189.はぁはぁはぁ
「てか、」
「本当に馬車とか必要ないの?」
「浮かない?」
蛍は、不安そうに言った。
今回の作戦で陽葵は、馬車を作るとは言わなかった。
元の世界で描かれる物語では、
貴族たちが華やかな馬車に乗り
城の門か入口の前まで乗っていくものだと考えていた。
「私も、そうだと思ったんだけどさ」
「どうやら、今回は馬車の使用は不可みたいでさ。」
陽葵は、そう言って謎の1枚の紙を取り出した。
「それ何?」
「街のポスターの切れ端」
「それ切っていいやつなの?」
「えっ、」
「分かんない。」
「大切だと思って取ってきちゃった。」
陽葵は、今更自分の行動が行けなかったのか不安になっていた。
「もう、陽葵って時々そういうことしちゃうよね」
「そういうことって?」
「常識を覆してくるみたいな。」
その行動で陽葵は、いつも菜々や空に怒られていた。
「でも、なんで今回だけ」
「馬車はなしになったのかな?」
国王の命令だから
どんなに高貴な貴族であっても
反論することはないだろうが
「おい、」
「楽しんで話すのはいいが」
「そろそろ」
「役に入った方がいいんじゃないか?」
楓が言った。
お城の大きな城門が見えてきたからだ。
「うわぁ」
夢描が、思わず恐怖の声を漏らした。
城は、真っ白で汚れ1つ見当たらない。
構造も綺麗で何も知らなかったら
写真を撮りまくっているところだろう。
だが、ここに住んでいるものの心はこんなに綺麗では無い。
だからだろうか、この城から邪悪な気が溢れている感じがして止まないのは。
「よし!」
「行くぞ!」
陽葵は、思いっきり拳を上に挙げてやる気を出した。
「ちょっ、」
「その格好でやんないでよ!」
周りに誰もいないから良かったが。
―気のせいだろうか。
陽葵の拳が微かに震えていたのは。
──────
「はぁはぁはぁ」
蛍が重いドレスを引きずり
歩きずらいヒールで擦れている足を隠しながら
汗をかき荒い呼吸で歩いていた。
「もう、なんでこんなに遠いの?」
蛍が息を切らすとは珍しい。
それも、そのはず。
城門を抜けてから
ここまで10分歩き続けている。
周りにちらほら
貴族らしき人とその召使が優雅に歩いている。
きっと、あの人たちは日々あの格好をしているから疲れないのだろう。
でも、蛍はいつも身軽な格好を好むから。
余計に疲れてしまうのかもしれない。
「あれ」
「大丈夫?」
「休憩する?」
陽葵は、何故か平気そうだ。
「陽葵は、大丈夫なの?」
「うん!」
「意外と慣れてるから、」
「どこで慣れるんだよ!」
蛍が疲れで情緒が不安定になっているようだ。
「ってごめん」
「よし行こうか」
「休憩しなくていいの?」
「大丈夫」
「早く助けに行きたいでしょ?」
「っ、」
「うん!」
蛍の言葉に陽葵は幸福そうに答えた。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。




