146.最後まで諦められなかった。〜風魔法のはずでは?〜
司は、翼の騎士団に捕まり
抵抗しようとも考えていなかった。
もし、すれば私たちが危険な目に合うからだ。
私たちは、ただひたすらに司の後ろ姿を見ることしか出来なかった。
―ただ一人を除いて。
「風魔法」
その人は、ふらふらとした足取りで翼の騎士団へ歩いていった。
「え?」
体の至る所には血がついてある
自分の血だ。
見るだけで痛いのがわかる。
それでも、その人は歩いていた。
さっきまで倒れていたはずなのに
司も、諦めていたのに
たった1人だけ
最後まで諦めず
魔法を唱えた。
その名も
「陽葵!」
司が陽葵を止めるようにさけんだ。
だが、その声は陽葵には届かなかった。
まるで、陽葵が何かに取り憑かれているかのように
血に染った足を前に
運び続ける。
「風魔法」
「葵嵐の楽園」
力の入っていない腕を無理やりあげ
翼の騎士団を狙った。
この形の魔法
「上級魔法、」
司が静かにそう呟いた。
上級魔法?
そういえば前夢描が使っていた。
でも、魔法を使ってこなかった陽葵が使えるような魔法ではないはず。
聞き間違えかもしれない
そう思いたかった。
スッ…
陽葵が魔法を唱えた瞬間
微かに震える陽葵の右手からいくつかの光が生まれた。
美しい光だった。
思わず見とれてしまうほどに
「でも、なんで光?」
りかが思わず言ってしまった。
陽葵の固有魔法は風魔法のはず。
ぽわぁん
その光はゆっくりと翼の騎士団に近づいた。
「うわぁ、」
翼の騎士団も自分の仕事を忘れたように光を目で追いかけていた。
だが、何となくわかる。
翼の騎士団は、この光の惚れ込んでいるのではない
操られているのだと。
「どうですか?」
「綺麗ですよね」
陽葵が口を開いた。
その声は、優しく暖かいものだった。
ただ、どこか違う。
私たちにいつも向ける声ではない。
「触れてもいいですよ」
「きっとあなたたちにとって幸せなことに繋がりますよ」
胡散臭すぎるが翼の騎士団はそんな言葉通り光に手をさし伸ばした。
スっ、
光に触れた騎士の指先に
一筋の赤い光が走った気がした。
次の瞬間
ブチッ
「ぎゃぁぁぁぁぁ」
指が空中に舞った。
そして、翼の騎士団の1人が自分の指が切れた痛みでもがき苦しんでいる。
「...」
仲間であるはずの他の騎士団は無視をして
続きと自ら光に触りに行き
指を飛ばす。
「な、なんだよこれ」
味方ながら恐怖を覚えてしまった。
「陽葵、」
「もういいよ」
司も苦しそうな顔をしている。
だが、陽葵は止まらなかった。
そして、どんどんその光を増やして言ってる。
「あなたにもう二度と」
「仲間を傷つかせない」
「そして、ここでくたばれ」
そう言った後光はより輝いた。
そこで、ようやく理解した。
これは、紛れもなく風魔法だということを
光の玉のように見えるあれは
あまりにも大量の魔力を帯びた風が圧迫されたことによりそう見えているだけだ。
だから、認めざるおえない。
陽葵が使っているのは上級魔法だ。
さらに、そんな人間離れした魔法を何個も作り出しているのだ。
仲間でよかったと初めて陽葵に思った。
──────
「ぐぁぁぁ」
段々と翼の騎士団が苦痛に負け倒れて行った。
酷い者は片腕を無くしもがいている。
「お前たち何をしているんだ。」
ただ、例外もいた。
不気味な笑みをする男と晴日だった。
「なんで、あいつらには効いていないんだよ」
直人が言った。
「そうでしょね」
「私に、魔法は効きませんから」
なんだと
それも、あいつの魔法の1つなのか?
「くそっ」
さすがの陽葵でもそれは想定外だったのだろうか。
男の周りに光を集めても操れない。
「邪魔ですね」
パシっ
「なっ!」
素手で消してしまった。
上級魔法だぞ
あいつは思っている以上に手強いかもしれない。
でも、人数的には今こちら側が有利だ。
このまま、陽葵が頑張ってもらい
司を取り戻せれば
勝利はあるかもしれない
「ぐはっ、」
―パタン
「陽葵!」
いきなり陽葵が口から血を吐いた。
ふらりと身体が傾き
地面へと倒れてしまった。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。




