187.作戦実行の前夜〜生きていく意味って?〜
「てことで」
「春樹に作って欲しいのは」
「こんな感じのカードなんだけど」
陽葵は、紙とペンを使って
カードの形や刻まれている言葉を見せた。
「意外とシンプルなのね」
未来は、陽葵の描いたカードのデザインを見て言った。
「この世界は発展が著しいからね」
「細すぎたら作れないんだよ」
金属が、取れない今失敗が許されないのも理由の一つだろか。
「これなら俺様は、ちゃっちゃっと作れるな!」
春樹は、胸を張って言った。
「ほんと!」
「やっぱり春樹は、最高だね!」
「そうだろ!」
「そうだろ!」
──────
「金魔法」
「金黎」
「俺様に従え!」
春樹は、魔法を唱えた。
なかなかに偉そうだが
ーピッカーン
春樹の、手の内が金色に光を放った。
光が少しづつ消えていき
最後にはカランと金属がなにかにぶつかるような音を出して。
光は、なくなった。
「ふふふ」
「俺様が作ってやったぞ」
春樹は、そう言って
自分の掌を開いた。
その中には、陽葵が描いたまんまのカードがちょこんと置いてあった。
「いや、」
「普通にすごいんかい」
蓮は、体を後ろに倒しながら言った。
「本当ですわね」
「実物を拝見したことはないですけど」
「本物そっくりですわよ!」
恋歌は、言った。
「そうだろ!」
「やっぱり俺様は素晴らしいんだ!」
「そうだねぇ」
──────
「よし、これで城の中に入ることは出来るね!」
「本当にこれでいいのか心配でしかないけどね」
陽葵は、なぜこんなに自信満々に言えるの分からないけど。
「それより、よくこのカードのこと知ってたね」
花が、ぼそっと呟いた。
「こんなのがあるとか」
「私でも知らなかったよ」
花は、一般人だから知らなくてもおかしくない。
でも、陽葵はなんで知っていたのだろか?
「それは」
「図書館に置いてあった本に載ってたんだよ」
陽葵は、そう説明をした。
「そんな本読んでたっけ?」
蛍は、陽葵のそばにずっと居たからか
陽葵の言葉に不信感を持った。
「読んでたよ!」
「途中蛍が本に飽きて」
「ぼーとしてる時にね!」
「それは、ごめんなさい」
蛍は、自分の記憶力の問題と分かって恥ずかしそうに言った。
「それじゃあ」
「作戦の続きを話すよ」
「城の中に入った後のことを」
──────
『司奪還の前日の夜』
―キィー
静まり返った部屋に
陽葵は、一人で天井を見ていた。
明日は、いよいよ司を助けに行く日
天契祭
「あれ?」
「眠れないのですか?」
そんなところに来たのは慎さんだった。
「慎さんこそどうしたんですか?」
「歳を重ねるほど」
「よく眠れないものなんですよ。」
慎さんは、そう言って陽葵の隣に座った。
「...」
だが、2人の間に会話はなかった。
「なにか飲みますか?」
「暖かいものでも飲んだら」
「眠くなるかもしれませんよ?」
慎さんが、立ち上がろうとした。
「大丈夫ですよ。」
「別に眠れない訳じゃないんです。」
「ただ、明日が少し怖くて」
陽葵が、慎さんに伝えているはずなのに
その声は、凄く小さかった。
「そうですか。」
慎さんは、その言葉を深く追求しようとはしなかった。
「司が、いなくなってから」
陽葵は、そんな慎さんの判断に安心したのか
体制を変えて
腕に顔を置きながら
話し続けた。
「自分の弱さがもっと分かってしまったようで」
「今まで、自分は強くなれた気でいました。」
「そんなことないのに」
陽葵の声はどんどん小さくなる。
「明日、本当に司を助けることが私に出来るのか」
「正直分かんなくて」
「自信がないんですよね。」
「みんなの前では」
「あんなに言っておいて」
「言えば言うほど」
「不安が増えていって。」
陽葵は、自分の心に溜めていた本音をこぼしていた。
「もし、司を助けられなかったとして」
「司の空っぽになった姿を見たとしたら」
「今度こそ」
「私は私じゃなくなってしまう」
自分の腕を血が止まるほど強く握った。
「慎さん、私はどうして生まれてきたのですか?」
「私は、生きる価値がない」
「なのに死ぬことも出来ない」
「こんな弱い私に」
「そうですよ」
陽葵が、言葉を続けようとした時
ずっと黙って聞いていた慎さんが言った。
「私も、妻と離れることになった時」
「生きる意味を無くしたように思いました。」
「死ぬことも簡単だと思った。」
慎さんは、ゆっくりと言葉を募った。
「でも、」
「私はその選択をしなかった。」
「生きている限り」
「明日が、良い日であると願うことができる」
「生きた分だけ」
「様々な感情に出会える」
慎さんは、そこまで言って
陽葵の方を見た。
「陽葵さんは、」
「今生きていてに少しでも」
「ほんの少しでも」
「幸せを感じることはないのですか?」
陽葵は、その言葉を聞いて驚いた。
「ほんの少しでも?」
「ええ」
「...」
「幸せですよ」
「昔に比べたらそれは随分と」
「でも、」
「さっき、陽葵さんは」
「自分が司様を助けると言っていましたが」
「あなたの周りにいる人は」
「苦しんでいるあなたを見て」
「何もしないで突っ立っている人ですか?」
慎さんは、今までに聞いた事のない声の張り上げ方をした。
陽葵は、顔を下げ今までの事を思い返した。
「そう」
「そうですよね」
「きっと、笑いながらみんな手をさし伸ばしてくれます。」
「ありがとう慎さん」
「私明日頑張ってきます!」
「たとえ、」
「あのことがみんなにバレても」
陽葵は、そう言って立ち上がり。
慎さんに頭を下げてから自室へと帰った。
「大丈夫ですよ。」
「陽葵さんには、私たちが着いているのですから。」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。




