口元がプルプルと震えている。


「時描行きますわよ」


お城に入ってからは、

万が一に備えて名前を変えて話すようにと

事前に陽葵から指示があった。


時描(ときえ)とは、夢描の事だ。


「承知しました。」

「お嬢様」


夢描は、陽葵の言葉に気持ちを切り替えた。


「海月も、息は整いましたか?」


海月は、蛍のことである。


「ええ」

「お構いなく」

「龍姉様は、お疲れではなくて?」


龍というのはもちろん

陽葵の事だ。


その他にも凪は、楓

直樹は、金樹(きんじゅ)である。


それぞれ固有魔法から取ったもの

元の名前と似ているものから来ている。


「金樹あれを凪に渡してちょうだい。」


「はい」


直樹は、楓に金のカードを渡した。


このカードがあれば

この城の中に入れる。


「それでは、行きますわよ。」


陽葵は、そう言って足を踏み出した。


──────

入口の前には

兵隊が数人武器を構えながらたっていた。


近づくほど鼓動が高まる。


陽葵は、臆することなく

近づいていた。


「失礼致します。」


兵隊の中で1番位の高そうな

男が5人の前に来た。


「中に入れるのは」

「国王陛下からの招待状」

「金色のカードをお持ちになっている方のみと」

「させていただいております。」

「拝見してもよろしいでしょうか?」


男は、表上では笑顔で話しているが

その目に一切の隙がないように思えた。


「ええもちろんですわよ」


陽葵も、また同じような笑顔を見せて

楓に目線をやった。


「こちらでございます。」


楓が丁寧にカードを出した。


「...」


騎士はカードを見つめた。


「はい。」

「失礼致しました。」

「どうぞ中へお入りください。」


騎士は、そう言って

前から退き扉を開けた。


これは、OKということだろうか。


みんなは、笑顔で中へと入っていたが内心

吐きそうなほど緊張していた。


「龍姉様これからどうされますか?」


だが、いつまでも緊張している訳にはいかないので

5人は次の行動に移った。


「先に、入っている方と合流をしたいのですが」


陽葵は、そう言って

不審がられない位に辺りを見渡した。


「おい、」


背後から嫌味混じりの声が飛んできた。


「はい?」


蛍は、驚いて間の抜けた声を出してしまった。


「なんだ今の声」

「本当に貴族なのか?」

「しかも、見たことない顔だぞ?」


男の身なりは整っていて

貴族であることは容易に想像できた。

もしかして、私たちの方が下だとわかっているから

バカにしてきているのではないだろうか。


「っ、」


蛍は、いきなりの事に何も言えなくなってしまった。


「なんだよ」

「黙りか?」

「これだから女は」


男は、笑って言った。


「大変申し訳ありません。」

「妹は初めてこういう場に参加されていただきまして」

「少々緊張しているようなのです。」

「不快な思いにさせてしまったこと」

「深くお詫び申し上げます。」


陽葵は、そう言って

頭を下げた。


「なんだよお前」

「意外と綺麗な顔してんじゃん」


男は、私たちが下に回っていい気になったようで

ふしだらに陽葵の体を触り始めた。


ちなみに、

今は、全員幻想の面の改良版をつけているため

顔が割れる心配はない。


「ちょっと、」


陽葵も、まさかこんなことをされるとは思わず

男から距離を取ろうと

押してみたが

力の差があり

逃げることができない。


「別にいいじゃねぇかよ」

「空き部屋があるからさ」

「そこでゆっくりとお茶でもしようぜ?」


ゆっくりお茶をする気は微塵も感じられない。


蛍は、ここまでかと思い

剣を作ろうとしたその時だった。


「あらあら」

「まだ、おダンスのお時間ではなくってよ?」

ここまで読んでくださってありがとうございます。

次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。

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