135.壁を強く打ちつける音
『ドンッ!!!』
―ビクッ!
いきなりどこからか大きな音が聞こえた。
岩が床に落ちるような音ではない。
なんと、説明すれば良いか分からないが
これまでの経験で何となく分かる。
「魔獣?」
そう、この音はまるで自らを壁に打ちつけている。
そんな行動や音からする大きな図体からして
人間では無いことは明白である。
つまり、魔獣が何らかの理由でこの音を発していることになる。
「でも、鉱山に魔獣が現れることなんて」
「有り得るの?」
夢描は、半泣き状態で司に聞いた。
「普通だったらあまり考えにくいな。」
「魔獣は、魔素の多い森に集まりやすい。」
「そして、鉱山には餌となるものが極端に少ない。」
「そんなことは馬鹿な魔獣でも知っているさ」
司は、いつものように答えた。
なんなら、悪口を言えるぐらいに冷静だ。
「じゃあなんで?」
それを聞いてますます魔獣がこの鉱山に現れた理由が分からない。
「こっち来たりしないよね?」
「今逃げれば助かったりして?」
りかが、言ったが
「それ、フラグにしか聞こえないな。」
陽葵は、1周まわってる笑いながら言った。
ドンドン
「ほらぁ」
「もぉ」
「来たよこれ」
なんとも、緊張感のない言い方だろう。
普通だったら
『どうしよう』
『私たち死んじゃうの?』
とかもう少しドラマチックになるところではないか?
「まぁ、」
「どんな相手でも」
「この勇者様が入れば何とかなるだろう!」
直人が言った。
そう、なんでこんなにも落ち着いていられるかと言うと
やはり、司の存在があったからだ。
「そうですわよ」
「何度も、司の戦う姿は拝見していますが」
「どれも素晴らしいものでしたからね」
あの、恋歌でも信じ込めてしまう力は司は持っている。
だから、きっと今回も難なく倒せる。
──────
『ドンッドンッ』
「どんどん近づいてきてるね」
魔獣らしいと思われるものが音を立てる度
地面が揺れる。
岩のクズが上から降ってくる。
広くない空間に響く叩く音
反響しすぎてどこから来ている音なのかも分からない。
でも、魔獣がどこから来るか分かりきっている。
だって、入口は1つしかないのだから。
「俺が、魔獣を倒す。」
「他の奴らは今まで集めていた鉄鉱石を守れ」
「絶対に取られるなよ?」
司が、前を向いているから顔を見ることはできないが
声でわかる。
司は、勝ちを確信していると。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。




