105.盗み聞きも気をつけなきゃいけない〜みすぼらしい男〜
「あっ!」
「お姉ちゃんだ!!」
薄暗い路地裏とは、真逆な咲菜の明るい声が広がった。
「ただいまぁ」
花は、走ってきた咲菜を抱きしめながら言った。
「ごめんね」
「帰ってくれなくて」
森で、迷ったり
天龍様の展示会に行ったりと
みんなは、花の家族に会うことが少なくなっていた。
「別に大丈夫だよ!」
「お姉ちゃん達はこの国を平和するために」
「今、頑張ってるんでしょ?」
「...そうだね」
小さい子から平和にするためと言わせてしまったことに酷く胸が苦しくなった。
「だから、寂しくなんかないよ!」
咲菜は、笑顔で答えた。
小さい子は、すごいな。
これが、素直な気持ちなのか
それとも、大好きなお姉ちゃんのためについた
嘘なのか
分からない。
隣で聞いていた陽葵が、咲菜の目線に合わせてしゃがみ言った。
「私たち頑張るからね!」
「うん!」
咲菜も、それに応えるように陽葵の目を見ながら言った。
花は、咲菜の髪の毛が、ぐしゃぐしゃになるまで撫で続けた。
「やだぁ」
咲菜は、花の撫でる手を退かしながら笑っていた。
「あのぉ、」
2人の楽しそうな会話の間に入ってきたのは元気の無い男の声だった。
「えっ!?」
突然後ろから声をかけられてみんなは1歩前へと仰け反んでしまった。
「あっ、」
「す、すまない」
何故か、驚かした張本人が1番驚いていた。
「あ、あなたは?」
陽葵は、恐る恐る男に聞いた。
男は、薄汚れたボロボロの服を着ていて
裸足
髪の毛に至っては、何週間も洗えていないのではないかと思うほどボサボサだった。
「じ、実は、」
「さっきその女の子の言葉が聞こえてきて」
女の子とは咲菜のことだろうか。
「それで何か?」
花は、咲菜を自分の後ろに隠した。
「いや、この国を平和にしたいと言っていただろ?」
男は、ボサボサの髪の毛をかきながら言った。
「もし、それがこの国をつぶすという意味なら」
「い、意味なら?」
まずい、もし国、いや千国王を倒そうとしていることがバレたら...
非常にまずい
何とかして誤魔化さなければ!
「そ、それは、」
陽葵が、自分の出せる最大の言い訳を考えていた時だった。
「それ、俺にも協力させてくれないか?」
男の口からははっきりとそう言った。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。




