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147.陽葵ではない誰か

―パタンッ


陽葵がいきなり倒れてしまった。


魔力切れだろうか。

だが、吐血するまで無理をしていたのだろうか。


「陽葵!」


司が、心配そうに叫んだ。

だが司は、逃げようとはしない。


陽葵は、無理やり上半身を起こして

口の周りに着いた血を拭った後に


「なんで、」

「なんで今なの?」


悔しそうに言った。


陽葵は、もう一度右腕をあげようとしたが

力が出ないのかぐらんと下がってしまう。


そんなことをずっと続けている陽葵を見て

司は、言った。


「陽葵、もう大丈夫」

「もう無理をするな」


その言葉は心の底からそう言っているように聞こえた。


「でも...でも、」


陽葵は、そう言って無理やり体を上げようとしたが


「陽葵!」

「もうやめろ!」


司は、大きな声で言った。


「うっ、」

「まだ」


陽葵は、司の言葉を無視して立ち上がろうとしたが


「痛っ」


でも、無理だった。


「もう、無理しちゃだめだよ」


さすがに見ていられなくなった

夢描が、止めようと陽葵に近づいた瞬間


「近づかないで!」


陽葵が叫んだ。


「えっ?」


あまりの声の大きさに夢描は驚き後ろへと下がってしまった。


「ごめんね」

「驚かせて」


陽葵の顔を見ていなくてもわかる

これは、悲しんでいる声だ。


「でも、」

「また、」

「大(・)切(・)な(・)人(・)を(・)守(・)れ(・)な(・)い(・)の(・)は(・)」


「陽葵?」


目の前にいるのは陽葵のはずなのに一瞬

誰か知らない人が言ったかのような気持ちになった。


「ははは」

「なんて感動的なんでしょうか」


不気味な笑いをする男の声がした。


「なんだよ」


陽葵は、今まで聞いた事のない低い声をした。


「これは恐ろしい」

「ですが、」

「私たちも、時間がないのですよ」

「ここらで最後にしましょうか。」


男は微笑みながら言った。


最後にする。


その言葉は、恐怖そのものだった。


「おい、傷つけるようなことしたら」

「お前を殺すぞ」


司は、何となく男がすることが分かったのだろう。


「勇者様も怖いですね」

「私の仲間はいないのでしょうか」


当たり前だろ。

その言葉が口から零れそうだったが

それを言ったら命の危険があるから言わなかった。


「では、」

「ここで」

「戦いはやめにしましょうか」


「は?」


ここで、何を言い出すのかと思ったら

戦いを辞める?

まず最初に喧嘩を売ってきたのはそっちではないのか?


「ここで辞めるのであれば」

「私は、あなたたち」

「そして、勇者様をお城にお連れしたあとも」

「何不自由なくお世話いたします。」


「結局司が連れていかれるじゃない」


「えぇ」

「そうですね」

「私は、別に戦ってもいいのですよ?」

「でも、」

「ねぇ」


バカにした目

まるで私たちは勝ち目がないだろと言われているような。


でも、それもまた事実


今も私たちは第三者として戦いが終わるのを待っていた。


「分かったそれでいい」


そう言って了解したのは司だった。


陽葵は、司の言葉に反論はしなかった。


もう戦える力が残っていないのかもしれない。


「しかし、残念ですね」


男は、気味悪げに微笑み言った。


「あなた」

「えっと」

「陽葵と言いましたか?」

「もう1つ部屋があったら」

「連れていったのに」

「あなたの力は私たち」

「翼の騎士団の糧となるはずですから」


そう言って男は司を連れ入ってきた穴へと姿を消した。

男は、仲間であった部下の死体を踏みながら歩いていった。


残った翼の騎士団は結局

あの男と晴日の2人だけになってしまった。


そういえば男はさっき部屋があればと言った。


お城なんだからたくさん部屋はあるはずではないだろうか?

命令ではないからなら分かるが何か引っかかるような。


そんなことを考えていたら


ある男が口を開いた。


「勇者様は、これから」

「終淵監獄(しゅうえんかんごく)に入ることになるだろう。」

「詳しく知りたいのなら」

「国立図書館へ行け」


なぜ教えてくれたのだろうか。


晴日は、一体誰の味方なのだろうか。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。

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