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145.その風を

「陽葵!」


いち早く陽葵の元に駆けつけた司が陽葵を起こすように体を揺らしたが反応はなかった。


「くそっ!」


司は、今にでも泣きそうな顔を見せた。


「あれあれ」

「もう、終わってしまいましたか?」


さっき馬鹿にしてくるような声がまたした。


「誰だ!」


司は、陽葵を守るようにした。


「期待はずれですねぇ」

「楽しませて欲しかったですよ」

「ははは」


まただ、また馬鹿にするような声。


「何言ってんの」


夢描も、その声で正気に戻ったことによって

怒りが増したのかキレながら言った。


「私はおかしいことを言いましたか?」

「一瞬で倒れてしまって」

「なんの面白みもないでないですか」


未だに姿が見えない。

だが、声からして本当にそう思うっていることはわかる。


「面白みもないって」

「あんただって」

「ずっとこそこそして」

「倒されるのが怖くて出てこないだけじゃないの!」


「ゆ、夢描」


あまりにも、感情的になっている夢描をりかは落ち着くように言った。


「ははは」

「あなたたちみたいな実力が」

「私に反発とは」


話す度に嘲笑うような声をしていたのに

静かになったと思ったら


急に


「全く面白くない」


冷たく低い声

背筋が凍るような声。


「っ、」


思わず呼吸を止めてしまうほど


「では、」

「私の姿を見せてあげましょう」


男は、そう言った。


「ど、どうしよう」


夢描は、ようやく自分がやってしまったかもと後悔をした。


「ですが、」

「相手の姿が見えた方が」

「戦いときはいいのではないでしょうか」


恋歌は、最低限声を抑えて夢描に言った。


コツ...コツ...


軽い足取りがした。


方向はズグーラが出てきた穴から。


「こんにちは」


その穴からゆっくりと歩いてきたのは


メガネをかけた緑髪の男だった。

緑髪は長く1つの三つ編みで束ねられていた。


身長は高く全体的にすらっとしていて

どちらかと言うとモデルのようなスタイルだった。


だが、

表情は、不気味だ。


人を心の底から馬鹿にしているような


人を人として見ていないような。


「派手に暴れたようで」


男は、司がズグーラと戦った痕跡を見て言った。


「誰だ」


司は、低い声で言った。

完全に切れている。


「おや、なぜそんなに怒っているのですか?」


こいつは、何を言っているんだ?

さっき自分が、何をしたのか覚えていないのか?


「れ、恋歌」


夢描が、恋歌に向かってなにかを言った。


「あの男が身につけてる」

「マントとブローチ」


震える声で口に出した。


その言葉でみんなは絶望を覚えた。


「翼の騎士団じゃない」


──────

「麗しい勇者様」

「探しましたよ」


不気味な笑みを浮かべて言った。


「っ!」


その場にいるほとんどが息を飲んだ。


翼の騎士団にバレた。


「なんの事だよ」

「俺たちはここに迷い込んだだけだ」

「第一」

「勇者は今でも城の中にいるんじゃないのか?」


直人は何とか言い訳ができないか試した。


「何を馬鹿なことを言っている」


男はギロッと直人のことを睨んだ。


「証拠だってあるじゃないですか」

「そこで倒れてるズグーラ」

「1人で倒していましたよね?」


これは、最大の証拠だ。


「それに、倒す時氷魔法と雷魔法」

「どちらも使っていましたよね?」


こいつ、その時もいたのか。


「それに、ここの入口には」

「立ち入り禁止のテープがしっかりと貼られていました」

「それ何迷って入った?」

「もう少し面白い嘘を言って欲しいですね」


終わりだ。


司が魔法を2つ使っている所を見られたし。

ここで、嘘をつき続けても少しの時間稼ぎにしかならない。

稼げたとしても魔力の尽きている司ではまともに魔法も使えない。


「ああ」

「そうだな」

「俺が勇者だよ」


司もさすがに無理だと諦めたのか

自白した。


「で?」

「俺に何の用だ」


「それはですね」

「勇者様をお城にお戻りするよう」

「千国王からご命令がありまして」


男は、また不気味な笑みを浮かべながら言った。


―千国王


その名を聞くだけでも怒りが湧いてくる。


「もし、行かないと言ったら?」


司がそう言った。


「そうですね」


男は司の質問に対して少し悩んだ後に言った。


「勇者様は、ここにいるものたちが」

「無惨になる姿を見たいとは思いますか?」


「ひっ、」


りかが、声出して怯えた。


「いいや、」

「見たいとは思わないな。」


司は、冷静に答えた。


「それでしたら」

「大人しく着いてきて欲しいですね」


男は、そう口にした。


「ですが、念の為です」


パン


男は、1回手を叩いた。


その後


男が入ってきた穴から10人程の腰に剣をさげた騎士が入ってきた。


その全てが翼の騎士団だった。


その中には、晴日の姿もあった。


「勇者様には手錠をかけさせて頂きます」


男の部下らしき人が司から陽葵を引き剥がし

司に手錠をかけた。


「そいつを」

「乱暴に扱うな」


「は、はい」


司は、陽葵のことを投げようとした騎士今まで以上に睨みつけた。


「じゃあ行きましょうか」


男は、クルッと回り帰ろうとした。


「まて!」


直人は、慌てて止めた。


「なんですか?」


面倒くさそうに男は言った。


「俺たちは、連れてかねぇのかよ!」


陽葵達は手錠も何もしない。


「それはそうでしょう」

「あなたたちは弱すぎます」

「いりませんよ」


男は、鼻で笑った。


「くそっ、」


だが、ここで反論することができない。


正直その今の自分たちでは勝つことも戦うこともできない。


「そろそろいいでしょ」

「さぁ行きますよ」


男は、部下に命令をして司を引っ張った。


司は、睨みつけているが攻撃をしようとはしない。


「...」


晴日は、じっとこっちを見ていた。


どんどん

司が離れていく。


「司!」


直人は、叫んだ。

それでも、自分たちには何も出来ない。


誰も動かない


動けない。


痛いほど自分たちの未熟さを痛感する。


みんなが下を向きそうになった。


次の瞬間だった。


―「風魔法」

ここまで読んでくださってありがとうございます。

昨日投稿したつもりが、まさかの投稿ボタンを押し忘れていました……

大変申し訳ありません。

次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。

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