133.キラゴの現状
「あと、どれぐらい?」
夢描が、キラゴからの接触に怯えなくなるのに結構な時間がかかってしまった。
結局触られてしまった足に水をかけて洗い流し
夢描は、落ち着いたが
恋歌が、ボソッと
『私は、喜んで触らせますけど』
と言ったが、さすがに同感だ。
とは思えなかった。
「でも、キラゴは」
「宝石とかの近くにできるんだろ?」
「キラゴの周りにそんなもんなかったじゃねぇかよ」
直人の言っている通りだ。
あんなに派手な色をしているのは
派手な場所でバレずらいためにしていることではなかったのだろうか。
それなのに、夢描の足に登ってきたキラゴの周りには
人間が人間のために整備され全てが土色だった。
「それは、人間の仕業ですわね」
恋歌は、さっきまであんなに楽しそうな顔をしていたのに今度はとても悲しそうな顔をした。
「仕業?」
りかは、恋歌の言った意味にあまりピンと来ていなかった。
「えぇ」
「きっとあのキラゴも」
「卵だった頃は周りに宝石があったのでしょう。」
「それなのに、卵から生まれる間に」
「人間が綺麗さっぱり宝石を」
「全て取ってしまったのでしょうね。」
今思えば
キラゴの周りには道を開くためについたと思われる傷の他にボコボコと凹んでいる部分が数箇所あった。
「そうなんだ」
「じゃああのキラゴも今は混乱状態だろうね。」
りかも、恋歌と同じように悲しい顔をした。
「そうですわね」
「そして、もっと残酷なことがありますわ」
今度は、苦しそうな顔をした。
「...もっと」
「キラゴは、実際生まれる時」
「何百匹が一気に生まれてくることがほとんどだそうですわ」
「でも、きちんとは数え切れていませんが」
「あそこにいたのは数匹程度でしたわ」
「それって、」
自然の中だから
他の生き物に食べられたり
土砂によって押しつぶされたりするものもいただろうが
「人間がいらないと判断して」
「処分したのでしょうね」
「なんか、」
「私キラゴに酷いことしちゃったね」
夢描が、さっきの自分のキラゴに対する発言を悔いていた。
人間が一方的に嫌ったのにも関わらず
キラゴは、まだ仲良くしようとする。
「私だって、」
「弱肉強食の世界でしたら」
「止めたり、愚かだとは考えませんわ」
「ですが、自然の調和を乱すのはいつも人間ですわ。」
確かにそうだ。
虫などの生物は自分が生きるために最低限の殺しをする。
だけど、人間は生きるためと自己中心的な考えの中で殺しをする。
「恋歌の言っていることは正しいと思う。」
司が、付け加えるように言った。
「その理由として」
「昔は腐るほどいたキラゴが近年で一気に数が減った。」
「さっきは、いらないから処分と言ったが少し違う。」
「そうなのですか?」
「ああ」
「あのキラゴでも金を出して買いたいと言うものがいる。」
「えっ!」
「そんな人がいるの?」
この世界には、恋歌のような虫が大好きな人たちで溢れているのか?
「いる。」
「キラゴは、動きはともかく」
「見た目が綺麗だからな」
「宝石だと騙して売りさばく奴らにはよく売れるんだよ」
「それって詐欺じゃないの?」
陽葵が、問いかけた。
「そうだ」
「だが、その提案をした人が人だから」
「だれも、口出しはしてこない。」
「提案した人って?」
「千国王だよ。」
ここに来てもまたあいつの名前か。
きっとみんなそう思ったはずだ。
「直接きいたわけではないが」
「一般人には安いキラゴを売って」
「自分たちのような地位の高いものは、本物の宝石を買う。」
「しかも、キラゴが売れるから本物の宝石は安く手に入る。」
なんと、ずる賢い考え方なのだろうか。
忘れていた。
人間は、他の動物も傷つけるが
人間が人間に対して酷い行いをすることがあるということを。
「1年前ぐらいに」
「陽葵や夢描達で初めて市場に行ったことがあったろ?」
たしか、そんなこともあったな。
「その時、夢描がべっぴんさんとか言われて」
「ネックレスを買わされそうになったことがあった」
「あったわ」
「司が、フード被ってるから見えないだろうけどそこまでべっぴんじゃないとか言ってた」
「今でも、ムカつくから印象に残ってる」
「あん時のネックレスの宝石も」
「キラゴだ。」
「えっ、」
「じゃあ、私あのまま買ってたらずっと」
「キラゴぶら下げたままだったの?」
夢描が、そうなっていたかもしれない今を想像してゾッとしていた。
「早く言ってよ!」
「聞かれなかったからなぁ」
「そりゃあ当たり前だろ!」
「誰が、」
『あれ?もしかしてこれ虫ですか?』
「とか、分かんだよ!」
夢描は、想像していたよりも虫が苦手なんだな。
「そんなことがあったのですね」
恋歌や、流星、直人はその時にいなかったからな。
「でも、司は虫にも詳しいのですね?」
「私でも、知らなかった情報を持っているのですから。」
恋歌は、言った。
「勇者様というのは」
「そう言ったことも勉強なさるのですか?」
「いいや、」
「俺が習ったのはこの国の歴史や剣術」
「魔術そして、勇者としての仕事だ。」
「じゃあなんで?」
「...」
「―自然の話をすると」
「―嬉しそうに笑い奴がいたからな。」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
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次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。




