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143.作戦実行その5〜これで終わったはず〜

司は、陽葵の言った60°の方を見た。


そして、ニヤリと笑ったのだ。


まるで、陽葵の作戦が全てわかったように。


「さすが」

「陽葵だ。」


そう言ったあと、司は右手をズグーラの方へ伸ばして声を張り上げて言った。


「風魔法」

「風牙葬送(ふうがそうそう)」


そう唱えた瞬間爆音いや、この世の全ての風を集めたのではないかと思うほど言葉では表せない音がこの狭い空間に広がった。


「ぎゃあ」


来ると分かっていても驚く程に。


「本当に」

「司が唱えたのは」

「中級魔法か?」

「こんな威力上級魔法だろ。」


直人が、言った。


目の前に壁があるはずなのに風の強さがよくわかる。


「これ、壁がなかったら私たち今頃」


りかが、そんな恐ろしいことを言うから足がすくみそうになった。


直人の造った壁がなかったら今頃この鉱山の壁の中だったかもしれない。


「陽葵の作戦すごいね」


夢描が、尊敬の意を込めるように言った。


「まぁ、」

「司がどれぐらいの威力が出る」

「魔法を使うかわかってたからね」


さすがというべきか


司がずっと陽葵を見ていると思っていたが

陽葵も、司をしっかりと見ていたんだな。


「じゃあ」

「あ(・)れ(・)を見つけておいて正解だったね。」


流星が、そう言った。


「そうですわね」

「私まだ、色々な岩などをみたいですから」

「ここでぺしゃんこになることだけはごめんですわ」


恋歌が、元気よく言った。


「ズグーラを撃て」


司がそう命じると風は、一瞬槍のような形になった。


ズグーラは、凍封のせいで1歩も動くことが叶わない。


風はズグーラの心臓を狙った。


グサッ


鈍い音が鳴った。


「ぐゆぁぁぁぁ」

「ぐぅぁぁぁぁ」


ズグーラは、耳を伏せたくなる叫び声を上げた。


「ぐっ、」

「ぎゅっ、」


だが、その声は時間がすぎるにつれて弱々しくついには途絶えた。


「うっ、」


壁で直接司がズグーラを倒すところは見なかったが

陽葵達は今までズグーラのような大きな魔獣を倒したのは


森で出会ったドラゴン以外なかった。


だから、今回のズグーラの最後の声は生々しく聞こえた。


―ばたん


ズグーラが地面に倒れる音とそれに合わせて揺れる地面から戦いが終わったことがわかる。


「終わったぞ!」


司の声がした。

見なくても疲れているのが容易に想像できた。


「お疲れ様!」

「さすが、司だね!」

「無理させてごめんね、」

「って、派手にやったねぇ」


陽葵が、壁から司の方を見た時びっくりした。


「そうか?」

「陽葵のお陰で最低限にできたよ?」


ケロッとそういうことを言うが


現状


司の天井には大きな凹みができている。


そして、ズグーラは口から泡を吹きながら倒れている。


見るからに派手だ。


「それを言うなら」

「僕も頑張ったよ!」


陽葵の、後ろから焦りながら言ったのは流星だった。


「ああ、」

「この岩を鑑定魔法で見つけたのか。」


司の指さすのは天井だった。

大体、60°ぐらいだ。


それは、陽葵が慌てて司に言った角度。


その天井をよく見ると

周りのような土色ではなく

真っ黒でいて内側から緑とも青ともいいだたい光が差し込んでいた。


「あれはなんなの?」


夢描は、あの岩の名前を知らないのだろうか。


「あれはですね」

「神晶石(しんしょうせき)と言いますわよ!」


恋歌が答えてくれた。


「神晶石?」

「聞いたことない石だね。」


「それも、そのはずですわ!」

「この石はこの異世界でしか作ることができないですの!」


恋歌は、石の話になって話す速度がヒートアップした。


「この神晶石は、魔力を沢山含むことによって生まれる」

「上質な鉄鉱石などがざっと数千個集まらないと作れないのですわ!」

「しかも、数千個でできる大きさは」

「手のひらサイズなのですわ!」


恋歌は、天井にあるでかでかとした神晶石をうっとりとした目で見ていた。


「え”、」

「そんなすごいもんがこんな大きさって」

「こいつ、一体どれぐらい集まったんだよ」


直人が恋歌の話を聞いて

この神晶石は、只者では無いことを知った。


「そうですわね」

「この大きさだと」

「少なくても」

「百万はくだらないかと」


直人は、恋歌の言葉を聞いて顎が閉じれなかった。


「しかもね」


流星が付け加えるように言った。


「これぐらいの大きさではないけど」

「ここだけでも」

「両手では数え切れない程の」

「神晶石は、あったよ」


「あっ、」


直人はいよいよ顎の下がる限界を突破した。


「でも、流星」

「よく、神晶石なんか知ってたな」


司が、直人のことをフル無視で言った。


「いや、それがさ」

「僕、1度見た事とか想像できないと探せないから」

「恋歌に、神晶石の特徴を細かく聞いてたんだよ」


「そうですわよ!」

「私も実物を見るのは初めてですが」

「慎さんの私物の本を読ませていただいた時」

「見たことがありましたから」


恋歌は、得意げに言った。


今回ばかりは恋歌の岩好きバカを称えないと。


「でも、なんでわざわざ神晶石なんて探したの?」

「今の装備じゃこれを掘ることなんて無理だよね?」


りかの言葉は正しい。

司の全力の魔法をぶつけても壊れなかったのだ。

こんなこわれかけのこいつらじゃ話にならない。


「今回は、掘るのが目的じゃないよ」


陽葵が、言った。


「じゃあなんで?」


「司は、右腕も魔力も回復したから」

「全力を出せるでしょ?」

「しかも、できれば一発で決めたい大きな相手」


「うん」


「そうなったら」

「司は本気を出すと思うから」

「壊れやすい普通の部分を狙ったら」

「どうなると思う?」


きっと


「この鉱山が潰れる」


「そう、」

「かと言ってあのでかい魔獣を外に出すことも不可能」

「なら、司の魔法1回だけなら耐えられそうな」

「神晶石が最後の頼みの綱だったてわけよ」


陽葵が、話終わると

わざわざ流星に神晶石を探させた訳を納得し

そうしなかった時の恐怖が押し寄せた。


「私は、陽葵がいてくれて良かったよ」


夢描は、噛み締めながら言った。


「えへへ」

「ありがとう」


陽葵は、照れながら言った。


「でも、掘れるぐらいの武器が集まったら」

「この神晶石で武器作れるかなとか思ってるけど」


「そうなるといいよねぇ」


「当分は無理だろうけどねぇ」


ようやく、緊張から解放されてみんなは笑顔に包まれた。


このまま何事もなく鉄鉱石を持って帰れるとみんなが無意識にそう考えていた。


だが、その無意識さは間違えで終わることになった。



────────────


―『パチパチ』


どこからか拍手が聞こえる


7人の中の誰かだと思ったが

7(・)人(・)全(・)員(・)辺(・)り(・)を(・)見(・)渡(・)し(・)て(・)い(・)る(・)。(・)


では、その拍手をしているのはいったい?


?「は、は、は、」

?「これは素晴らしい」


笑いものにする声が平和になったこの空間をぶち壊した。


ここまで読んでくださってありがとうございます。

次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。

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