177.変わり始めた当たり前
今日もまたいつもの朝が来た。
この世界に来てからもう何回目の朝か分からない。
ここに来て約2年
本当だったら今頃
みんなそれぞれ大学に行く者。
社会へと足を踏み出した者。
もしかしたら、それぞれパートナーを見つけた者もいるかもしれない。
けれど、現実では非日常な魔法を使い
王族という大きな敵に向かい打つため
日々訓練を絶やさない。
異世界に来てから
幾度となく命の危険を感じた。
泣きながら帰りたいと願った。
でも―
今私たちは
普通の生活では体験することが絶対に無かったことをしている。
この歳になってもなお
仲間と呼べるみんなとひとつ屋根の下で暮らしている。
みんな心のどこかで
『帰らなくてもいい』
そんなことを思う日が増えていった。
──────
「おはよー」
「はよー」
みんながこの世界に来て1番成長できたと言えるのが
アラームがなくても起きられるようになったことだろう。
最初の頃は、アラームなしでも起きられる人が
起きられない人のことを叩いたり大きな声で叫んだりとなかなかにハードだった。
司は、まだ起きられていなかったが。
「司一人で起きられてるかな?」
「お前は、お母さんか!」
蓮が、朝からツッコミをかました。
「お前らはなんで朝から」
「そんな元気なんだよ」
「楓は相変わらず嫌味しか言えないの?」
さなも相変わらず突っかかるなと思った。
「おやおや」
「皆さんおはようございます」
そんな場面を微笑みながら歩いてきた慎さんが言った。
「おはようございます!」
みんなは、元気よく返事をした。
「今日は、国立図書館に行く日ですね。」
「はい」
「それなら、」
「これを付けて行きなさい」
付ける?
慎さんは、そう言って見覚えのあるものを出してきた。
「...」
「それって」
「幻想の面!」
そう慎さんが、持っていたのは司が前つけた幻想の面だった。
「顔を隠せる方が何かと安全だと思いまして、」
慎さんは、そう言った。
「これは、どうして?」
前の話だとこれは結構良い値が張ると聞いた。
見たところだとその面は6つあるみたいだが。
「それは、」
「親切な知り合いにタダでいただきました。」
「大丈夫ですか?」
「変な契約とか」
「壺と買わされませんでしたか?」
空が心配そうに言った。
「そんなことはされてませんよ」
「ただ、その方は」
「ごめんなさい」
「とだけ言っておりました。」
「ごめんなさい?」
私たちは、誰かにそんなことを言われるようなことをされたのだろうか。
確かに翼の騎士団にはされてきたが
あいつらが、こんなのを貰うなど絶対にありえない。
ただ、慎さんがわざわざ名前を伏せているのだ。
深堀りは良くないのだろう。
「ありがとうございます。」
陽葵は、それだけ言って慎さんから
幻想の面を受け取った。
「じゃあ行く人決めて早く行かなきゃね」
──────
「うう、」
「まさか」
「入場料にお金がかかるなんて」
陽葵が、軽くなってしまった財布を握りしめながら言った。
「まぁまぁ」
「結局行かなきゃいけないんだから」
そんな陽葵を慰めたのは
蛍だった。
前にも説明をしたが
幻想の面の弱点は装着後一切魔法が使えなくなる。
そのため、生身でも戦える蛍がついて行くことになった。
「うん」
陽葵は、そうだよねと言った。
―「へぇ」
―「この国には、見たことの無い病気も存在するのね」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。




