171.未来の過去.その2
「私のお母さんの影響なんだ」
未来は、自分の手をじっと見ながら答えた。
「そうなんだ。」
「じゃあ、お母さんは洋服関係のお仕事をされていたんだね。」
陽葵は、そんな未来を見ながら優しく言った。
「うん」
「しかも、結構有名でね」
「お客さんも、お母さんの新作の洋服が出たら」
「すぐに買いたいって言う人が結構いたりして」
「そっか」
「すごいお母さんだね。」
未来は、静かにお母さんの活躍を嬉しそうに語った。
ただ、そういい終わった後
未来は、また下を向いてしまった。
「でも、」
「お母さん、運がなくってさ」
「交通事故に合っちゃって」
「その時に頭打ったみたいでさ」
「両肩が自由に動かせなくなっちゃったんだよね」
未来は、なんでもないような口ぶりで話すが
発する声は、少し震えているように感じた。
「うん、」
陽葵は、そんな未来にかける言葉が見つからなかった。
「そこから、お母さんに服作りを教わったの」
未来は、そう答えた。
「そうだったんだね」
「じゃあお母さんは幸せだっただろうね」
陽葵は、素直にそう言った。
「幸せ?」
未来は、陽葵の言った言葉の意味が分からないようだった、
「だって、」
「お母さんは、自分の娘に」
「服作りを教えて」
「その娘が楽しそうにやってくれて」
「自分の夢になったって言ったんでしょ?」
「それなら、きっと嬉しいはずだよ。」
陽葵は、笑顔で当たり前のことを言うように言った。
「でも、同じ道を知ってる分心配なこととか」
「不安に感じることもあると思うけど」
「やっぱり幸せだと思うよ?」
「だって、未来のお母さんはそのお仕事が」
「大好きだったでしょ?」
「なら、幸せだったはずだよね!」
陽葵は、笑いながら言った。
「なにそれ、」
「変なの」
「ふふ」
未来も、そんな陽葵に引っ張られるように笑った。
「へ、変!」
「確かに、断定はおかしいか。」
陽葵は、またやってしまったと自分の頭を抱えた。
「ううん」
「確かにその通りかもしれない」
「服作りができなくなったお母さんを見て」
「みんな、可哀想とか」
「服作りをしていたからこんなことに?」
「なんて、意味の分からないことを言ってくる人も居たの。」
未来は、その言葉に何度も胸を痛ませたことだろう。
たとえ、自分のことでなくとも
自分の大切な人がそんなことを言われていたのだから。
「そっか、」
「その言葉が余計に自分たちを苦しめるんだよね」
陽葵は、まるで経験したことのあるかのような口ぶりで言った。
「でも、教えてくれるお母さんの顔は」
「いつも笑顔でね」
「楽しそうにしてたから」
「私も服を作ることは楽しいんだって」
「気づかせてもらったの。」
未来は、きっとこの気持ちを誰にも話したことがないのだろう。
さっきのお母さんの話はよくまとまっていて分かりやすい説明だった。
でも、今度は途切れ途切れで言葉に詰まりながら話していた。
「それは、いいことだよ!」
「だから、未来はあんなにも教えるのが上手いんだね」
陽葵は、今まで通りの声と態度で言った。
「もし、元の世界に帰れたら」
「ミシンの壊さないやり方を教えてもらわなきゃ」
「それは、お母さんでも無理かも」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。




