120.蓮の、頬にできた紅葉
「えっ?」
「どこ?」
もしかしてお忍びで街に降りてきたのか?
花は、辺りを見渡した。
「あれだよ!」
あれ?
蓮の指さす方を全員が凝視した。
その先にあったのは
「なんだよ」
「ポスターじゃん」
そう、天龍様によく似ている女性がポーズをとっているポスターだったのだ。
「なんだよ」
「なんか悪いかよ」
蓮は、あまりにもみんなのブーイングに怒ってしまった。
「いや、普通に考えて」
「天龍様じゃねぇ?」
「とか言われたら実物の天龍様がいるって思うじゃん?」
空の言う通りである。
「いやっ、」
「天龍様は、体が弱いんだろ?」
「外に出てこないんじゃねぇの?」
「普通に考えて」
これは、さっきの蓮に対する侮辱を返すかのような言い方だった。
「蓮、顔出せや」
空の今までにない怒りが右手の拳からは感じられた。
「いやぁ」
「クラスメイトの顔は殴らないと思いますよ」
「普通に考えて」
...イラァ
どこからかそんな音が聞こえてきた。
気がする
「れぇぇぇん!!!」
空は、いよいよ我慢の限界に達し
右腕を大きく振り上げた。
「えっ?」
そこでようやく蓮も、自分のほほめがけてやってくる空の手に気づいた。
「ぎゃぁぁぁ」
蓮は、ただ
―叫びしか無かった。
パッッチィン
叫び声がかき消されるのではないかと思うほど
良いパンチ音だった。
「いってぇぇぇぇ」
蓮は、殴られた反動で少し後ろによろめきながら
真っ赤なもみじ型に腫れているほっぺを抑えていた。
「まじでやるやつがどこにいんだよ」
目に涙を浮かべながら言った。
「ここにいますけど?」
これは、完全に空の地雷を踏んだな。
どんまい蓮
「なに?」
「もう1回かまそうか?」
「ひぃっ、」
「遠慮します。」
ここまで来るとなんか蓮が、可哀想に見えなくもないな。
「おやまぁ」
「大丈夫かい?」
「すごい音が聞こえちゃって」
「私びっくりしちゃったわよ」
白髪の混じったお婆さんが話しかけてきた。
「すいません」
「なんか、この人が」
「このポスターを見たら興奮しちゃって」
「落ち着かせるために叩いたんですよ」
「こうしないと皆さんに迷惑がかかってしまうんで」
よくもまぁ
そんなにスラスラと嘘がつけるなと感心しつつ
あまりにも目立ちすきだかと反省をしていた。
「それは、」
「ご苦労だったねぇ」
空は、ペコッとお婆さんに向かってお辞儀をした。
「そうかい」
「そのポスターを見たのかい」
「もう、そんなに季節になったんだねぇ」
「あの、このポスターってなんですか?」
「おや、知らないのかい?」
「この時期は」
「学校とかであまり市場には来れないんですよ。」
陽葵は、苦しい言い訳をした。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。




